トイの青空

宝楓カチカ🌹

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崩壊

8.

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「っんだよ、せめえな」
 苛立ったように舌打ちされる。ただでさえソンリェンの雄は美麗な顔に似合わず太くて長いのだからトイの狭い膣道が広がらないのは当たり前だ。
 現に、奥まで挿入されたというのにまだ全て収まり切っていないのだ。
 鈍痛のような痛みが繋がった所から広がっていき、ぎちぎちと今にも張り裂けてしまいそうな内壁に腰が慄いた。
「く、ぁ」
 息が詰まる。肺から空気が押し出されまともに息も吸えない。
「逃げてんじゃねえよ。どうだ、1年ぶりの味は」
「あ、は、はぁ、あ……ぐ」
 一つにまとめられていた手が左右のシーツに押し付けられる。薄い電気の明りのせいで、覆いかぶさってくるソンリェンの顔がよく見えた。
 少しシワのよった眉間、彼も狭いトイの内部に苦しい思いをしているのだろうか。
「玩具は黙って足開いて突っ込まれてりゃいいんだよ」
「ん……や、ぁ、くあ」
「動くぞ」
 耳元で低く囁かれ、久方ぶりの悪夢が始まった。
 隙間から零れる粘着質な音を楽しむように腰を突き入れられ、引かれ、ゆっくりと挿入されてはまた抜かれる。緩急をつけてねっとりと、執拗に、時には素早く、ソンリェンが気持ちよくなるためだけの穴として使用される。
 泣きたくなんかないのに、自然と涙が溢れて止まらかった。
「あ、あ、あ、ぁ、あ」
 ずるりと内肉を巻き込んでソンリェンの杭が押し入れられ引き抜かれるたび、他の臓腑までもが引きずり出されるような感覚にぞっとする。快楽はまだほど遠い。
 時折包み込む肉の感触を味わうようにねっとりと腰を回されると粘着質な音が増して絞られるような痛みにトイは唸った。
 トイの荒い吐息と、ばちゅんばちゅんと空気と肉の弾ける音だけが薄暗い部屋に響き渡る。
「いた、い、た……痛、い」
「何が痛いだ、絡みついてくるくせに」
「や、ゃ、ら、や」
「もっと緩めろ、動きづれえ」
「む、り……むり、できな、苦し、」
「聞こえなかったのか? 緩めろ」
 ソンリェンは緩んだ穴は好きじゃない。けれどもきつすぎるのも好きじゃない。ぴりと凍った空気にトイは歯を食いしばって下半身の力を抜くように努力した。
 しかしやはり痛くて、穿たれるたびに絶えず力が入ってしまう。
 どうしようと戦々恐々としていれば無理矢理肉を裂くように奥を抉られて、その拍子に仰け反った喉ぼとけに強く歯を立てられる。
「ひ、ぐ」
 貫かれている所も噛み付かれた喉も、極限まで開かされた股も手首も、全て痛い。
「あ、あ、ふぁっ、痛い、は、ん、ん……」
 乱暴に揺さぶられ続ける視界の中、自分の上で上下に揺れる金色の髪をぼうっと見上げる。
 開かされた両足が動きに合わせてぶらぶらと宙を蹴る。抵抗するなという命令がトイの全てを凍り付かせていた。それに、かなり気分が悪かった。がんがんと奥をえぐられるたび酷い嘔吐感がこみ上げてくる。
 今朝からまともに食事をとっていなかったことに今更ながら感謝した。そうじゃなければ吐いていただろう。
 今はただ、好みのリズムで、角度で、トイの中で暴れまわるソンリェンを受け入れることしかできない。
 苦しかった。叫びだしたかった、逃げ出したかった。涙で滲んだ視界で揺れる世界を見上げる。
 ここは決して治安がいいとは言えない場所だ。けれどもトイの家だった。
 一人死にかけていたトイを拾ってくれたシスターの傍で、確かに育児院を訪れて、子どもたちの相手をしていろいろなことを手伝って、お金を貰ってここで生活していたのに。
 やっと安寧を手に入れられたと思っていたのに、どうして自分はまたこんな風に犯されているのだろう。
「な、んで……も、トイ、に、あき……ぁうっ」
 一度ギリギリまで引き抜かれ、横向きにされた。
 片足を抱え上げられ再び押し込められ、ソンリェンの熱く太い異物が全てトイの中に納まってしまった。
 その状態で奥をめちゃくちゃに掻き回される。目に入ってきたテーブルも大きく上下して見えるほどの律動に泣く。
 ぶちゅぶちゅと激しい水音を立てながら突かれるたび、体が、心が揺れる。
「ぁ、あ、あきたって、言っ……くあ、あ」
 1年と数か月間いたぶり尽くされた結末は、スラム街の端にあるごみ捨て場だった。
 正確には戻ってきたというべきだろうか、屋敷に連れていかれる前はそことは別の路上で生活していたのだから。
 4人が、そろそろ飽きたから新しい玩具を飼おうと決めた。だからトイは捨てられた。
 ただ、新しい玩具を飼う前にどうせ捨てるのだから最後に飽いたトイで思い切り遊ぼうとありとあらゆることされて、壊された。
 彼らはトイの命が尽きても別に構わなかったのだろう、トイの身体をめちゃくちゃにした。
 息も絶え絶えなトイの惨状に少しは哀れまれたのか、全裸のトイは屋敷の執事に毛布で包まれ汚らしい街の路地裏に打ち捨てられた。
 雨の日だった。汚物塗れで、傷つけられた体は出血していて、病院を探す気力も体力もない。金もない、学もない、世界を知らない、体を弄ばれることしか知らない、そして唐突に知らない路上に捨てられた子どもが生きていけるわけがなかった。
 それに毛布も雨でぐしゃぐしゃに濡れて、どんどん体温も無くなっていって。孤児の子どもが路上で死ぬことなどありふれた日常だ。

 生ゴミの饐えた臭いの中で、確かにトイはあのまま死ぬはずだった。


 通りかかったシスターに、助けて貰わなければ。
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