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勇者資格試験編
第二話 勇者団体神上里基地へようこそ ②
しおりを挟む『えーと、僕の名前はラゴウです。
勇者目指して頑張ります。よろしくお願いします』
金山ナカニクは眉を顰める。
それもその筈、ラゴウという名前はこの地方では、なかなかに珍しい。
此処、フルノフス地方南西の町ゴゴテイは
古くから苗字と名前がそれぞれ三文字以上五文字以下が主流であり、それはこの街を収めるゴゴテイ=テミルクイが二十年前に自分の部下五百名に与えた位が五文字(イツモンジ)だからである。
フルノフス地方には五つの町が点在しており
それぞれの町を統括する主には一から五の名前が付いている。
ナナアの町の主は一文字の名を持つイチゴミ=ルクテア。
独立商店街ムッカロードの主は二文字の
フツツカ・モノガデス
クク町の主は三文字の ミジカ・イ・カースト。
そして野血街(やちまち)には四文字の
シシ・ツルギ。
このラゴウという三文字のみの名前はどちらかといえば
ツルギが統治している野血街(やちまち)によくいる名前であり、その野血街(やちまち)と此処、ゴゴテイは冷戦状態にありものすごく仲が悪い。
金山ナカニクはそんな町の歴史的背景を思い
怪訝な表情をしながら
頭を掻いた
『あのう。ヒツギさん、まさかとは思いますがとんでもない奴を連れてきたわけじゃあねえですよね?』
ヒツギは満面の笑みを崩さないまま答える
『とんでもないとは?』
ナカニクは大剣片手にジリジリと歩み寄る
『とんでもないってのは、トンデモナイってことですわよヒツギさん。』
ヒツギは左腰に手を当て右手を前に出す。
『もしやラゴウと知り合いですか?
まさかまさかの知り合いですか?なんだよラゴウ。知り合いならそんな白々しい態度取るなよ。失礼だろ』
ヒツギは左隣に立つラゴウに向かって後ろから右足でラゴウの膝裏を蹴った。
ツッコミとしては少々見慣れないツッコミではあるが『いや、僕は知らないですよ ねェェエエエエエエエエエ!?』と言いながらラゴウは突然膝カックンによって前へ倒れる。後ろの髪の毛が切られたような感覚を覚えたラゴウだがそのまま転び地面に手をついた、が、地面に手を付いてもその勢いは消えることなく額を強打した。
ヒツギの右手は腹部に居たが膝カックンを決めてから〇点五秒経たずしてラゴウの右隣の虚空を切っていた。
勢いよく腹部から放たれた右手はチョップの如く誰もいないヒツギの右隣へ。
しかしことの時既にヒツギの元には鋭い斬撃が迫っていたしヒツギも当然の如く何もないはずの左腰から颯爽とちゃっかり抜刀していたのだから
なにするんだよと起き上がったラゴウは驚き慌てふためく事に無理はない。
ナカニクは苛立っていた。
違うなら違うと言えばいいが
違うはずもなく怪しい。
ラゴウという名前に聞き憶えがあったし
この街に許可なく他の町のものを入れるまでは目を瞑ったとして
冷戦状態のただでさえクソ仲の悪い万智の人間を許可なく入れたと合っては民衆の不満の矛先にされかねない。
それにその問題の町がわざわざ奥込んだ刺客かもしれない。
現に街には必ずしもその街の住民票と戸籍が用意されており行き来できるのは旅人のみ、資格がないものや身分証明書のないものはこの街の門の前で門番に引き払われるのみ。
それが今この場所に入ってきてしまっているかもしれないこの現状に深く苛立っていた。
そしてもし仮に最悪の事態が今起こっているとしてそれを勇者団体の耳にすら入っていないことに堪忍袋の緒が切れかかっていた。
というより斬ったわけだが。
ナカニクが抜刀した際。
いや既に抜刀済みの刀を
振ったその一線をヒツギは払い退けた。
ヒツギも虚空から、詳しくは左手で作ったエア刀から具現化させ抜刀をした。
ついでにラゴウを膝カックンさせて飛散した斬撃から身を守っていた。
『あぶねえじゃねえっすか。死んでたかもしれない』そう呟きニッコリ笑うヒツギに
唾を吐いたナカニクは大剣をまた地面に突き刺すと大声で笑った。
『ふっはははははっゲホッオオオええええ!!!
まって。はあ。うん。いいよ。いいです。わかりましたお前が、あ、失礼。ヒツギさんがその気ならこっちもわかりました。信じます。
だがもし、仮にそうだったらお前には責任を取って貰いますし、その後に死んでもらう。いいですね。
ヒツギさん。』
そう言ってナカニクは入場許可証をラゴウに渡すと去って行った。
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