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グリエファミリー急襲編

No.17 死相

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オロルから前方5メートルの床は無い。
穴が空いており煙だけが立ち込めていた。

見た。
じぶんとは反対側に立つ人影を。
煙は次第引いていく。
トレンチコートが風に揺れ和服が姿を現した。両手には鉈。

血秋がそこにはいた。

『久しぶりね。血秋…あー、、えーっと、シエルおねえちゃん?』
オロルの手にはショットガンが装備されていた。
弾の装填は完了済み。
片膝を床につけ、もう片膝を九十度に曲げそこにショットガンの引き金を引く方の腕の肘をそっと乗せる。
銃口はしっかりと血秋を睨んでいる。

『オロル…その目は一つでいい。目障りだから、斬ってあげる。』
血秋の能面から青い光が溢れた。

砂煙が舞った。

ガチャ…弾が揺れる音がこだまする。
二人は音速に等しい速度で床が無い場所へ飛躍した。

『次こそは…撃つ』

炸裂。


火花が散る。

その火花が生まれるよりも早く強い魔力によって遮られたものの威力を失えなかった
高魔力によって生み出された赤い光が
辺りの壁を貫いていく。
壁は穴となりその周辺の
コンクリートは溶解。

忌々しい音を上げながら
弾による衝撃を辺りに薙ぎ払う。

血秋の双剣が黒々しい光を帯びながら青い閃光を漏らした。

金属が削れる音が次第に大きくなり窓ガラスがその反動で破裂。
瞬く間に粉塵と化す。

オロルの肩甲骨から赤い稲光のようなものが生まれそれが大きな翼のような形へ変わり
幾千もの刃をで構築された羽が集約され一つの翼となった。

『シエル。提案があるの。お互い手の打ちようがなくなった時は瞳無くしにこの目を返そう』


『無理よ』

『何故?そう言い切れるの?お節介だとでも?こんなつまらないことで争ってるよりはマシだと…』

オロルは血秋の冷たい目を見て話すのをやめた。

『オロル・グラニーテ。あなたは私を姉と呼ぶようだけれどわたしはあなたを妹などと思ったことは一度もない。苦楽を共にした?満たされない感情の共有?そんなこと一ミリ考えたことないわ。 わたしにとって姉であり目のない化身となったアレはもう人でもなんでもない。 一度してしまった過ちを元に戻そうなんて甘い考え捨てなさい』

血秋はとオロルは宙に浮いていた。魔力を使えば浮遊など容易いがそう簡単なことではない。彼女たちは元々魔力に恵まれない人間だった。魔眼を発動していればいるほどその代償は大きくなる一方だ。

これ以上魔眼の発動を継続すればやがて失明し、肉体も限界を迎え心臓は停止する。

『それでもこの眼は瞳無くし、レヴリという名前を継ぐ筈だった姉さんに返すべきだわ』




『死んだよ』






オロルは疑った。
その言葉を。
その声を。
シエルはもう一度言った
『死んだよ。おねえさんは』

オロルが取り乱す。
『嘘。鳩羽だって、ついてたし、みんなも、』

取り乱し困惑するオロルを追い詰めるように
シエルが口を開いた

『だから、わたしが斬った。 というより二つに切り刻んだ。わたしたちだけよ。もう』

『嘘ッッッつかないで!』


すかさずオロルは後ろを振り向き、下の階に向かおうとした。
やはり人は情には逆らえない。
気づい時にはシエルに背を向けていた。
それをシエルが見逃す筈もない。
オロルはそれでも後ろへ駆け出していた。
それはまるで
この因縁の戦いすらどうでもよくて
ただひたすらに姉妹として
瞳なしの姉のことを思って体が勝手に動いてしまったに等しい。
それほどに無防備かつ自然な動作だった


が、しかし。当然の如く、
それが仇となった。


















『敵に背中見せるなんて優しいのね貴方』
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