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時を壊す
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僕にはある事件がついて回る。それを例えるなら、酷く汚れて異臭すら想像させるモノだ。事件の詳細は知らないけど、無関係ではない事だけは確かだった。
事件当時は警察の取り調べで疲れて、マスコミの追撃が日常。TVや雑誌に取り上げられて、憶測や妄想が入り混ざって、見る度に吐き気がする。
学校では当然、孤立した。心配なんてぬるい言葉すら無い。有名人になったのに独りなんて可笑しな話だ。
事件は、実の父親が起こしたこと。
ただ血が繋がっているだけで、僕の人生は暗く狭い様に感じた。環境がその気持ちを加速させる。
父は刑務所だ。刑務所の外では、何もしていない僕が、父の代わりに酷く罰せられる様に錯覚して苦しむ。
その事件は時代と共に風化された。
しかし、僕の中では異物として残っている。今でもこの世に責められる気がしてならない。
僕は時間と言うモノが嫌いになった。
時を刻むモノ、時を記すモノ、時を記憶するモノ。
そう言ったモノは全て所持しないようにした。
僕が中年と呼ばれる年齢になった頃だろう。一人の男性が声を掛けてきた。
「すみません。私こう言う者です」
名刺を反射的に受け取ってしまい、目で流し読みをする。名前は正直覚えてはいないが、記者だった。僕は名刺をポケットに入れて会釈だけして背を向けた。
「あの!! 事件のことについて何ですけど!?」
肩を強引に掴まれた。僕はただ静かに暮らしたい。色々とあったが、誰もにも迷惑を掛けずに生きてきたつもりだ。血の繋がった反面教師がいるせいか?人の目を気にして生活した。
「何が…聞きたいんですか?」
「貴方のお父さん。本日、出所しましたが……お気持ちは?」
目を逸らして頭や心から忘れていたモノが、その一言で雪崩の様に流れ込んで来る。
僕は言葉が出ず、記者の顔面を思い切り殴った。
「……いっ!!! 何するんですか!?」
「ぶん殴りたい気持ちだったもんで」
そう言って僕はまた背を向けた。しかし、その言葉は嘘である。
僕は近くのホームセンターでナイフを買った。
事件当時は警察の取り調べで疲れて、マスコミの追撃が日常。TVや雑誌に取り上げられて、憶測や妄想が入り混ざって、見る度に吐き気がする。
学校では当然、孤立した。心配なんてぬるい言葉すら無い。有名人になったのに独りなんて可笑しな話だ。
事件は、実の父親が起こしたこと。
ただ血が繋がっているだけで、僕の人生は暗く狭い様に感じた。環境がその気持ちを加速させる。
父は刑務所だ。刑務所の外では、何もしていない僕が、父の代わりに酷く罰せられる様に錯覚して苦しむ。
その事件は時代と共に風化された。
しかし、僕の中では異物として残っている。今でもこの世に責められる気がしてならない。
僕は時間と言うモノが嫌いになった。
時を刻むモノ、時を記すモノ、時を記憶するモノ。
そう言ったモノは全て所持しないようにした。
僕が中年と呼ばれる年齢になった頃だろう。一人の男性が声を掛けてきた。
「すみません。私こう言う者です」
名刺を反射的に受け取ってしまい、目で流し読みをする。名前は正直覚えてはいないが、記者だった。僕は名刺をポケットに入れて会釈だけして背を向けた。
「あの!! 事件のことについて何ですけど!?」
肩を強引に掴まれた。僕はただ静かに暮らしたい。色々とあったが、誰もにも迷惑を掛けずに生きてきたつもりだ。血の繋がった反面教師がいるせいか?人の目を気にして生活した。
「何が…聞きたいんですか?」
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僕は言葉が出ず、記者の顔面を思い切り殴った。
「……いっ!!! 何するんですか!?」
「ぶん殴りたい気持ちだったもんで」
そう言って僕はまた背を向けた。しかし、その言葉は嘘である。
僕は近くのホームセンターでナイフを買った。
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