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追放
しおりを挟む「アナ、今日をもって君を国外追放とする。」
「…はい?」
私の婚約者であり、皇太子でもある彼からの突然の国外追放命令。
「そして当然だが君との婚約も解消する。」
「私がなにかしましたか?」
国外追放される覚えが全くないのだが…
私がそう聞くとバツの悪そうな表情をするハンク。
あぁ…ナタリーか。
私は気が遠くなるような感覚に陥った。
薄々気付いていた。
私の義理の妹ナタリーと婚約者のハンクが男女の関係にあることに。
「分かりました。
では今日中にでも国を出ていこうと思います。
今までお世話になりました。」
私はハンクにそう伝えると、振り返ることなくその場を後にした。
時刻は昼過ぎ。
不思議と悲しくなかった。
早く屋敷に戻り荷物をまとめなければ、今日中に国を発つことができない。
そんなことを思いながら私は足早に馬車へと乗り込んだ。
ーーーーーーーーーーーーー
「お姉様、お帰りなさい。
何をしているのですか?」
屋敷へ戻り、必要な荷物をまとめる私の元にやってきたナタリー。
白々しい態度の彼女に私は淡々と答える。
「私、今日で国外追放となったのよ。
だからこの屋敷から出ていく支度をしているの。」
「えっ?
そんな…なぜですの?」
驚いている声とはアンバランスに口角を上げ勝ち誇った様子の彼女。
やっぱりハンクの婚約者の座が欲しかったのね。
私が6歳の頃に養子としてやってきたナタリー。
私より1つ下で歳が近いから仲良くなれるかな、なんて意気込んでいた頃が懐かしい。
彼女は最初から何故か私のことを嫌っていた。
私への元々薄かった両親の愛情は、いつの間にか彼女の方へと移り、使用人も私よりナタリー優先に動くようになった。
そんな周りの態度に齢6歳にして辟易した私はそれから1人で生きていくことを決めた。
ハンクが私の婚約者になった時、ナタリーは彼が好きなんだと悟った。
彼と並ぶ私を見るナタリーの眼差しに嫉妬の念が宿っていたから。
それから今まで以上に私への当たりが強くなったナタリーは、私を悪者へと仕立てることに必死になった。
成績が悪くなったのは私に虐められていたからだと両親に泣きつき、テストは毎回私の答案用紙とすり替えさせた。
おかげで私は卒業するまでの間、出来の悪い皇太子の婚約者だと囁かれ続けた。
それだけでは収まらず、周りに私を義理の妹を虐める最低な姉だと吹聴し続けた。
その結果、私は国中から白い目で見られた。
当然腹が立っていたが尾首にも怒りを出さなかった。
ただ淡々と無表情を貫いた。
なぜ、そんな理不尽な仕打ちに耐え続けたのか。
それは、私がいつかこの生活が終わるだろうと予想していたからだった。
ナタリーは欲しいものはなんでも手に入れようとする。
きっと私の婚約者ハンクも奪おうと画策するだろう、と。
私が皇太子の婚約者でなくなれば、両親は私に失望して屋敷を追い出すことは間違いない。
だからこういう日のためにと、こっそり編み物の仕事を引き受けていた。
その賃金を蓄えとして何年も貯めていたので、当分生きていくだけの余裕がある。
これまでのことは綺麗さっぱり忘れて新しい人生をスタートさせよう。
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