9 / 15
救出
しおりを挟むあれはきっと、ミゲル王子だわ。
私は確信した。
気付いて…
するとそんな思いが通じたのか、ミゲル王子と目があった。
私は泣きそうになるのをこらえる。
やっと誰かに見つけてもらえた。
窓越しにやってきた彼は私の姿に驚いた表情を見せる。
そしてすぐに頬を赤らめていた。
あ…裸だった。
今さらそんなことに気付くも、恥ずかしがってる状況ではない。
私は言った。
「助けて…!」
窓越しなので、おそらくは王子に声が届いていない。
けれど必死に口を動かす。
そんな私を見て、彼は察したらしい。
「私を出して…」
私の頬を涙がつたう。
「何をしてる…?」
突然、後ろから聞こえた声に私は背筋が凍った。
そしていきなり体を捕まれそのまま後ろへと倒れる。
痛い…
思いきり背中を打ち付ける。
痛みですぐには体を起こせなかった。
ハンクの容赦ない行動に私は涙がでそうになる。
負けるな…
「逃げようとしてたのか?
無理に決まってるだろ、この窓から逃げるなんて。」
もしかして、気付いてない…?
ハンクの言葉から察するに、ミゲル王子に助けを求めたことではなく私が窓から出ようとしたことを咎めているようだった。
私は窓を確認する。
確かに下からでは王子の姿が見えない。
これなら…
私は一つの望みにかけることにした。
「なにも話さないつもりか?」
私は終始無言を貫く。
「そんなお前には仕置きが必要だな。」
そう言ったハンクが寝転んだままの私のみぞおちに蹴りをいれる。
「ッ…」
強い衝撃が襲い、思わず顔をしかめる。
そんな私にお構い無しに彼は蹴り続けた。
我慢よ…
私はミゲル王子の助けが来るのを待った。
しばらくすると部屋の外が騒がしくなる。
「なんだ…?」
ハンクは怪訝そうにそう言って私への暴行を止めた。
──ドンッ
その時、部屋の扉が勢いよく開いた。
外から現れたのは、やはりミゲル王子だった。
「貴様、なん…」
彼は入ると、制止しようとしたハンクに蹴りをいれる。
するとハンクの体が後ろに倒れる。
どうやら失神したらしい。
「アナ…!」
ミゲル王子が駆け寄ってくる。
彼は私を見ると、すぐさま着ていたジャケットを脱ぎ私に被せた。
そして座り込み、倒れていた私を抱えるような体勢をとる。
「遅くなってすまない。」
彼に会えた嬉しさが込み上げる。
「こちらこそ、助けて頂きありがとうございます。」
私を抱きとめる腕が温かい。
久しぶりに安息感に包まれる。
やっと、ここから出れるのね。
「ミゲル王子、わたし貴方のことが…」
大切なことを言おうと思っていたのに、その意思とは裏腹に意識が遠のいていく。
最後、まで…
私…
2
お気に入りに追加
113
あなたにおすすめの小説
たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな、と婚約破棄されそうな私は、馬オタクな隣国第二王子の溺愛対象らしいです。
弓はあと
恋愛
「たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな」婚約者から投げられた言葉。
浮気を許す事ができない心の狭い私とは婚約破棄だという。
婚約破棄を受け入れたいけれど、それを親に伝えたらきっと「この役立たず」と罵られ家を追い出されてしまう。
そんな私に手を差し伸べてくれたのは、皆から馬オタクで残念な美丈夫と噂されている隣国の第二王子だった――
※物語の後半は視点変更が多いです。
※浮気の表現があるので、念のためR15にしています。詳細な描写はありません。
※短めのお話です。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません、ご注意ください。
※設定ゆるめ、ご都合主義です。鉄道やオタクの歴史等は現実と異なっています。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
わがまま妹、自爆する
四季
恋愛
資産を有する家に長女として生まれたニナは、五つ年下の妹レーナが生まれてからというもの、ずっと明らかな差別を受けてきた。父親はレーナにばかり手をかけ可愛がり、ニナにはほとんど見向きもしない。それでも、いつかは元に戻るかもしれないと信じて、ニナは慎ましく生き続けてきた。
そんなある日のこと、レーナに婚約の話が舞い込んできたのだが……?
【完結】その令嬢は、鬼神と呼ばれて微笑んだ
やまぐちこはる
恋愛
マリエンザ・ムリエルガ辺境伯令嬢は王命により結ばれた婚約者ツィータードに恋い焦がれるあまり、言いたいこともろくに言えず、おどおどと顔色を伺ってしまうほど。ある時、愛してやまない婚約者が別の令嬢といる姿を見、ふたりに親密な噂があると耳にしたことで深く傷ついて領地へと逃げ戻る。しかし家族と、幼少から彼女を見守る使用人たちに迎えられ、心が落ち着いてくると本来の自分らしさを取り戻していった。それは自信に溢れ、辺境伯家ならではの強さを持つ、令嬢としては規格外の姿。
素顔のマリエンザを見たツィータードとは関係が変わっていくが、ツィータードに想いを寄せ、侯爵夫人を夢みる男爵令嬢が稚拙な策を企てる。
※2022/3/20マリエンザの父の名を混同しており、訂正致しました。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
本編は37話で完結、毎日8時更新です。
お楽しみいただけたらうれしいです。
よろしくお願いいたします。
私、聖女じゃありませんから
まつおいおり
恋愛
私、聖女クリス・クロスは妹に婚約者を寝取られて婚約破棄される…………しかし、隣国の王子様を助けて悠々自適に暮らすのでいまさら戻って来いって言われても戻る訳ないですよね?、後は自分達でなんとかしてください
かなり短く締めました……話的にはもうすでに完結と言っても良い作品ですが、もしかしたらこの後元婚約者のざまぁ視点の話を投稿するかもです
【完結済み】「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」幼い頃からの婚約者に、浮気を疑われた私。しかし私の前に、事の真相を知る人物が現れて……
オコムラナオ
恋愛
(完結済みの作品を、複数話に分けて投稿します。最後まで書きあがっておりますので、安心してお読みください)
婚約者であるアルフレッド・アルバートン侯爵令息から、婚約破棄を言い渡されたローズ。
原因は、二人で一緒に行ったダンスパーティーで、ローズが他の男と踊っていたから。
アルフレッドはローズが以前から様子がおかしかったことを指摘し、自分以外の男に浮気心を持っているのだと責め立てる。
ローズが事情を説明しようとしても、彼は頑なに耳を貸さない。
「こんなことなら、婚約破棄させてもらう!」
彼がこう宣言したとき、意外なところからローズに救いの手が差し伸べられる。
明かされたのはローズの潔白だけではなく、思いもよらない事実だった……
皇太女の暇つぶし
Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。
「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」
*よくある婚約破棄ものです
*初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです
令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。
夢草 蝶
恋愛
公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。
そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる