トイの青空

宝楓カチカ🌹

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崩壊

7.

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「……ッあぁ、う」
 ねっとりと、絞り取るように全体をしゃぶられ、その淫らな蠢きにガクガクと腰がずり上がるが直ぐに引きずり戻される。
「ぁ ああ あ、あ、ぁ」
 もごもごと咀嚼するように蠢くソンリェンの頬が信じられない。
 先端から、じわじわと液体が溢れだしているのが自分でもわかる。容赦なく厚い舌で先端部分の割れ目を刺激され、腰に溜まった快感が波のように荒れ目の前が白く濁ってきた。
 そのため、ずくりと膣内に指を挿入されたことにも気づかなかった。
「ぅう、あ、ぁっ、あ……そんり、ぇ、や、ぁ……っ」
 じくじくと胎内を穿り回してくる動きと合わせられると、咥えられているそれが圧倒的な熱を持ち始めて苦しかった。ぐずぐずと音を立てて腰の奥から溶けていくような錯覚に陥る。
 逃れたい一心で腰を回しても、ソンリェンの舌は逃さないとばかりに絡みついてきてもっと擦れて痒くなる。
 激しい水音はどんどんと増すばかりで歯の震えが止まらない。喘ぐことしか発散方法がなかった。
 口を覆っている手のひらも、もう意味などなしていない、指の隙間から全部漏れてしまう。
「そんりぇ、ひ、あ」
 ひと際大きな水音を立てて吸い付かれて、自分の性器が壊れたかと思った。
「あ、ああ、……ぁああ、アアあッ……」
 熱を押さえつけるように暴れる体を固定される。
 久々に与えられた強制的な解放感は凄まじく、視界が白く爆発し、トイは腰を高くつき出して達した。
「ッ──ふ」
 じゅうっと最後の一滴まで吸いつくされて、ひくんひくんと細い肢体が伸び切り徐々に弛緩していった。
 呆けるような痺れに思考も体力を根こそぎ奪われ、ぺたりとシーツに全体重が吸い込まれてゆく。
「は、はぁ、あ……」
 十数秒ほど、トイは自分の掠れた吐息の音だけを聞いていた。黄ばんだ天井すらもぼんやりとしていてソンリェンを伺う余裕なんてものはなかった。
 だからトイの吐き出したものをソンリェンが全て嚥下したことに気づいた時、ざっと青ざめた。
「は、くそまじいもん飲ませやがって」
 そう言いながらも、口に含んだもの味わうように喉を鳴らし、挙げ句の果てにはペロリと唇を舐めてみせたソンリェンの姿をトイは信じられない面持ちで見上げた。
「ぁ……」
「主人の許可なく一人で勝手にいってんじゃねえよ」

 トイの脳裏を過ったのは、ソンリェンとの恐ろしい思い出だ。
 誰に犯される時でも、トイが相手の許可なく勝手に射精することは許されてはいなかった。出していいと許可を得てからじゃないと厳しいお仕置きが待っている。
 相手の機嫌がいい時は堪えきれず出してしまっても許される日もあったが、あの時のソンリェンは私生活で何かあったのだろうか機嫌はかなり最悪だった。
 天井から吊り下げられ、二人の男に挟まれる形で後ろと前の穴を同時に貫かれている最中だった。
 前の男がトイの中に射精し終わったのでソンリェンが入れ替わりに挿入してきたのだが、それまで胸にも男性器にも散々刺激を与えられ続けしかも後ろでは前立腺をめちゃくちゃに掻き回されていたトイはもう限界だった。
 過ぎる快楽は苦痛でしかない。熱くて痛くて出したくて、身体中が爆発してしまいそうで。でも許して貰えなくて、もう狂ってしまいそうで。
 あろうことかソンリェンに挿れられたその衝撃で、絶頂を迎えてしまったのだ。
 綺麗な顔にかけてしまった白濁液を、ソンリェンは表情もなく無言で拭った。周囲も彼がキレたということを察し重苦しい空気になっていき、トイはとんでもないことをしてしまったと震えていた。
 その後のことはもう思い出そうとすると霞みがかかる。覚えているけれども思い出したくない。
 彼は他の3人に比べてトイに対しても冷たかった。だからこそとても無情で鬼畜だった。他の人とは違う非情さがあった。
「ごめんなさい」と謝罪する暇さえ与えられなかった。他の3人が呆れたようにそろそろ止めたら?と声をかけたのも、後にも先にもあれが最後だ。

「ご、ご、め……」
 今のソンリェンは、あの時のような絶対零度の雰囲気はまとってはいなかったが、トイは彼が恐かった。
 汚らしい他者の体液を飲み下したというのに顔色一つ変えないソンリェンが、いつどの瞬間怒りを爆発させるのかがわからないからだ。
 唇を拭い、指についた白い体液をじっと見つめている仕草さえも恐ろしい。ところが。
「……飲めるもんだな」
 ソンリェンは淡々と呟いただけで、トイに手を上げたりはしてこなかった。
「味は、最悪だけどな」
 また、ぽつりとソンリェンが呟く。何かを考え込んでいるような表情に見えた。
 どこか様子がおかしい。張り詰めた糸のような緊張感の中、トイはソンリェンから離れるために静かにシーツをずり上がるが、突然向けられた鋭い視線に動きが止まる。
 逸らされないソンリェンの青い瞳。トイの方から声をかけることはできなかった。
 数秒か、数分か。ふいにソンリェンの手がゆっくりと伸びてきた。頬にそれが触れるか触れないかの所で反射的に体が震える。ぴたりと、ソンリェンの手が止まる。
 至近距離で、ソンリェンが吐き捨てるように笑った。渇いた笑みだった。
「は、くだらねえ」
「っ、ィ」
 ぐんと前髪を引っ張られる。薄っすらと目を開いた先に、ソンリェンの細められた瞳があった。
「勝手に出しやがった仕置だ。やるぞ」
 いつのまにかズボンの前をはだけさせていたソンリェンに両脚を再び押し開かれ、ぴたりと膣口にそそり勃つ切っ先を添えられる。1年ぶりの他人の熱だ。
「い、やだァっ……!」
「暴れんな」
 片手で両手首を捕らえられシーツに叩きつけられる。悲鳴を上げる暇すら与えて貰えなかった。
 肉の塊が激しい水音を立てて侵入してくる。周囲の肉を巻き添えにしながら一気に奥まで。
「──ぁ、うは」


 久方ぶりの絶望は酷く簡単に、つまみ食いするような軽さでトイの膣を貫いた。

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