トイの青空

宝楓カチカ🌹

文字の大きさ
上 下
56 / 202
初めての友達

56.

しおりを挟む
 柔い耳たぶをがりと噛まれ、排泄を促すよう小刻みに穿たれる。
 ぐぐっと一際強く押され、トイは溜まりに溜まった欲求を弾けさせてしまった。
「ッ、も、ひ゛──」
 じょわっという生暖かい音と共に、黄色い放物線が弧を描く。
 一度解放してしまった熱を止めることは不可能に近かった。むしろ出さないように力を籠めれば逆に溢れてしまう始末だ。髪を弱々しく振り乱しながら、トイは放出の解放感に悶えた。
「ひっ、ひぃ……やぁ、ぁ、」
 あっと言う間に浴室に尿特有の臭いが充満し、シャワー室のタイルが黄色に染まった。ちょろちょろと排水溝に流れていく液体はソンリェンの膝の周りをも汚していく。ぎりぎりまで堪えていたぶん排尿は勢いがなく、長かった。
 ソンリェンは何も言わずトイの哀れな痴態を眺めていた。トイの排泄の音とソンリェンが腰を打ち付ける音だけが狭いシャワー室に響き、それにより一層羞恥と屈辱を煽られる。
「はぅ、ああ、……ッ」
 頬にソンリェンの金色の髪がぱさりと落ちてきて、ソンリェンにじっくりと排泄の瞬間を見られていたという事実をまざまざと見せつけられ恥ずかしさのあまり嗚咽を零す。

 トイはぶるぶると震えながら、膀胱内に残っていた最後の一滴まで漏らしてしまった。

 くたりと力を失いソンリェンに寄りかかる。ソンリェンがやっとシャワーのノズルをひねり、トイの排泄したそれを温いお湯で流し始めた。たった一度の排泄行為でこんなにも疲れてしまった。涙で潤んだ瞳で排水溝に吸い込まれていく黄色い液体を眺める。ソンリェンがシャワーを止めた。ぴちょんと水滴が落ちる音だけが響く沈黙が耳に痛かった。
「……汚ねえな。人前で盛大に垂れ流しやがって」
 ぐいと顔を上げさせられて、いつも通りのソンリェンの罵りが始まった。
「ほんと、てめえは弄ばれるしか能のないバカだな。突っ込まれながら俺の前で漏らした感想はどうだ? こんなんされてもどうせ感じてんだろ? 股もびしょびしょじゃねえか……あんなちんけな育児院で働くよりもこっちの穴貸し出して働いた方が稼げるんじゃねえか」
 なのにどうしてだろうか、心ここにあらずのように聞こえるのは。
 ソンリェンの罵声には普段の覇気が感じられなかった。適当に口に乗せているだけというか、いつものように心に鋭い棘が突き刺さってこない。
「てめえなんか───」
 ふつりと、ソンリェンの言葉が途切れた。
 どうしたのだろうとソンリェンの唇に焦点を合わせると、淡々とトイに対しての辱めを列挙していた口が強く引き結ばれていた。
 美しい顔がだんだんと近づいてくる。降りてきた唇に思わず目を強く瞑ると、瞼の上にちゅ、と濡れたものが押し付けられた。
 え、と目を開こうとすれば、今度は反対側の瞼にも同じ感触が。しかも一度ならず二度までも。羽のように軽いリップ音と共に最後は額にも唇を落とされて、トイはぽかんと呆けながら目を開いた。
「クソ……甘え」
 やけに熱っぽい青がトイを見つめていた。
 湯気のせいかソンリェンの頬はほんのりと赤くなっている。天井から差し込む薄っすらとしたオレンジ色の光が反射して、ソンリェン自身が熟れた青い果実みたいに見えた。
「甘すぎんだよ。何がうれしいだ、能天気なアホ面晒しやがって」
 それは見覚えのある光景だった。そうだディアナだ。彼女も今日こんな風に、照れの混じったぴかぴかした瞳でトイを覗き込んできたのだ。それに赤い頬は、初めて出会った時の彼女の姿を彷彿とさせる。
「本当に、てめえは」
 どうかしてる、いくら瞳の色が同じだからと言ってソンリェンとディアナの瞳が被って見えるだなんて。ディアナに対する酷い侮辱だ。
 ソンリェンは身勝手でとても酷い男で、ディアナは大切なトイの友達なのに。
 だから幻聴かと思った。
「──かわいいな」
 声を失うとは正にこのことだった。耳を疑う。
「かわいいな、お前は」
 愕然としながら、ソンリェンの台詞を咀嚼する。かわいい。誰が。トイが、だろうか。
 今のはあのソンリェンから放たれた言葉なのだろうか。聞き間違いであって欲しかったのだが、今トイの目の前にいるのは紛れもなくソンリェンだけで、ソンリェン以外にトイをかわいいと称する酔狂な人間はこの場にいない。つまり今のは、幻聴などではない。
「また、買ってきてやっても、いい」
 ぽかんと開っきぱなしになっている唇をゆるりとなぞられる。ソンリェンの言う買ってきていいものがふわがしであることには気が付いたのだが、ソンリェンの先ほどの発言ばかりが頭の中でぐるぐる渦巻いていてそれどころではなかった。



 トイが、かわいいだなんて。
 やはり今日のソンリェンは、おかしい。



 ソンリェンも似つかわしくない発言をした自分自身をらしくないと思ったのだろう、硬直したトイから直ぐに目を逸らすとトイを壁に押し付け再度腰を穿ってきた。まるで先ほどの発言を振り切るように。 
「ぁッ……、ぁ、ああん、んあぁ……!」
 その後はもう、今まで通り言葉もなく。
 結局シャワー室で事が終わった後、ベッドまで連れて行かれ正面から組み敷かれた。






 帰り支度を始めたソンリェンの背中を見つめながら、下がり始めた瞼にトイは安堵した。
 意識を保ったままだったらどんな顔をして部屋から去っていくソンリェンを見送ればいいのかわからなかった。あとは重い身体に身を委ね、泥のように眠り夜中か明け方に目覚めるだけだ。


 今日ばかりは、激しく犯されたことに心の底から感謝した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

性的イジメ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。 全二話 毎週日曜日正午にUPされます。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

松本先生のハードスパンキング パート5

バンビーノ
BL
「お尻、大丈夫?」  休み時間、きれいなノートをとっていた子が微笑みながら言いました。僕のお仕置きの噂は、休み時間に他のクラスにも伝わり、みんなに知れ渡りました。姉は、何をやっているのと呆れていました。姉も松本先生の教え子でしたが、叱られた記憶はないと言います。教室では素振り用の卓球ラケット、理科室では一メートル定規がお仕置きの定番グッズになりました。  でもいちばん強烈な思い出は、理科室の隣の準備室での平手打ちです。実験中、先生の注意をろくに聞いていなかった僕は、薬品でカーテンを焦がすちょっとしたぼや騒ぎを起こしてしまったのです。放課後、理科室の隣の小部屋に僕は呼びつけられました。そして金縛りにあっているような僕を、力ずくで先生は自分の膝の上に乗せました。体操着の短パンのお尻を上にして。ピシャッ、ピシャッ……。 「先生、ごめんなさい」  さすがに今度ばかりは謝るしかないと思いました。先生は無言でお尻の平手打ちを続けました。だんだんお尻が熱くしびれていきます。松本先生は僕にとって、もうかけがえのない存在でした。最も身近で、最高に容赦がなくて、僕のことを誰よりも気にかけてくれている。その先生の目の前に僕のお尻が。痛いけど、もう僕はお仕置きに酔っていました。 「先生はカーテンが焦げて怒ってるんじゃない。お前の体に燃え移ってたかもしれないんだぞ」  その夜は床に就いても松本先生の言葉が甦り、僕は自分のお尻に両手を当ててつぶやきました。 「先生の手のひらの跡、お尻にまだついてるかな。紅葉みたいに」  6月の修学旅行のとき、僕は足をくじいてその場にうずくまりました。その時近づいてきたのが松本先生でした。体格のいい松本先生は、軽々と僕をおぶって笑いながら言いました。 「お前はほんとに軽いなあ。ちゃんと食わないとダメだぞ」  つい先日さんざん平手打ちされた松本先生の大きな手のひらが、僕のお尻を包み込んでくれている。厚くて、ゴツゴツして、これが大人の男の人の手のひらなんだな。子供はこうやって大人に守られているんだな。宿について、僕はあのお仕置きをされたときにはいていた紺の体操着の短パンにはきかえました。あの時の白衣を着た松本先生が夢の中に出てくる気がしました。

大親友に監禁される話

だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。 目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。 R描写はありません。 トイレでないところで小用をするシーンがあります。 ※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

処理中です...