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怒り

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翌日

私は痛む体に鞭を打ってある場所へと向かっていた。

目を覚ました私がいたのは、ミゲル王子の王宮だった。
私が眠っていた間の話を聞いた。
今日はこれから、ハンクにされたことの証言をしに行く。

既に私とハンクの問題ではなく、両国間の問題へと発展していた。
私はこの一年で密かに、ミゲルの婚約者という扱いになっていた。
なので、ハンクはこの国の第一王子の婚約者に暴行を働いたことになる。

私もかなり怒りを抱えていた。
ハンクから受けた暴行の数々で負った心の傷は癒えない。
許せるはずもなく、私はハンクへの恐怖より大きくなっていた怒りを糧に彼らの前へと姿を現した。


「アナ…貴方はどれほど迷惑を掛ければ気が済むの?」


応接間へと入ってきた私をすぐに罵倒したのは私の両親だった人達だった。


「国王に謝りなさい。
そしたらこのことは大目に見よう。」


一方的に私が悪いという両親の言い分に私は頭を抱える。
意味が分からない。
この人たち、本気で言ってる?
というか、この期に及んで私のせいにするなんて…


「その物言いは失礼ではありませんか?」


怒りに震える私を守るようにミゲル王子がそう言った。


「あなた方はもうアナを破門しましたよね?
もうアナの両親として振る舞いをする権限はありませんよ。
私も遠慮する義理はないですから言わせて頂きます。
アナは私の婚約者、この国の次期皇后となる身分です。
その態度は無礼に当たります。」


「何を言ってるの?
私はアナの母親なのよ!」


「あなたは、私の母親ではない…!」


いい募る母親だった人に私は初めて言い返した。


「私達の縁は既に切れています。
あなた方が切ったんじゃありませんか?
今更、私にすがっても遅いですよ。
それと、ハンクが許す許さないの問題ではありません。
これは私が許す許さないを決める話です。
無論、あの男を許す気などありませんけど。」


私がそう言うと、2人は押し黙った。


「お母様とお父様になんてこというの?
酷いわ、アナ!」


先ほどまで両親の影に隠れていた義理の妹ナタリーのその声に私は呆れる。


「もう一度言いましょうか?
私はもうこの人達と縁を切ってます。
家族への振る舞い、敬意など既にありません。
ナタリー、貴女も同じですよ。
私はもう姉ではありません。
一人で自立してください。」


「私が養子だから…そんなこと言うんだわ!」


私がそう言うと、何故か泣き出すナタリー。
いやいや、養子とか関係なく育ったでしょうが。
自分が養子なんてコンプレックスないくせに。

私の方が実子なのに虐げられてきましたけど。
よくそんな実は今で辛かったんです、っていう演技できますね。

私は冷めた目で泣き真似をしている彼女を見てため息を吐く。

ああ、めんどくさい。
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