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3日目

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「徹…ッ」


あれから夜が更け日が昇った。

一晩中犯され続け、動く気力も失った。
ただ廉にされるがままの状態で継続される快楽を享受する。

それでも心には希望が差し込む。
今日は光と会える日。

昨日の今日で俺と会いたくないと思われてるかもしれない。
でも限界な心はどうしようもなく光を求める。


「俺の愛しい徹。」


俺の首筋に廉の息が触れる。


「ッ…」


背筋がゾクゾクと震える。


「可愛い。」


廉の唇が俺の首に吸い付く。


「ッやめろ!」



俺は咄嗟に腕で振り払う。



「はは、何で?
今日は番に会えるから?」


廉はそんな俺の抵抗を交わし今度は俺の首筋に深く噛みつく。


「うッ…」


歯形が残るほどに強く噛まれ痛みに震える。
なけなしの体力がその痛みに消耗されていく。


「徹がΩだったら番になれたのに…
留学なんてせずに閉じ込めておけば良かった。
そしたら徹が目移りすることもなかったのに。」


廉がそう嘆く。


「徹、愛してるよ。」


廉は独り言のようにそう言った。



─────



「うッ…んぁあッ…」



窓から夕焼けが見える。
俺は今、なかを震えるディルドに身をよじらせ苦悶していた。
あれから少し眠り、起きるとこの状態になっていた。


「忘れないでね、徹には俺しかいないってこと。」



戒めるようにディルドを出し入れされる。



「んぁッ…あぁぁぁッ!」


一気に抜かれた刺激に耐えられず射精する。



「服を着て、そろそろ行こうか。」


廉がそう言って立ち上がる。
俺は久しぶりに服に袖を通す。
着替え終えるとすぐに廉が俺を抱き抱える。


「自分で、歩けるッ!」


光に会うんだから、意地でも一人で歩く。


「そう…?
じゃあ一人で歩きな。」


廉がそう言ってベットに俺を降ろす。
ゆっくりと立ち上がる。

ベット縁を支えにガクガク震える足を動かす。
しかしすぐ躓いて床に尻餅をつく。


「ほらね。
腰が抜けて立てないでしょ?」


廉が呆れたようにそう言って再び俺を抱き抱える。


「光に見られる前に降ろしてほしい。」


俺は縋るようにそう願う。


「セックス見せたのに今さら恥ずかしがるの?
可愛いね徹。」


ニコニコした顔で歩みを進めた廉は、扉をあける。

光に会いたくてはやる気持ちを落ち着かせる。


「ほら着いたよ。」


廊下を抜けて地下に続く階段を降りてすぐの頑丈な扉。
この中に光が…


廉が指紋をかざすと、その頑丈な扉が開く。


「…徹?!」


その声に咄嗟に足が動く。
そしてそのまま恋しかった温もりを抱き締める。


「光…!」


「と、おるッ…」


光の肩がしきりに震える。


「徹、寂しかった…辛かったよぉ!」


泣き崩れた光の体を受け止める。
先程までの倦怠感が消える。
ただただ目の前の光を安心させたくて、きつく抱き締める。





「感動の再会だね?」


しばらくしてそう皮肉る声が聞こえた。


「妬けるな。
徹は俺のなのに。」


廉の言葉に抱き締めていた光の肩がビクッと揺れる。


「光の前でやめてくれ。」


俺は強く制止する。


「強気なのはいいけど、どうせ3日後にはまた俺に会いにくるのに。」



「…どういうことだ?」


「このまま逃がすわけないでしょう?」


「どういうことですかッ!」


光が怒りをあらわにする。


「…俺達の会話に、勝手に入ってこないでくれない?」


「僕は…徹のッ」


「黙れ。」


廉の怒気をはらんだ低い声が響く。


「光…大丈夫だ。」


そう言いながらなだめるように光の頭を撫でる。


「徹が働く会社は俺が買収したよ。
だから今は俺が雇用主。」


「そんな…」


「他のとこ行っても無駄。
俺が手を回してるから徹は俺のとこ以外で働けない。
これからは3日に1回俺に会いに来て、セックスすればいい。
今の倍は給料を払うから生活にも困らない。」


「なんで…なんでッ!!」


廉の言葉に光が取り乱す。


「光ッ…大丈夫だから。
俺が光を守るから。」


「嫌だッ!僕だって徹を守る!」


腕の中で暴れる光を必死に抱き止める。


「…守れるわけないでしょ?
じゃあ、君が男娼になる?」


こいつなに言って…


「あ、もちろん君を抱くのは俺じゃないよ。
どっかの金持ちの男に紹介するから、君が徹の分まで稼ぐ?」


「何を言ってる!!
俺がそんな真似はさせない。」


「だってΩはそれくらいでしか稼げないじゃん?」


Ωは社会的地位が低い。
番がいれば養ってもえるが、番がいなければ体を売って生計を立てるしかない。


「それは…」


「そんなの俺が許さない。
光にそんなことさせられない。」


俺は光の言葉を遮る。


「じゃあ交渉成立だね。」


「うぅッ…ううッ…」


泣きじゃくる光をなだめながら、俺は強く拳を握った。

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