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五年前──17
しおりを挟む片腕ぽっちで両手首を一まとめにされたことで、琉笑夢の手のひらがいつのまにか春人のよりも大きくなっていたことにその時やっと気が付いた。
表情を消した琉笑夢は本気だった。違う、誤解だからと説明しても手が止まる気配はなく、首に思いきり噛みつかれた。いや歯を立てられた。
それは甘噛みなんてものではなく、首根っこを引き千切られ肉を咀嚼されてしまいそうなほどの力だった。
そう、まるで肉食獣に息の根を止められる寸前のような。
『いッ……てェ、琉笑夢、イ゛っ、落ち着け! ぁッ……』
服をたくし上げられ胸先にも強く噛みつかれ、舐められ、ズボンをパンツごとずり下げられる。
ろくに抵抗できていない間に、露わになった陰茎に細くて滑らかな指が絡み付いてきて肉欲を煽るようにじわじわと擦られた。
『ちょっ、うそだろおまえッ……ま、ぁ』
そこに触れられたのももちろん初めてだったので、脳内は完全にパニックだ。だが脚も琉笑夢の膝に圧し掛かられているため少しも動かすことができない。
冷えた指先に根本から先端の割れ目までをじっくりと往復される。柔らかな鈴口を親指でぐりぐりと押しつぶされては痛みに呻き、開いた口は好き勝手に舌で蹂躙される。
『ぐ、んッ……ん、むぅ』
霞み始めた視界の中、至近距離で見上げた琉笑夢の青い瞳は酷く据わっていた。凍てついていたと言ってもいい。
『ぁ、う、る、るぅ、まっ……ひ』
容赦なく後孔に指が添えられて、するりと撫でられた。閉ざされた窄まりをぐっと指の腹で押される。
次いでねじ込まれそうになった爪の硬さに、ざっと血の気が引いた。
『……ぃ、まてッ、やめろバカ! やっ……』
死に物狂いで脚をばたつかせ激しく抵抗したことで、琉笑夢の力が緩んだ。やっとの思いでベッドから這い出て逃げようとしたのだが、襟首を後ろから再び掴まれまた強い力で戻されそうになる。
執拗な行動に背筋が冷えて、恥も外聞もなく暴れたのはこれが初めてだった。
『──やめろッ』
春人は迫り来る手を振り払いざま、琉笑夢の頬に拳をぶつけてしまった。
ごつ、と鈍い殴打の感触が手の甲から伝わってきてぞわっと肌が粟立った。本気で襲われたことよりも自分が琉笑夢の頬を力いっぱい殴ってしまったことのほうに狼狽え、怯えた。
『ご……ごめ、琉笑夢……オレ、思いっきり』
頭をぱしりと叩くことも頬を抓ることもよくやってはいたけれども、こんな風に手をあげたことは初めてだった。
琉笑夢の白い頬がじわじわと赤くなり、口の端が切れて真っ赤な血が垂れる。金色の長い前髪に少しだけ赤がへばり付いた。
『琉笑夢、血が……っ』
慌てて近づこうとしたのだが、ぎっと鋭い視線に牽制され一歩も動けなくなった。小さかったはずの琉笑夢がやけに大きく見えて、怖気づいたのだ。
琉笑夢は赤い血を親指で拭い、指についた赤を見つめながらやがて自嘲気味に吐き捨てた。
『襲われたくせに謝んなよ』
掠れた声はまだ高めではあるがアルトに近い。声変わりがもうすぐで始まりそうな兆候だ。
『わかる? 俺いま、春にいとセックスしようとしたんだけど』
直接的過ぎる言葉に思考がひやりと冷える。
『ああ、犯そうとしたからセックスじゃなくレイプか』
『そ、んなこと言うもんじゃねえだろ、琉笑夢……』
春人の一言に目を細めた琉笑夢は、ぺっと赤の混じった唾を吐き捨てた。見たことのない琉笑夢の仕草の一つ一つに、見知らぬ男の人と対峙しているような気分になった。
『怖かった? 春にい。俺に突っ込まれそうになって』
怖かった。今更ながらに手が震えていることに気が付く。
琉笑夢のそれは凄い力だった。思い出すだけで鼻の奥がツンとしてしまうほどに。
『でも俺は春にいの体いつもそういう目で見てるから。裸に剥いて喘がせてえなって』
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