17 / 49
第十七話 事件の真相
しおりを挟む
顔を上げるとそこには玲奈がいた。
チャイムの音が聞こえる、気がついたら下校時間だ。
「多分あんた、この事件について調べようとか考えてるでしょ」
「何のこと……」
「蓮が連れていかれたら大変なことになる、本当に気をつけて」
「大変なことになるって、何か知っているのか?」
「じゃ、私帰らなきゃいけないから」
玲奈はその場から逃げるように立ち去った。
一体何なんだ、玲奈の意味ありげな言葉に俺の心はモヤモヤする。
自宅に帰り、俺は唯斗に連絡をとってみる事にした。
携帯の連絡先は知らないので、クラスの緊急連絡網を引っ張り出す。
「番号は……っと」
呼び出し音がなる。
3コールほど呼び出し音が鳴った後、ガチャリという音がした。
「はい、太田です」
「突然すみません、唯斗くんの同級生の御堂蓮と申しますが、唯斗くん今日休まれてたんですけど体調不良とかですか?」
「唯斗がお世話になってます。 昨晩色々なことがあって学校に行けなかったのよ、詳しくは本人に聞いたほうがいいわね、今電話を代わります」
「ありがとうございます!」
10秒ほど待つと、またガチャリという音がした。
「蓮か?」
「ああ、今日休みだったみたいだから心配でな」
「お前が心配して電話かけてくるなんてちょっと意外だな、でもありがとう」
「もしかして、今朝のニュースにあった誘拐されかけたうちの高校の生徒って唯斗か?」
少しの静寂が流れる。
「俺だ。 今日は警察の取り調べを受けていて学校に行けなかった」
「やっぱりか。 ニュースで映像が出ていたけど、黒い穴に引き込まれるそうになったのか?」
「ああ、突然の出来事だったよ。 バイトを終えて家に帰ってる途中、目の前に突然黒い穴が現れて、中から鎧を着た人間が出てきて俺の腕を掴んだ」
鎧を着た人間…… 王都の兵士か。
「どうやってその状態から振り切って逃げたんだ?」
「必死に抵抗したんだ、腕を振り払おうとな。 だけどそんなの無駄だった。 俺の腕を掴んだ手は少しも緩まなかった、それどころかより強く腕を握られるもんだから骨が折れちまった」
「そんな状態じゃ逃げれないんじゃ」
「ああ、もう諦めかけたその時だった、急に穴の中から声がしてな。 座標が乱れる……とか言ってたかな。 そしたらその兵士は俺の手を離して穴の中に帰っていった」
座標? 空間転移に座標なんているのか?
目的地をイメージする、それが座標となっているという事か。
「いずれにせよ、不幸中の幸いだな。 連れて行かれなくて良かったぜ」
「ちなみになんだけど、その兵士の鎧の色って分かるか?」
「んー青色だったかな」
色付きの甲冑…… 四聖剣か……
「——もしかして蓮は何かこの事件について知っているのか?」
唯斗に異世界のことを話すべきか。
話したところで唯斗には何もメリットがない。
だが直接被害に遭っているわけだし、誰に襲われたのか位は知っておくべきなのか。
「……知らない」
「そうか、何か知ってるのかと思ったんだけど。 何かわかったら教えてくれよな」
「ああ、じゃあお大事に」
電話を切る。
罪悪感が襲ってくるが、これでいいんだ。
知らないほうが幸せなこともある。
唯斗の話を聞いて分かったことは、この世界と異世界は確実に繋がっているということだ。
王が空間転移持ちを集めているのはこのためか。
だけど目的地をイメージできないんじゃ転移もできないはずだ。
何より俺は異世界からこの世界に空間転移できないかを試したが無理だった。
どうやって世界を繋いで、沢山の人を誘拐して何をしようとしているのか。
一刻も早く暴く必要がある。
早く南の都に行き実力をつけ、王の蛮行を阻止せねば。
今日、俺はいつものアニメ鑑賞をせず、早めに眠りについた。
**************************
目が覚める。
そうか、今日は1人部屋なんだった。
朝からハレンチ騒ぎに巻き込まれることもない、なんて優雅な朝なんだ。
俺はゆっくりと身支度を済ませ、部屋を出た。
「あ、レンさんおはようございます!」
「おはよう、レナは一緒じゃないのか?」
「はい、朝早くに部屋を出て行かれました」
「あれ、どこに行っちゃったんだろうな。 とりあえず代金を支払って荷物を馬車に積むか」
俺は受付に行き宿泊代金を支払った。
大金を持っていたとはいえ、無収入のまま支出を続けている訳だから、残金も少なくなってきた。
南の都についたら何かお金を稼ぐ方法を見つけないといけない。
宿を出て馬車の方に向かうと、レナが立っていた。
「もしかして先に準備してくれていたのか?」
「馬たちの様子が気になりまして、餌をあげていました」
「そうだったのか、色々やってくれてありがとうな。 これからまた長い距離重いものを運んでもらう訳だから沢山食べてもらわないと」
俺たちは馬車に乗り、それぞれの定位置に座った。
「よし、じゃあ今日も出発するか」
「待ってください、レンさんの荷物、なんだか光ってませんか?」
「本当だ、何か光るものなんて入れてたかな」
荷物を開き、光源を探す。
光っていたのは、市場で買った不死鳥のタマゴだった。
チャイムの音が聞こえる、気がついたら下校時間だ。
「多分あんた、この事件について調べようとか考えてるでしょ」
「何のこと……」
「蓮が連れていかれたら大変なことになる、本当に気をつけて」
「大変なことになるって、何か知っているのか?」
「じゃ、私帰らなきゃいけないから」
玲奈はその場から逃げるように立ち去った。
一体何なんだ、玲奈の意味ありげな言葉に俺の心はモヤモヤする。
自宅に帰り、俺は唯斗に連絡をとってみる事にした。
携帯の連絡先は知らないので、クラスの緊急連絡網を引っ張り出す。
「番号は……っと」
呼び出し音がなる。
3コールほど呼び出し音が鳴った後、ガチャリという音がした。
「はい、太田です」
「突然すみません、唯斗くんの同級生の御堂蓮と申しますが、唯斗くん今日休まれてたんですけど体調不良とかですか?」
「唯斗がお世話になってます。 昨晩色々なことがあって学校に行けなかったのよ、詳しくは本人に聞いたほうがいいわね、今電話を代わります」
「ありがとうございます!」
10秒ほど待つと、またガチャリという音がした。
「蓮か?」
「ああ、今日休みだったみたいだから心配でな」
「お前が心配して電話かけてくるなんてちょっと意外だな、でもありがとう」
「もしかして、今朝のニュースにあった誘拐されかけたうちの高校の生徒って唯斗か?」
少しの静寂が流れる。
「俺だ。 今日は警察の取り調べを受けていて学校に行けなかった」
「やっぱりか。 ニュースで映像が出ていたけど、黒い穴に引き込まれるそうになったのか?」
「ああ、突然の出来事だったよ。 バイトを終えて家に帰ってる途中、目の前に突然黒い穴が現れて、中から鎧を着た人間が出てきて俺の腕を掴んだ」
鎧を着た人間…… 王都の兵士か。
「どうやってその状態から振り切って逃げたんだ?」
「必死に抵抗したんだ、腕を振り払おうとな。 だけどそんなの無駄だった。 俺の腕を掴んだ手は少しも緩まなかった、それどころかより強く腕を握られるもんだから骨が折れちまった」
「そんな状態じゃ逃げれないんじゃ」
「ああ、もう諦めかけたその時だった、急に穴の中から声がしてな。 座標が乱れる……とか言ってたかな。 そしたらその兵士は俺の手を離して穴の中に帰っていった」
座標? 空間転移に座標なんているのか?
目的地をイメージする、それが座標となっているという事か。
「いずれにせよ、不幸中の幸いだな。 連れて行かれなくて良かったぜ」
「ちなみになんだけど、その兵士の鎧の色って分かるか?」
「んー青色だったかな」
色付きの甲冑…… 四聖剣か……
「——もしかして蓮は何かこの事件について知っているのか?」
唯斗に異世界のことを話すべきか。
話したところで唯斗には何もメリットがない。
だが直接被害に遭っているわけだし、誰に襲われたのか位は知っておくべきなのか。
「……知らない」
「そうか、何か知ってるのかと思ったんだけど。 何かわかったら教えてくれよな」
「ああ、じゃあお大事に」
電話を切る。
罪悪感が襲ってくるが、これでいいんだ。
知らないほうが幸せなこともある。
唯斗の話を聞いて分かったことは、この世界と異世界は確実に繋がっているということだ。
王が空間転移持ちを集めているのはこのためか。
だけど目的地をイメージできないんじゃ転移もできないはずだ。
何より俺は異世界からこの世界に空間転移できないかを試したが無理だった。
どうやって世界を繋いで、沢山の人を誘拐して何をしようとしているのか。
一刻も早く暴く必要がある。
早く南の都に行き実力をつけ、王の蛮行を阻止せねば。
今日、俺はいつものアニメ鑑賞をせず、早めに眠りについた。
**************************
目が覚める。
そうか、今日は1人部屋なんだった。
朝からハレンチ騒ぎに巻き込まれることもない、なんて優雅な朝なんだ。
俺はゆっくりと身支度を済ませ、部屋を出た。
「あ、レンさんおはようございます!」
「おはよう、レナは一緒じゃないのか?」
「はい、朝早くに部屋を出て行かれました」
「あれ、どこに行っちゃったんだろうな。 とりあえず代金を支払って荷物を馬車に積むか」
俺は受付に行き宿泊代金を支払った。
大金を持っていたとはいえ、無収入のまま支出を続けている訳だから、残金も少なくなってきた。
南の都についたら何かお金を稼ぐ方法を見つけないといけない。
宿を出て馬車の方に向かうと、レナが立っていた。
「もしかして先に準備してくれていたのか?」
「馬たちの様子が気になりまして、餌をあげていました」
「そうだったのか、色々やってくれてありがとうな。 これからまた長い距離重いものを運んでもらう訳だから沢山食べてもらわないと」
俺たちは馬車に乗り、それぞれの定位置に座った。
「よし、じゃあ今日も出発するか」
「待ってください、レンさんの荷物、なんだか光ってませんか?」
「本当だ、何か光るものなんて入れてたかな」
荷物を開き、光源を探す。
光っていたのは、市場で買った不死鳥のタマゴだった。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
異世界でいきなり経験値2億ポイント手に入れました
雪華慧太
ファンタジー
会社が倒産し無職になった俺は再就職が決まりかけたその日、あっけなく昇天した。
女神の手違いで死亡した俺は、無理やり異世界に飛ばされる。
強引な女神の加護に包まれて凄まじい勢いで異世界に飛ばされた結果、俺はとある王国を滅ぼしかけていた凶悪な邪竜に激突しそれを倒した。
くっころ系姫騎士、少し天然な聖女、ツンデレ魔法使い! アニメ顔負けの世界の中で、無職のままカンストした俺は思わぬ最強スキルを手にすることになったのだが……。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる
シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。
そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。
なんでも見通せるという万物を見通す目だった。
目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。
これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!?
その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。
魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。
※他サイトでも連載しています。
大体21:30分ごろに更新してます。
裏アカ男子
やまいし
ファンタジー
ここは男女の貞操観念が逆転、そして人類すべてが美形になった世界。
転生した主人公にとってこの世界の女性は誰でも美少女、そして女性は元の世界の男性のように性欲が強いと気付く。
そこで彼は都合の良い(体の)関係を求めて裏アカを使用することにした。
―—これはそんな彼祐樹が好き勝手に生きる物語。
よくある転生だった!だが俺は勇者じゃなかった
ベルピー
ファンタジー
よくある異世界転生。俺こと、美波勇気もテンプレのように毎日毎日の残業残業で倒れてしまった。
ここでテンプレならチートを授かるモノだが、気づいたらゲームの世界にいた。
そう、昔少しだけ流行ったドラゴンファンタジーのゲームの世界だ。有名ロールプレイングゲームを真似て作られた為、そこまで人気はなかったが俺はこのゲームが好きでけっこうやりこんでいた。
勇者だったらハッピーエンドを迎えたのに、俺が転生したのは勇者とともに魔王を討伐する友人のキャラだった。
一緒に魔王を倒したならそこそこ良いキャラじゃね?と思うかもしれないが、このキャラ。魔王と戦う直前に好きな人を勇者に取られてそのままヤケクソになって魔王に向かって死んでしまうのだ。。。
俺は死にたくない。ゲームの知識を活かして生き残るしかない!!
異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
異世界辺境村スモーレルでスローライフ
滝川 海老郎
ファンタジー
ブランダン10歳。やっぱり石につまずいて異世界転生を思い出す。エルフと猫耳族の美少女二人と一緒に裏街道にある峠村の〈スモーレル〉地区でスローライフ!ユニークスキル「器用貧乏」に目覚めて蜂蜜ジャムを作ったり、カタバミやタンポポを食べる。ニワトリを飼ったり、地球知識の遊び「三並べ」「竹馬」などを販売したり、そんなのんびり生活。
#2024/9/28 0時 男性向けHOTランキング 1位 ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる