追放された私の行方

無味無臭(不定期更新)

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抵抗

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あれから…どのくらい経ったの?

部屋に入る日差しに照らされて、私は怠い体を起こした。

最初は縛られていた手も、途中で外していいことになった。
理由は、私が抵抗しないから。

このまま、ずっと…
そう思うと悲しみで涙が出てくる。
私は何も纏わない自分の体を抱き締めた。

今やっと一人になった。
ハンクはしばらくこの部屋に戻ってこない。
しかし逃げ出すことはできない。
なぜなら部屋の外に護衛が立っているのだ。
よろよろとベッドから降りる。
しばらく歩かなかっただけで少しよろけそうになった。
そんな拙い足取りで私は、自分の背の上辺りにある窓を見た。

なんとか窓から外を見れないものか。
そう思った私は、窓の縁に手を掛けてよじ登ろうとした。
しかし案の定そんなことはできなかった。

この部屋にはベッド以外、椅子などの家具が何もない。
あぁ、終わった。
もう無理だわ。
このまま誰にも見つからず、一生を終えるのね。

ハンクの子供を産んでも育てることはできない。
ナタリーに取られてしまう。
その子供の本当の産みの親である私に命の保証はあるのか?
そんな疑問がわく。

あるわけない。
国王が皇后との子が産まれないからと他の、ましてや元婚約者に産ませたなんて。
そんな醜聞は隠して起きたいはずだ。
となれば、私は子供を産んだら用済みになって殺されてしまうのか。

そう結論が出ると、途端に寒気がしてくる。
死にたくない。
こんな最後なんてあんまりよ。
みるみるうちに諦めていた心に、強い力が沸く。

ここを出たら一番に会いたい人を考える。
その人のために…ってなんで思い浮かべた相手がミゲル王子なの?
もっと、他に…いなかった。
この一年、一番多く話した相手が彼だった。

嘘でしょ。
まさか私…絆された?
彼への気持ちを自覚する。
無意識に絆されていたことを、悔しく感じる。

それと同時に私の心に、ミゲル王子に会いたい…という活力がみなぎった。
自分からなにか行動を起こさなくては…私はそう決意した。

よし、今の自分がやるべきことはこの場所がどこか知ることね。
私は再び窓を見る。

そして先ほどと同じようによじ登ってみる。
しかし、やはり落ちてしまう。
だけど今の私は、ここで諦めるようなことはしない。
そして何度目かの挑戦でようやく、よじ登ることに成功した。

窓越しに外を見ると、奥の方にいつもいく市場が見えた。
遠くに監禁されてるわけではないのね。

もう一度、窓越しに辺りを見回す。
知り合いはいないかしら…
あれ…?
奥で、誰かを探し回る素振りのある人を見つけた。

もしかして…
私は思わず必死に窓を叩いていた。
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