将来の義理の娘に夫を寝取られた

無味無臭(不定期更新)

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再会

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部屋に戻った私は社交界以外で夫と出会う方法を考えた。

夫と出会うには…

夫は、あ。
しばらく考えるとあることを思い出した。

結婚してすぐの頃に公爵家の執事長から聞いた話。
その話によれば王都に夫が幼い頃からお世話になる仕立て屋があるらしい。

そうだわ。
そこなら。
国王主催パーティーを控えるこの時期夫はその仕立て屋に行っているかも。

そこでなら夫と会うことができる。

私は急いで王都へ行く支度を始めた。





昼前には目的地の仕立て屋に着いた。
まずは仕立て屋の店主に夫が来るかどうか聞いてみることにした。

カランカラン「すいません。」

店内はアンティークを基調としたお洒落な内装。
奥から店主らしき老齢の男性が出てきた。

「何をお探しでしょう。」

「えっと私、人を探していて…
公爵家のエリック子息は服を仕立てに来られたでしょうか。」

そう言うと店主は怪訝そうな顔をした。
そうよね。
何も名乗らず教えてほしいなんて。
だけど素性は明かせない。
出会う前の夫に知られれば不審に思われてしまう。

「あなた様はその方とどういう関係なのでしょうか?」

未来の妻ですとは言えない。
現時点で私とエリックに面識はない。
赤の他人だ。

「複雑な事情がありまして。
関係性についてはお話できないのです。」

これで教えてもらえなかったから諦めよう。

「…分かりました。
お教えします。
エリック子息ならまだ来られていませんよ。
今日いらっしゃる予定です。」

そんな私に店主は深く考え込んだ末教えてくれた。

「…!
ありがとうございます!」

私は店主に深くお辞儀し店の外に出た。

夫が今日この店にやってくる。
店に入る前に話しかけられるだろうか。
というか何て話しかければいいの?

ここで悩んでいてもしょうがない。
夫が現れるまで近くのカフェで考えながら待ちましょう。






ちょうど仕立て屋の入り口が見える席に座ることができた。
美味しい紅茶を飲んで考える。
なんと言って話しかけよう?

『私リーラと申します。
少しお話ししませんか?』

初対面で不審すぎるわね。

『えっと靴落としませんでした?』

落とすわけない。
彼は馬車で来るんだった。

はぁー。
考えてもちょうど良い言葉が見つからない。
そもそも私お喋りするのが苦手なのよね。
そんな私に夫はいつも会話のきっかけをくれた。
だから私は夫と話すのがとても楽しかった。


そんなことを思っていたら涙が出てきた。
夫が恋しい。

「あの…」

その時店員の女性に声をかけられた。
あ、いけない。
深く考えすぎて周りを見ていなかった。
私は急いで涙を拭く。

「お客様と相席したいという方がいらっしゃいまして…」

相席?
誰だろう?


…え?
そこにいたのは夫エリックだった。

「なんで…?」

どういうこと?

「リーラ令嬢ですよね?
僕はエリックといいます。
貴方の縁談相手です。」
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