トイの青空

宝楓カチカ🌹

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過去

89.

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 トイはやはり此方を振り向くことなく、こくりと頷いてのろのろとした足取りでシャワー室へと入っていった。
 一瞬見えた頬には治りかけの黄色い痣が広がっていた。2週間前にソンリェンが張り飛ばした痕だった。
「さっさとうつ伏せんなって尻突き出せ」
 命令通り5分もたたずに戻ってきたトイの濡れた腕を引き、言うやいなやベッドに細い体を放り投げる。どたんと倒れベッドの上に這いつくばった小さな体を見下ろしながら、さっさとズボンを下げて硬く脈打つ自身の陰茎を緩く扱く。
 のろのろと腰を上げ、みっともなく尻を突き出し下半身を露出した哀れな姿に、可哀想だという気持ちは全く起きない。ただ、この細い棒のような身体でよく持つものだと感心はした。それはソンリェンだけでなく、他の3人も思っていることだ。
 数日しか持たないだろうと思っていたこの玩具は、意外にも3ヶ月も持っている。しかも2週間前にこの玩具はあることを仕出かした。
 臀部を上げたことで、トイの幼い男根がふらりと心元なく揺れているのが目に入ったがそれに触れる気はなかった。しっかり洗浄されたことでつるりとした双丘を押し開き内部を確認する。
 まだ奥には残っているかもしれないが目に見える範囲での汚れはない。
 その上に位置する窄まりも、散々使いこまれたのだろうぽっかりと空いていた。膣で満足できなかったらこちらを使おうと一人品定めし、ひたりと濡れた切っ先を膣口に添え一気に貫く。
「――――ぁっ」
 仰け反るトイに構わず、腰を進める。いつも以上に緩かった。
「く、……ぅ」
 それでも、苦しげな吐息を吐き出したトイは左手でぐいとシーツを強く掴んだ。が、右手はだらりと下がったままだ。親指と小指にまかれた包帯には、今でもじわりと血が滲んでいる。
 一番最初に徹底的に犯したことで圧倒的な恐怖を植え付けることができたのか、トイからの抵抗は、存外弱かった。いつもただ泣きながら犯されるだけだ。
 ただソンリェンは、トイの目の奥に宿る透明な赤が気になっていた。どんなに好き勝手に組み敷いてもその色は弱まることはなく、むしろ強まっていたような気さえしていた。
 身体の線も細くか弱い孤児の子どもだが、それなりの意思の強さはあるのかもしれないというソンリェンの予想は当たった。
 この玩具は何度も何度も激しく犯されながらも虎視眈々と狙っていたのだ、脱走の機会を。
「は、ぁ、う」
 後ろから震える腰を押さえつけ一番太い部分を捩じ込み全部埋め込むと、トイも辛いながらに少しは楽になったのか僅かに体の強張りが抜けた。
 別にトイが苦痛を感じていようがなかろうがどうでもよかったのだが、なんだか他の3人に比べて楽だと言われているようで苛立ちが募った。
 乱暴に腰を揺らせばトイは声を詰まらせ先ほどよりも強くシーツを握りしめる。内心でほくそ笑む。
 掴んだ腰はとても細く、10歳を超えているにしても未発達だった。両方の性を持っているくせに女性らしい身体の曲線もなく身体だって少年のように硬い。どうやら初潮も来ていないらしい。
 この子どもがこれまで誰と生き、どんな過去を生きて来たのかについて興味などさらさらないが、話し方や自分のことを「オレ」と呼んでいる事実からたぶん男として生きて来たのだろう。
 そんなある日見知らぬ男たちに攫われ、女としての性と男としての性を蹂躙されているのだ。
 ゆっくりと律動を始める。ゆるゆると出し入れするたびに上がる声は苦悶に満ちていて、ソンリェンの聴覚を煽った。中の肉を抉り出すようにじわじわと、しかし確実に責める。
 緩急をつけて何度か奥を突いてやると、徐々に濡れた音が増してきた。
 トイの指先が小さく震えている。背中に刻まれた、見ているだけで不快になるような変色した蚯蚓腫れや、治りかけて黄ばんだ煙草の火傷や、垂らされた蝋の痕が痛々しく残っている、
 トイが震えることによってそれらが皮膚の上で盛り上がり、純粋に気色の悪さを感じた。
 こんな怪我だらけの女など抱いたこともないし、こんな成りで迫られたら突き飛ばすどころかブン殴っているだろう。穴の具合がよくなかったら触れてもいない身体だった。
 唯一の利点は、予想以上に食い込む肉壁と、レオの言うように生で好きな時に好きなだけ中に出せることぐらいだろう。
「あっ……く、…ふ」
「濡れてきたじゃねえか」
 じわりと滲んできた感覚は残っている残液等ではない。身を捩り衝撃に耐えるトイの頭を鷲掴み、シーツに縫い付ける。浴びたシャワーのせいで濡れた赤茶色の髪が白いシーツに散らばった。
「昨日も散々ヤラれたんだろ? 感じてんじゃねえよ」
 ここ最近、トイは激痛を快感へと変える術を身に着けたようだった。痛みに泣くくせに、あさましく喘ぐ。女は無理矢理されても身体を守るために体液を分泌させる。知識では齧っていたその事実をソンリェンは両性体のトイの身体で初めて知った。初めは乾ききっていたくせにいい身体になったものだ。
 濡れる理由が生存本能故の防衛反応であることをトイには教えず、浅ましい股だなと罵ってやれば、トイは簡単に辛そうな顔をした。
「そんなに犯されんのが好きか、てめえは」
「ち……が」
 ふるふると首を振りながらも、その頬は赤く色づいている。
 今だってそうだ。痛くて苦しいくせに、それでも感じている身体を恥じるようにトイは体を震わせて声を圧し殺している。その惨めな姿に嗜虐心がむくむくと湧きあがってくる。
 これは穴だ。人権も何もかもをここにいる人間に掌握された消費されるだけの玩具。自分の残忍な加虐性をいくらぶつけても誰も文句を言わない自慰の道具。
 もっとこの幼い身体を蹂躙し、いたぶり尽くしたいと強く思った。
「何度も言ってんだろうが、もっと締めろ」
「あぅっ……!」
 後ろからトイの長い髪を引っ掴む。ぶちぶちと抜ける感触がしたがさらに力を込める。
 急に引っ張りあげられて悲鳴を零す玩具なんて意にも介さず、内壁を抉る動きに合わせて手綱のように髪を揺さぶる。トイの褐色の項がどんどんと赤く色づいていく。
「抜きづれえって言ってんだろ、もっと腰振れ」
「ひっ……いた、ぁうっ」
 形をなぞる様に耳に唇をつけ、耳朶に息を吹き込んでやるとトイが逃げるように身を捩った。玩具のくせにとムカついて、さらに髪を掴んで引っ張る。
「うるせえよ、性欲処理の便器風情が抵抗してんじゃねえ」
「ぁ、あ」
 仰け反ったトイの赤い瞳が遠い天井を見上げた。まるで遠い空に手を伸ばしているようだと思った。この部屋に窓はない、逃げられでもしたら面倒だからだ。

 それなのに2週間前トイは逃げようとした。他でもないソンリェンの部屋の窓から。

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