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救出

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あれはきっと、ミゲル王子だわ。
私は確信した。

気付いて…

するとそんな思いが通じたのか、ミゲル王子と目があった。

私は泣きそうになるのをこらえる。
やっと誰かに見つけてもらえた。

窓越しにやってきた彼は私の姿に驚いた表情を見せる。
そしてすぐに頬を赤らめていた。

あ…裸だった。
今さらそんなことに気付くも、恥ずかしがってる状況ではない。

私は言った。


「助けて…!」


窓越しなので、おそらくは王子に声が届いていない。
けれど必死に口を動かす。

そんな私を見て、彼は察したらしい。


「私を出して…」


私の頬を涙がつたう。


「何をしてる…?」


突然、後ろから聞こえた声に私は背筋が凍った。
そしていきなり体を捕まれそのまま後ろへと倒れる。

痛い…


思いきり背中を打ち付ける。
痛みですぐには体を起こせなかった。
ハンクの容赦ない行動に私は涙がでそうになる。

負けるな…


「逃げようとしてたのか?
無理に決まってるだろ、この窓から逃げるなんて。」


もしかして、気付いてない…?
ハンクの言葉から察するに、ミゲル王子に助けを求めたことではなく私が窓から出ようとしたことを咎めているようだった。

私は窓を確認する。
確かに下からでは王子の姿が見えない。

これなら…

私は一つの望みにかけることにした。


「なにも話さないつもりか?」


私は終始無言を貫く。


「そんなお前には仕置きが必要だな。」


そう言ったハンクが寝転んだままの私のみぞおちに蹴りをいれる。


「ッ…」


強い衝撃が襲い、思わず顔をしかめる。
そんな私にお構い無しに彼は蹴り続けた。

我慢よ…
私はミゲル王子の助けが来るのを待った。

しばらくすると部屋の外が騒がしくなる。


「なんだ…?」


ハンクは怪訝そうにそう言って私への暴行を止めた。


──ドンッ


その時、部屋の扉が勢いよく開いた。
外から現れたのは、やはりミゲル王子だった。


「貴様、なん…」


彼は入ると、制止しようとしたハンクに蹴りをいれる。
するとハンクの体が後ろに倒れる。
どうやら失神したらしい。


「アナ…!」


ミゲル王子が駆け寄ってくる。
彼は私を見ると、すぐさま着ていたジャケットを脱ぎ私に被せた。
そして座り込み、倒れていた私を抱えるような体勢をとる。


「遅くなってすまない。」


彼に会えた嬉しさが込み上げる。


「こちらこそ、助けて頂きありがとうございます。」


私を抱きとめる腕が温かい。
久しぶりに安息感に包まれる。

やっと、ここから出れるのね。


「ミゲル王子、わたし貴方のことが…」


大切なことを言おうと思っていたのに、その意思とは裏腹に意識が遠のいていく。

最後、まで…

私…
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