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1.邂逅
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1.探検家、カムチャツカ・クレソイ
私の名前はカムチャツカ・クレソイ。探検家だ。
二十歳から本格的に探検を生業とし、純粋な好奇心と探究心を武器に、来年50を迎えるこの歳まで未だ現役で探検を続けている。
これまでの私の探検による発見は、アムデカ遺跡、ボボジュブ部族との初接触、新素材サザレー金属の鉱山、と挙げればキリが無い。
そのどれもが偉業といわれ、人類の進歩へ多大な貢献をしてきた。
又、これまでの探検をまとめた私の書籍も20点を超え、そのどれもがベストセラーを記録し、公演をすればチケットはものの数分で完売。
私をモデルとした超大作映画も制作予定だとか。
今や誰もが探検家、冒険家の第一人者として私の名を挙げている。
2.停滞
さて、そんな探検家の私だが、かく言うたった今も探検の真っ只中である。
そして、珍しくこの私が探検中にかなり気が滅入っている。
今私がいるのは世界3大迷宮の一つ、カカリスク大陸にあるボグスレー洞窟。
洞窟としては世界最長で、中は洞窟と呼ぶには余りにも狭く、匍匐(ほふく)全身でやっと進める程度の横穴が、延々と無限迷宮のように上下左右に枝分かれを繰り返す。
そしてこの洞窟の最深部には、人を20歳も若返させる神秘の湧水があると言う。
つまりその伝説の湧水を採取しにきたのだが、、、
すでに洞窟に入り、今日で5日目。完全に足止め状態である。準備した水と食糧も残りわずかだ。
道中、付けたハズの印も何故か見当たらない。
この洞窟特有のやや滑り気のある独特な岩肌が、それらの印を消してしまったのか。
最新型の現在地測定器も完全にその方向を見失い、外部との通信機器も何故か全く繋がらない。
これまでの洞窟とは明らかに何かが違う。一切の常識が通用しない。
いや、全ては言い訳か。これまであらゆる探検をしてきた自分への過信、傲りがこんな結果を招いたのだ。
私が気が滅入るのも、これでお分かり頂けたであろうか。
今ちょうど私が足止めをくらっているこの場所も1.5人分位しかない、僅かなスペースの空洞である。
帽子に付けた半永久型の小型の防具ライトがギリギリその空間を端まで照らし出している。先は完全な行き止まりだ。
幸い今いる空洞内に空気はあり、温度も適温である。また、独特な滑りのあるこの岩肌は水分も大量に含んでおり、最悪その水分でもう2、3日ほどは生きながらえるか、、。
3.邂逅
わずかによぎる最悪の結末、、、。
今世紀最大の探検家、カムチャツカ・クレソイも最後はこんな穴蔵の中でモグラのように一人孤独に死んでいくのか、、。
不安と憔悴、絶望。又、時間はまだ数日あると言うごく僅かな希望。
様々な混沌とした精神状態のまま、疲労も限界を迎え、しばしの睡眠に入ろうとしたその瞬間、
カラッ、、カラカラッ、、
行き止まりのはずの空洞の先から小石の転がる音。
「んっ?」
その音に気づいたやいなや、ガラガラガラッ!と、
もはや小石どころか巨大な岩でも転がり落ちてくるような音が狭い空洞に鳴り響く。
ズザザザーッ!!
行き止まりの筈の空洞の壁が崩れおち、そこから何かがこの狭いスペースに轟音と共に滑り落ちてきた。
とっさに頭を抱え身を守る。
「キャッ!」
まず耳をついたのは、まさかの人間、それも女性の声だ。
「えっ?!」
私も声を上げる。巨大な岩石かと思い、身を固めていたが、ゆっくりと構えた腕の間から目を開らき、その女性の声のする方、といってもこの狭い空洞だ。すぐ目の前である。
「い、痛ったぁ~ぃ、、えっ?!、、ぁ!、、」
正に御対面である。驚きは隠せない。
お互いまだ状況を把握しきれていない。
しっかりと向かい合う形で、このわずか1.5人分のこの空間にピッタリと密着し2人の身体は収まった。
数秒か、数十秒の沈黙の後、改めて意識をなんとか整え、文字通り目と鼻の先にいるその女性、というか女の子だ。二十歳そこそこか。を、自分の意識に落とし込んでいく。
僅かなライトの灯りの中でも煌めく、肩よりやや長めのゴールドに近いブロンドの緩やかな巻き髪。
やや垂れ気味の綺麗なアーモンド型のつぶらな瞳(ブルーアイ)。
その大きな瞳とは相反する極めて小振りな形の良い鼻。
ぷっくりと肉厚で艶のあるやはり大きさは控えめな唇。
頭の小ささが強調される細く綺麗なあご。
この状況でなぜ?と、疑問を抱いてしまう程、ツルツルの陶器のようにキメ細やかな真っ白い肌。
そう。改めてじっくりとその落ちてきた女の子を観察すると、その辺のタレントなど裸足で逃げ出すようなルックスを有していたのである。
4.同業者
まず先に言葉を発したのはその娘だった。
「ぁっ、あの、救助の方ですか?、、良かった、、助かった、、」
余程これまで過酷な道のりだったのか、安堵からその美しい瞳はわずかに潤んでいる。
私はしばらくの沈黙の後、気落ちした声でその質問に正直に答える。
「、、、いや、、残念だが、救助ではない。どうやら我々は文字通り、同じ穴のムジナのようだ、、」
良く見るとその娘は、どれもがおろしたての新品ではあるが、私と同じような服装、装備をしている。
この娘も私と同じ探検家だったのだ。おそらくまだ駆け出しなのであろう。
「そう、、ですか、、、」
私の説明を聞くと、娘は明らかに落胆している。とっさに励ますかのように私も語りかける。
「君も、幻の湧水を求めこの洞窟に探検に?」
「はい、、病に伏した母の、たっての希望で、、私はレイ・アーモンドと申します。まだ探検家になって半年です。」
「そうか、、」
レイ・アーモンド?、、どこかで聞き覚えのある名だな。気のせいか、、。
「私の名はカムチャツカ・クレソイ。君と同じく探検家だ。」
すると私の名を聞いた途端、その娘の表情がパーッと一挙に明るくなった。
「えっ!あ、あの有名なカムチャツカ・クレソイ先生?!」
「うむ。職業柄保身の為メディアには顔を出しておらぬが、私が正真正銘、探検家のカムチャツカ・クレソイだ。さすがに名前くらいは知っていたかな?」
「嬉しいっ!私、先生の著書に感銘を受けて探検家になるって決めたんです!地方出身で今まで公演は行けなかったけど、いつか必ずお会いすると心に決めておりました。スゴイっ!感激ですっ」
そう言うとその娘は気持ちが昂ぶり、反射的に私の手を強く握った。
同じ探検家とはいえ小さな手だ。やはり女の子だな、、。
そのまま私の手を握りしめたまま羨望の眼差しで、
「ぁっ、、あの、サインとか、、してもらっても、、いいですか?」
その突然の申し出に、
「ん?あ、ああ。サインね。お安い御用だ。
ただしここを無事出れたらで構わんかな?」
その私の受け答えに、ハッと我に返る女の子。
「あ、そっか。私ったら、、嬉しさのあまり、、今の状況を忘れてました、、ごめんなさいっ」
そう言って自らの発言に急に気恥ずかしくなったのか、真っ白な肌を紅潮させ、伏し目がちに顔を逸らし、ばつが悪そうにその場で身をよじらせた。
そのイジらしい反応に、思わずドキリとしてしまう。
いかんいかん。何を考えている。今は生きるか死ぬかの状況なんだ。
いや、むしろ死ぬ確率の方が高い。我が子ほども歳の離れた後輩探検家にうつつを抜かしている場合ではない。気を取り直し互いの現状報告を進める。
「ところで君はこっちから落ちてきたが、やはりこっちも先は広大な無限迷路のような状況なのかね?」
「ぁ、、はぃ、、もう何日もひたすら上下左右彷徨い続けました、、」
これまでの苦労を振り返るように、自分が落ちてきた方向を見上げる娘。
すると真っ白で美しい曲線を描く首筋が強調され、それがまた妙に艶かしい。
そこにうっすらとどこまでも透明で清らかな汗が光る。滑り気のある岩肌も、その艶かしさに一役かっている。
、、ドキンッ、、、さらに強い鼓動が胸を打つ。
いかんいかんっ、、又良からぬ事を、、と思った矢先、レイがその不自然な視線にいよいよ気付いたのか、
「あ、、エ?、、」
水晶のようなブルーアイがキョトンと不思議そうにこちらを見ている。
「あ、いや。すまん。何でもない。そうか、、そっちも同じ状況か、、」
必死に誤魔化そうとするが、かえって不自然さが強調されてしまう。
「せ、先生?どうかされましたか?」
不安そうに瞳を潤ませるレイ。
い、いかん。何を考えている、、。私はプロだ。
なんとしてもここを脱出しなくては。
しかしこのレイとかいう娘、、見れば見るほどその魅力に引き込まれていく。
それにこの襟元から覗かせる白桃のように真っ白な、はち切れんばかりの胸元、、
その大きさはまるで白桃というよりは大きなメロンのようだ。
い、いかんいかんっ!、、しっかりしろ!私は偉大なる探検家だ。
ここを脱出する術を考えねばならんのだ。
邪念を振り払うかのように、思わず実際にその場で首を振ってしまう。
するとレイが何か悲しい真実に気付かされたような表情で、
「あ、、もしかして、、、」
もはや雫が落ちそうな程涙を浮かべ、頬もより赤みを帯び、こちらを見つめる。
先程から私に押し寄せる邪な衝動に、いよいよ勘付いてしまったか、、。
5.決壊
そんな表情のままレイは、
「全然気付かずごめんなさい先生。ちょっと待って下さいね。」
そう言うとレイは自らの背にある小型のリュックに、そのままの体制で後ろ手で何かを探り始めた。
するとその動きに合わせレイの特大の白桃が向かい合う私の胸の上で踊る。
「あれ、、ドコだったかな、、」
本人はガサゴソと必死に何かを探り続け、自分の胸が小気味よく私の胸板に当たり擦れあっている事に気付いていない。
ああ、、やめてくれ、、そんなに魅惑的な胸を押し付けないでくれ、、。
胸と胸が擦れ合う感触に加え、その動きに合わせるように、さっきから微かに漂う、このえもいわれぬ若い娘特有の甘く甘美な香り、、
この密封された空間でダイレクトに鼻腔を刺激し、脳の何らかの機能を麻痺させていく。
い、いかん、、ダメだ、、すぐ眼下で踊り続ける白桃に思わず手が伸びそうになる、、
この極限の状況の中で、突如現れた魅惑のリミットを超える甘美なるその存在に、もう抵抗の最後の砦が崩れ落ちそうだ、、と思ったその時、
「あったっ!」
とレイ。本当にギリギリ、すんでのところでレイの胸元まで伸ばした手を慌ててひっこめる。
もはやこちらの心臓の鼓動は伝わっているのでは、と思いながらも私はとぼけた声で、
「?、、あったとは、、何があったのかね?」
すると、
「ジャーンっ!お気に入りの香水ですっ」
えへへ、と照れ笑いをしながら、それを私の顔の前に持ってきた。
「探検家ですけど、私だって女性ですから。
色々気にしてるんですよっ!割と傷つきやすい所もあるし。」
「こ、香水?、、」
香水と、レイの言葉の意味が把握出来ない。
「ごめんなさい先生。さっきから全然気が利かなくて、、」
まだレイが何を言っているのか分からない。
「先生がさっきからなんか様子が変なの、私の汗の匂いのせいでしょ?、、ここに来てからお風呂にも入ってないし、私、ちょっとだけ普通の子より匂いが強めみたいなの。ごめんなさい。こんな極限の状況で気が動転して、エチケットを忘れ先生の事、不快にさせてしまって、、」
、、何を言っているんだこの娘は、、その香りは不快とは真逆の効果を私にもたらしているが、本人はそうは思っていないらしい。どこか一本抜けたその天真爛漫さが、かえってレイの美貌と魅力を引き立ててしまう。
するとレイはその体制のまま、なんとか身をよじらせながら腕を上げ半袖の探検着をまくり脇をあらわにし、そこから一挙に首筋、鎖骨にかけて、その香水をシュッシュとかけ始めた。
「えへへ。これ、白桃の香りなんです。良い匂いでしょ?これで少しは先生も我慢できるはず」
レイ本人の甘い香りと、その白桃の香水が混じり、なんとも目眩のするような官能的な香りが空洞内に充満した。まさにここが桃源郷だといわんばかりに。
そしてレイは思わず敬語も忘れ私に聞く。
「まだ変な匂いする?」
匂いを確認してもらう為か、そっと私の胸に寄り添い身体を密着させ、仔猫のような瞳で不安そうに私を覗きこんだ。その瞬間、
これまでなんとか堪えていた私の何かが音もなく決壊した。
6.口づけ
私はその体制のまま本能のおもむくままにレイを抱きしめ、その目前にあるプックリと艶のある小振りな唇にむしゃぶりついた。
「ンンッ!」
突然口を塞がれ、声にならない声を漏らすレイ。
興奮のあまり私も声と鼻息が勝手に出てきて止める事が出来ない。
たっぷりの水分を含んだその小さくも弾力のある唇を無心に味わい尽くす。
クチュッ、、ブチュッ、、プチュ、、フンッ、、フンッ、、
淫らな音と、私の汚らわしい欲望をそのまま表わしたかのような荒々しい鼻息が、この狭い空間に響き渡る。
何秒、何分、そうしていたかわからない。
とっさに我に返る。
な、、なんて事をしてしまったんだ、、。慌てて唇を離す。
もう時は既に遅い。弁明のしようもない。
「すっ、、すまないっ、、私とした事がその、、この異常な状況でどうかしている、、おお、、なんて事だ本当に、、許しておく、、」
必死の弁明を言い終えかけたその瞬間、
プチュッ!、、
なんと今度はレイの方から再び唇を重ねてきたのだ。
7.迎合
その甘美な感触と、より濃厚に近密に鼻腔を刺激する若いメスの香りが、
再び私の脳を完全に支配していく。次第に思考がまた停止していく。先程までの純粋無垢なレイとは全くの別人格のように、口の中ではどこまでもイヤらしく艶かしく唇と舌を絡め、唾液を流し込み、呑み下し、的確に快楽の階段を上り詰めていく。
チュッ、、クチュッ、、レリョクチュ、、、
あまりの快楽に思わず私の声が漏れる、、
「んむむ、、」
すると今度はレイからも、、
「ンンッ!、、ンッ、、」
可愛らさと妖艶さを同量に兼ね備えた天使の羽音のようなその甘い声が直近で私の耳を刺激する。
このまま時が止まればいい、、陳腐だがこの言葉がこの異常な空間の中で、私が心の底から唱えた一言だった。
そしてその極上の時間も一旦終わりを告げ、唇を離すレイ。
恥ずかしさと喜び、興奮が混ざり合ったような何とも言えない表情で伏し目がちに私を見ながら、
「ひどいよ先生、、私が先生の大ファンだって話したのに、、先生ずるい」
そう言いながら私の胸に頭を沈め、ギュゥっと、こんなに力が強かったのかと驚くほど私にしがみ付いてきた。
近年、こんなにも女性を愛おしいと思った事はあっただろうか。
私の中で又もう一段階、奥の何かが外れた。
ーー 2.結末 に続く ーー
私の名前はカムチャツカ・クレソイ。探検家だ。
二十歳から本格的に探検を生業とし、純粋な好奇心と探究心を武器に、来年50を迎えるこの歳まで未だ現役で探検を続けている。
これまでの私の探検による発見は、アムデカ遺跡、ボボジュブ部族との初接触、新素材サザレー金属の鉱山、と挙げればキリが無い。
そのどれもが偉業といわれ、人類の進歩へ多大な貢献をしてきた。
又、これまでの探検をまとめた私の書籍も20点を超え、そのどれもがベストセラーを記録し、公演をすればチケットはものの数分で完売。
私をモデルとした超大作映画も制作予定だとか。
今や誰もが探検家、冒険家の第一人者として私の名を挙げている。
2.停滞
さて、そんな探検家の私だが、かく言うたった今も探検の真っ只中である。
そして、珍しくこの私が探検中にかなり気が滅入っている。
今私がいるのは世界3大迷宮の一つ、カカリスク大陸にあるボグスレー洞窟。
洞窟としては世界最長で、中は洞窟と呼ぶには余りにも狭く、匍匐(ほふく)全身でやっと進める程度の横穴が、延々と無限迷宮のように上下左右に枝分かれを繰り返す。
そしてこの洞窟の最深部には、人を20歳も若返させる神秘の湧水があると言う。
つまりその伝説の湧水を採取しにきたのだが、、、
すでに洞窟に入り、今日で5日目。完全に足止め状態である。準備した水と食糧も残りわずかだ。
道中、付けたハズの印も何故か見当たらない。
この洞窟特有のやや滑り気のある独特な岩肌が、それらの印を消してしまったのか。
最新型の現在地測定器も完全にその方向を見失い、外部との通信機器も何故か全く繋がらない。
これまでの洞窟とは明らかに何かが違う。一切の常識が通用しない。
いや、全ては言い訳か。これまであらゆる探検をしてきた自分への過信、傲りがこんな結果を招いたのだ。
私が気が滅入るのも、これでお分かり頂けたであろうか。
今ちょうど私が足止めをくらっているこの場所も1.5人分位しかない、僅かなスペースの空洞である。
帽子に付けた半永久型の小型の防具ライトがギリギリその空間を端まで照らし出している。先は完全な行き止まりだ。
幸い今いる空洞内に空気はあり、温度も適温である。また、独特な滑りのあるこの岩肌は水分も大量に含んでおり、最悪その水分でもう2、3日ほどは生きながらえるか、、。
3.邂逅
わずかによぎる最悪の結末、、、。
今世紀最大の探検家、カムチャツカ・クレソイも最後はこんな穴蔵の中でモグラのように一人孤独に死んでいくのか、、。
不安と憔悴、絶望。又、時間はまだ数日あると言うごく僅かな希望。
様々な混沌とした精神状態のまま、疲労も限界を迎え、しばしの睡眠に入ろうとしたその瞬間、
カラッ、、カラカラッ、、
行き止まりのはずの空洞の先から小石の転がる音。
「んっ?」
その音に気づいたやいなや、ガラガラガラッ!と、
もはや小石どころか巨大な岩でも転がり落ちてくるような音が狭い空洞に鳴り響く。
ズザザザーッ!!
行き止まりの筈の空洞の壁が崩れおち、そこから何かがこの狭いスペースに轟音と共に滑り落ちてきた。
とっさに頭を抱え身を守る。
「キャッ!」
まず耳をついたのは、まさかの人間、それも女性の声だ。
「えっ?!」
私も声を上げる。巨大な岩石かと思い、身を固めていたが、ゆっくりと構えた腕の間から目を開らき、その女性の声のする方、といってもこの狭い空洞だ。すぐ目の前である。
「い、痛ったぁ~ぃ、、えっ?!、、ぁ!、、」
正に御対面である。驚きは隠せない。
お互いまだ状況を把握しきれていない。
しっかりと向かい合う形で、このわずか1.5人分のこの空間にピッタリと密着し2人の身体は収まった。
数秒か、数十秒の沈黙の後、改めて意識をなんとか整え、文字通り目と鼻の先にいるその女性、というか女の子だ。二十歳そこそこか。を、自分の意識に落とし込んでいく。
僅かなライトの灯りの中でも煌めく、肩よりやや長めのゴールドに近いブロンドの緩やかな巻き髪。
やや垂れ気味の綺麗なアーモンド型のつぶらな瞳(ブルーアイ)。
その大きな瞳とは相反する極めて小振りな形の良い鼻。
ぷっくりと肉厚で艶のあるやはり大きさは控えめな唇。
頭の小ささが強調される細く綺麗なあご。
この状況でなぜ?と、疑問を抱いてしまう程、ツルツルの陶器のようにキメ細やかな真っ白い肌。
そう。改めてじっくりとその落ちてきた女の子を観察すると、その辺のタレントなど裸足で逃げ出すようなルックスを有していたのである。
4.同業者
まず先に言葉を発したのはその娘だった。
「ぁっ、あの、救助の方ですか?、、良かった、、助かった、、」
余程これまで過酷な道のりだったのか、安堵からその美しい瞳はわずかに潤んでいる。
私はしばらくの沈黙の後、気落ちした声でその質問に正直に答える。
「、、、いや、、残念だが、救助ではない。どうやら我々は文字通り、同じ穴のムジナのようだ、、」
良く見るとその娘は、どれもがおろしたての新品ではあるが、私と同じような服装、装備をしている。
この娘も私と同じ探検家だったのだ。おそらくまだ駆け出しなのであろう。
「そう、、ですか、、、」
私の説明を聞くと、娘は明らかに落胆している。とっさに励ますかのように私も語りかける。
「君も、幻の湧水を求めこの洞窟に探検に?」
「はい、、病に伏した母の、たっての希望で、、私はレイ・アーモンドと申します。まだ探検家になって半年です。」
「そうか、、」
レイ・アーモンド?、、どこかで聞き覚えのある名だな。気のせいか、、。
「私の名はカムチャツカ・クレソイ。君と同じく探検家だ。」
すると私の名を聞いた途端、その娘の表情がパーッと一挙に明るくなった。
「えっ!あ、あの有名なカムチャツカ・クレソイ先生?!」
「うむ。職業柄保身の為メディアには顔を出しておらぬが、私が正真正銘、探検家のカムチャツカ・クレソイだ。さすがに名前くらいは知っていたかな?」
「嬉しいっ!私、先生の著書に感銘を受けて探検家になるって決めたんです!地方出身で今まで公演は行けなかったけど、いつか必ずお会いすると心に決めておりました。スゴイっ!感激ですっ」
そう言うとその娘は気持ちが昂ぶり、反射的に私の手を強く握った。
同じ探検家とはいえ小さな手だ。やはり女の子だな、、。
そのまま私の手を握りしめたまま羨望の眼差しで、
「ぁっ、、あの、サインとか、、してもらっても、、いいですか?」
その突然の申し出に、
「ん?あ、ああ。サインね。お安い御用だ。
ただしここを無事出れたらで構わんかな?」
その私の受け答えに、ハッと我に返る女の子。
「あ、そっか。私ったら、、嬉しさのあまり、、今の状況を忘れてました、、ごめんなさいっ」
そう言って自らの発言に急に気恥ずかしくなったのか、真っ白な肌を紅潮させ、伏し目がちに顔を逸らし、ばつが悪そうにその場で身をよじらせた。
そのイジらしい反応に、思わずドキリとしてしまう。
いかんいかん。何を考えている。今は生きるか死ぬかの状況なんだ。
いや、むしろ死ぬ確率の方が高い。我が子ほども歳の離れた後輩探検家にうつつを抜かしている場合ではない。気を取り直し互いの現状報告を進める。
「ところで君はこっちから落ちてきたが、やはりこっちも先は広大な無限迷路のような状況なのかね?」
「ぁ、、はぃ、、もう何日もひたすら上下左右彷徨い続けました、、」
これまでの苦労を振り返るように、自分が落ちてきた方向を見上げる娘。
すると真っ白で美しい曲線を描く首筋が強調され、それがまた妙に艶かしい。
そこにうっすらとどこまでも透明で清らかな汗が光る。滑り気のある岩肌も、その艶かしさに一役かっている。
、、ドキンッ、、、さらに強い鼓動が胸を打つ。
いかんいかんっ、、又良からぬ事を、、と思った矢先、レイがその不自然な視線にいよいよ気付いたのか、
「あ、、エ?、、」
水晶のようなブルーアイがキョトンと不思議そうにこちらを見ている。
「あ、いや。すまん。何でもない。そうか、、そっちも同じ状況か、、」
必死に誤魔化そうとするが、かえって不自然さが強調されてしまう。
「せ、先生?どうかされましたか?」
不安そうに瞳を潤ませるレイ。
い、いかん。何を考えている、、。私はプロだ。
なんとしてもここを脱出しなくては。
しかしこのレイとかいう娘、、見れば見るほどその魅力に引き込まれていく。
それにこの襟元から覗かせる白桃のように真っ白な、はち切れんばかりの胸元、、
その大きさはまるで白桃というよりは大きなメロンのようだ。
い、いかんいかんっ!、、しっかりしろ!私は偉大なる探検家だ。
ここを脱出する術を考えねばならんのだ。
邪念を振り払うかのように、思わず実際にその場で首を振ってしまう。
するとレイが何か悲しい真実に気付かされたような表情で、
「あ、、もしかして、、、」
もはや雫が落ちそうな程涙を浮かべ、頬もより赤みを帯び、こちらを見つめる。
先程から私に押し寄せる邪な衝動に、いよいよ勘付いてしまったか、、。
5.決壊
そんな表情のままレイは、
「全然気付かずごめんなさい先生。ちょっと待って下さいね。」
そう言うとレイは自らの背にある小型のリュックに、そのままの体制で後ろ手で何かを探り始めた。
するとその動きに合わせレイの特大の白桃が向かい合う私の胸の上で踊る。
「あれ、、ドコだったかな、、」
本人はガサゴソと必死に何かを探り続け、自分の胸が小気味よく私の胸板に当たり擦れあっている事に気付いていない。
ああ、、やめてくれ、、そんなに魅惑的な胸を押し付けないでくれ、、。
胸と胸が擦れ合う感触に加え、その動きに合わせるように、さっきから微かに漂う、このえもいわれぬ若い娘特有の甘く甘美な香り、、
この密封された空間でダイレクトに鼻腔を刺激し、脳の何らかの機能を麻痺させていく。
い、いかん、、ダメだ、、すぐ眼下で踊り続ける白桃に思わず手が伸びそうになる、、
この極限の状況の中で、突如現れた魅惑のリミットを超える甘美なるその存在に、もう抵抗の最後の砦が崩れ落ちそうだ、、と思ったその時、
「あったっ!」
とレイ。本当にギリギリ、すんでのところでレイの胸元まで伸ばした手を慌ててひっこめる。
もはやこちらの心臓の鼓動は伝わっているのでは、と思いながらも私はとぼけた声で、
「?、、あったとは、、何があったのかね?」
すると、
「ジャーンっ!お気に入りの香水ですっ」
えへへ、と照れ笑いをしながら、それを私の顔の前に持ってきた。
「探検家ですけど、私だって女性ですから。
色々気にしてるんですよっ!割と傷つきやすい所もあるし。」
「こ、香水?、、」
香水と、レイの言葉の意味が把握出来ない。
「ごめんなさい先生。さっきから全然気が利かなくて、、」
まだレイが何を言っているのか分からない。
「先生がさっきからなんか様子が変なの、私の汗の匂いのせいでしょ?、、ここに来てからお風呂にも入ってないし、私、ちょっとだけ普通の子より匂いが強めみたいなの。ごめんなさい。こんな極限の状況で気が動転して、エチケットを忘れ先生の事、不快にさせてしまって、、」
、、何を言っているんだこの娘は、、その香りは不快とは真逆の効果を私にもたらしているが、本人はそうは思っていないらしい。どこか一本抜けたその天真爛漫さが、かえってレイの美貌と魅力を引き立ててしまう。
するとレイはその体制のまま、なんとか身をよじらせながら腕を上げ半袖の探検着をまくり脇をあらわにし、そこから一挙に首筋、鎖骨にかけて、その香水をシュッシュとかけ始めた。
「えへへ。これ、白桃の香りなんです。良い匂いでしょ?これで少しは先生も我慢できるはず」
レイ本人の甘い香りと、その白桃の香水が混じり、なんとも目眩のするような官能的な香りが空洞内に充満した。まさにここが桃源郷だといわんばかりに。
そしてレイは思わず敬語も忘れ私に聞く。
「まだ変な匂いする?」
匂いを確認してもらう為か、そっと私の胸に寄り添い身体を密着させ、仔猫のような瞳で不安そうに私を覗きこんだ。その瞬間、
これまでなんとか堪えていた私の何かが音もなく決壊した。
6.口づけ
私はその体制のまま本能のおもむくままにレイを抱きしめ、その目前にあるプックリと艶のある小振りな唇にむしゃぶりついた。
「ンンッ!」
突然口を塞がれ、声にならない声を漏らすレイ。
興奮のあまり私も声と鼻息が勝手に出てきて止める事が出来ない。
たっぷりの水分を含んだその小さくも弾力のある唇を無心に味わい尽くす。
クチュッ、、ブチュッ、、プチュ、、フンッ、、フンッ、、
淫らな音と、私の汚らわしい欲望をそのまま表わしたかのような荒々しい鼻息が、この狭い空間に響き渡る。
何秒、何分、そうしていたかわからない。
とっさに我に返る。
な、、なんて事をしてしまったんだ、、。慌てて唇を離す。
もう時は既に遅い。弁明のしようもない。
「すっ、、すまないっ、、私とした事がその、、この異常な状況でどうかしている、、おお、、なんて事だ本当に、、許しておく、、」
必死の弁明を言い終えかけたその瞬間、
プチュッ!、、
なんと今度はレイの方から再び唇を重ねてきたのだ。
7.迎合
その甘美な感触と、より濃厚に近密に鼻腔を刺激する若いメスの香りが、
再び私の脳を完全に支配していく。次第に思考がまた停止していく。先程までの純粋無垢なレイとは全くの別人格のように、口の中ではどこまでもイヤらしく艶かしく唇と舌を絡め、唾液を流し込み、呑み下し、的確に快楽の階段を上り詰めていく。
チュッ、、クチュッ、、レリョクチュ、、、
あまりの快楽に思わず私の声が漏れる、、
「んむむ、、」
すると今度はレイからも、、
「ンンッ!、、ンッ、、」
可愛らさと妖艶さを同量に兼ね備えた天使の羽音のようなその甘い声が直近で私の耳を刺激する。
このまま時が止まればいい、、陳腐だがこの言葉がこの異常な空間の中で、私が心の底から唱えた一言だった。
そしてその極上の時間も一旦終わりを告げ、唇を離すレイ。
恥ずかしさと喜び、興奮が混ざり合ったような何とも言えない表情で伏し目がちに私を見ながら、
「ひどいよ先生、、私が先生の大ファンだって話したのに、、先生ずるい」
そう言いながら私の胸に頭を沈め、ギュゥっと、こんなに力が強かったのかと驚くほど私にしがみ付いてきた。
近年、こんなにも女性を愛おしいと思った事はあっただろうか。
私の中で又もう一段階、奥の何かが外れた。
ーー 2.結末 に続く ーー
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