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妖精との出会い
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女の子の上に建てかけのログハウスの材木が落ちてくる。
とっさに僕は彼女を腕でかかえて、ころびながらそこを脱出した。
危機一髪だった。
何かの拍子に材木を縛っていたロープが緩んだんだろう。
彼女は息を切らしているが、ほっとした表情をしている。
ここは、「山野山」
瀬戸内海に面した標高約800mのとても景色の良い山。
山頂が高原のようになっていて、高度経済成長のころは人がごったがえしてしで賑わっていた。
レーシング場があったり、ジェットコースターがある遊園地があったりして、
子供たちの歓声も絶えなかった。
今はレーシング場も遊園地も無くなり、落ち着いている。
これも時代の流れか。
でも一定の人々は訪れている。
景色が抜群にいいのだ。
瀬戸内海の海の島々が一面に見渡せる。四国も見える。
青い鏡のような海面にブロッコリーのような島々が浮かんでいるようだ。
島と島を繋ぐ橋は銀の箸のように輝いている。
「自然と共生しよう」という看板が雑草に埋もれている。
彼女が落ち着いてきたので話を聞いてみると家族でキャンプに来ているらしい。
この山には大きなオートキャンプ場がある。
僕らはパジェロ、彼女の家族はランドローバー、彼女の家はお金持ちらしい。
「ぜっかくのご縁だし、お礼をかねて一緒にバーベキュー食べませんか。」
と彼女の父親。名前は日高文雄、母親は恵子、彼女は良美6歳、お兄さんの純也は10歳。
僕の名前は渡哲夫(渡哲也に全然似てないとよくからかわれる、年が違い過ぎると思うのだが)年齢は10歳、妹は明美6歳。日高家の子供たちと同級生だ。父親は啓介、母親は美穂。
ひととおり自己紹介をしたあとはワイワイといろんな話をした。日高のお父さんが持ってきていたドイツの白いソーセージがとても美味しかった。
子供たちだけで森に探検に行ってみようということになった。
もう日が暮れかけていたし、ふくろうや動物の声が聞こえてきて最初は少し怖かった。
でも遠くに目をやると、木々の間からふもとの町のあかりが見えて少し心強くなった。
「天狗岩」を目指すことにした。歩いて500mくらい。
そんなに遠くない。
懐中電灯を照らしながら歩くと「天狗岩行」の看板が見えた。
どうやら名所らしい。
四人で歩いていると不思議なことが起こった。
気が付いたら僕たちのそれぞれの肩先に、妖精のようなものが止っている。
蝶々みたいなカタチをしていて、ちっちゃな男の子や女の子の姿をしたものに羽が生えている。
最初は信じれなかった。
日本語がじゃべれるようだ。敵意は感じない。
近くに彼らの村があるという。
いろいろ話していくうちに、違和感がなくなってきた。
どうやら友達になれそうだ。
彼らは夜しか姿を見せることができない。
一人の妖精が僕に語りかけてきた。名前はエルというらしい。
実は今大変困っているんです。どうか助けてください。
エルは泣きそうな声で僕に言った。
エルの言い分はこうだ。
「僕たちの住んでる村が人間たちによって壊されようとしているんです。森の木が次々と切り倒されてます.
このままでは僕たちの住むところが無くなってしまいます。何とかお力添えいただけないでしょうか?」
木が次々と切り倒されている原因は、リーゾート地のログハウスを建てるためだ。
開発業者が次々と伐採している。
詳しい事情をもう少し聴き、その日は別れた。
暫く経ったらまたここに来ことを約束した。
また来た時の合図は、懐中電灯を3回付けたり消したりするということにした。
妖精たちと話しをした「天狗岩」は名前のとおり天狗の鼻のような形をしている岩が、
海の方に向けて出張っている。
朝目が覚めたら僕の枕元に何故かピンクの花が置いてあった。
他の3人も同じようだった。昨日あったことは事実なんだ。
朝食を両家がともに食べることになった。
クリームシチューと飯盒で炊いたごはん。これは、ちょっと焦げてるところが旨い。
思い切って昨夜の出来事を両家の両親に話した。
当然だと思うが両家の両親は笑ってとりあってくれない。
僕たちはそれでも必死に訴えた。
日高くんの妹の明美ちゃんはもう泣きそうだった。
信じてもらうために、枕元に置いてあるピンクの花を見せるために
それぞれのテントに戻った。
確かに、子供たちが簡単に手に入れられるような花ではない。
学術的に希少な花のようだ。
それからも僕たちは説得を続けた。
ついに両親たちは、僕たちに根負けして、「おい、じゃあ今夜その場所に連れてってくれ。もしその妖精とやらが出てきたら信じてやる」
ということになって夜の8時に「天狗岩」に6人で行った。
一緒に出掛けた日高さんは、不動産屋の社長で業界の相談役をやってたりして、けっこう顔が効くみたいだ。
そんなこんなでワイワイ言いながら「天狗岩」にたどり着いた。
懐中電灯を3回付けたり消したりする。
「おーい、エル、僕だよ」と大きな声をかける。
この人たちは、僕たちのお父さんとお母さんだ。危害は加えない。
しばらくそのやりとりが続いているうちに、エルが僕の肩先に止った。
「コンニチワ」と僕たちの両親に話しかける。
両親たちはびっくりして、口をパクパクさせている。
*この物語はフィクションです、実在する人物・団体等は一切関わりございません。
あなたの声が書く力になります。ぜひコメントや読者登録よろしくお願いいたします。
やがて両親たちは落ち着いたが、まだほっぺをつねったりしている。
エルは、昨日僕たちが聞いた話をかいつまんで話した。
いろいろ話していくうちに両親たちも打ち解けたようだ。
不思議な違和感はもう無くなっていた。
「でもねエルくん、僕たちも好きでこんなことをやっているわけじゃないんだ。仕事だから仕方なくやってる面もある。君たちの村の件には僕たちはかかわっていないが、僕たちの事情も分かるよね」と日高社長。
エルは小さくうなづいた。でも村を守んなきゃならないんです。
このまま開発が進むとぜったい僕たちの住むところが無くなってしまいます。お願いです、何とかしてもらえませんか。」とエルは何度も頭を下げた。
「う~ん、今日の件は僕はかかわっていないし、今はどうしようもないけど、話は分かった、少し考えてみる」と日高社長は答えて、それからしばらく雑談をして別れた。
眼下には昨日と同じように星あかりような町の灯りが見えている。
次の日の夜、僕たち子供4人はまた「天狗岩」に遊びに行った。
キャンプしているテントからはけっこう近い。
エルたちを呼んで、今日は昨日の話題にふれずに無邪気に遊んだ。
しかし、その帰りに大変なことが起こってしまった。
妹の明美が毒虫に刺されたのだ。
さされたところがみるみるうちに腫れていき、熱も40度くらいありそうなくらい上がった。
大変たちの悪い毒虫のようだ。
しかも進行が速い、一刻も早い手当が必要だ。
しかし、ふもとの町まで車でも1時間くらいかかる。
かなり危ない状態だ。
テントに帰って状況を説明したら、両親も狼狽した。
その時、あの妖精たちが何人かで力を合わせて少し大きな木の実を持ってきてくれた。
「コレヲノメバアケミハナオル」エルはそう告げた。
村に昔から伝わる、薬になる木の実のようだ。
時間がない、僕たちはそれを信じることにした。
少し硬そうだったが、懸命に明美はそれをかみ砕いて食べた。
すると、みるみるうちに状態が良くなってきた。
不思議だ。症状は軽くなり、そして治った。
「コレハボクタチノムラニツタワルルオナッテキノミナンダ。
ドクムシササレタトキトカニヨクキク。アケミハモウダイジョウブ」。
僕たちは何度もお礼を言った。そしてやがて彼たちは自分たちの村に帰って行った。
後日病院で検査してもらった。症状が起こったのは毒虫のせいだということは分かったが、何でそんなに早く治っ
たのかドクターは不思議がっていた。話しても信じてもらえないだろうから、
ドクターにお礼を言って病院をあとにした。
明美は何事もなかったように元気そうだ。
その一件があった次の日から、日高社長は猛烈に動き始めた。
妖精たちを脅かしてしている材木の伐採は、あの事故のあったログハウスの不動産屋がかんでいるらしいことをを突き止めた。
材木の下敷きになって、知人の娘が大けがをしそうになったことをガンガン訴え、相手を自分のペースに乗せた。
非は相手にあるのだから話は聞かざるおえない。
聞くとこによると、あのログハウスは日当たりが悪くて、なかなか売れないでいるらしい。
そこで日高社長は、「僕が買ってもいい。ただし条件がある。あの妖精たちの村の開発は中止するようにと言った」。もちろん妖精たちのことは話していない。
不動産のバブルが弾け、ちょっと売りにくかったあの界隈の開発をこれからどうするか、考えているところだった。
しかし、相手は商売人、タフな交渉が続いた。
日高は結局勝った。
やはり、あの事故のことがかなり効いているようだ。
警察等による調査の話を持ち出すと、急に態度が変わった。
どうせたたけばほこりが出るようなずさんな工事を他でもやっているのだろう。
調査が入るのはかなりまずいみたいだ。
相手と、手付の念書を交わし別れた。少しホットした。
日高社長は大きく伸びをした。
「あの妖精たちに恩返しができる」。ちょっと嬉しくなった。
あの妖精たちの村は守られたのだ。
次の休みを利用して、両家はまたあの「天狗岩」に集まった。
合図をするとエルたちがやってきた。
改めて一通り話をすると「アリガトウ、ホントニアリガトウ」と大喜びした。
あたりかまわず急速に飛び回り始めた。よほど嬉しかったのだろう。
楽しいひとときを過ごしてその日はサヨナラをした。
きっと今頃、村では大騒ぎになっているだろう。
秘密のドリンクなんかもふるまわれているかもしれない。
数か月後、例のログハウスが完成した。
僕たち両家の家族は定期的にそのログハウスに泊まるようになった。
人間の前にはめったに姿を現さないエルたりも僕らの仲間に加わって、
楽しそうにログハウスの中を飛び回っている。
あの壊れかけていた看板に書かれていた「自然との共生」。
その言葉が頭をよぎった。
今夜もにぎやかに夜がふけていく。
(おわり)
*この物語はフィクションです、実在する人物・団体等は一切関わりございません。
とっさに僕は彼女を腕でかかえて、ころびながらそこを脱出した。
危機一髪だった。
何かの拍子に材木を縛っていたロープが緩んだんだろう。
彼女は息を切らしているが、ほっとした表情をしている。
ここは、「山野山」
瀬戸内海に面した標高約800mのとても景色の良い山。
山頂が高原のようになっていて、高度経済成長のころは人がごったがえしてしで賑わっていた。
レーシング場があったり、ジェットコースターがある遊園地があったりして、
子供たちの歓声も絶えなかった。
今はレーシング場も遊園地も無くなり、落ち着いている。
これも時代の流れか。
でも一定の人々は訪れている。
景色が抜群にいいのだ。
瀬戸内海の海の島々が一面に見渡せる。四国も見える。
青い鏡のような海面にブロッコリーのような島々が浮かんでいるようだ。
島と島を繋ぐ橋は銀の箸のように輝いている。
「自然と共生しよう」という看板が雑草に埋もれている。
彼女が落ち着いてきたので話を聞いてみると家族でキャンプに来ているらしい。
この山には大きなオートキャンプ場がある。
僕らはパジェロ、彼女の家族はランドローバー、彼女の家はお金持ちらしい。
「ぜっかくのご縁だし、お礼をかねて一緒にバーベキュー食べませんか。」
と彼女の父親。名前は日高文雄、母親は恵子、彼女は良美6歳、お兄さんの純也は10歳。
僕の名前は渡哲夫(渡哲也に全然似てないとよくからかわれる、年が違い過ぎると思うのだが)年齢は10歳、妹は明美6歳。日高家の子供たちと同級生だ。父親は啓介、母親は美穂。
ひととおり自己紹介をしたあとはワイワイといろんな話をした。日高のお父さんが持ってきていたドイツの白いソーセージがとても美味しかった。
子供たちだけで森に探検に行ってみようということになった。
もう日が暮れかけていたし、ふくろうや動物の声が聞こえてきて最初は少し怖かった。
でも遠くに目をやると、木々の間からふもとの町のあかりが見えて少し心強くなった。
「天狗岩」を目指すことにした。歩いて500mくらい。
そんなに遠くない。
懐中電灯を照らしながら歩くと「天狗岩行」の看板が見えた。
どうやら名所らしい。
四人で歩いていると不思議なことが起こった。
気が付いたら僕たちのそれぞれの肩先に、妖精のようなものが止っている。
蝶々みたいなカタチをしていて、ちっちゃな男の子や女の子の姿をしたものに羽が生えている。
最初は信じれなかった。
日本語がじゃべれるようだ。敵意は感じない。
近くに彼らの村があるという。
いろいろ話していくうちに、違和感がなくなってきた。
どうやら友達になれそうだ。
彼らは夜しか姿を見せることができない。
一人の妖精が僕に語りかけてきた。名前はエルというらしい。
実は今大変困っているんです。どうか助けてください。
エルは泣きそうな声で僕に言った。
エルの言い分はこうだ。
「僕たちの住んでる村が人間たちによって壊されようとしているんです。森の木が次々と切り倒されてます.
このままでは僕たちの住むところが無くなってしまいます。何とかお力添えいただけないでしょうか?」
木が次々と切り倒されている原因は、リーゾート地のログハウスを建てるためだ。
開発業者が次々と伐採している。
詳しい事情をもう少し聴き、その日は別れた。
暫く経ったらまたここに来ことを約束した。
また来た時の合図は、懐中電灯を3回付けたり消したりするということにした。
妖精たちと話しをした「天狗岩」は名前のとおり天狗の鼻のような形をしている岩が、
海の方に向けて出張っている。
朝目が覚めたら僕の枕元に何故かピンクの花が置いてあった。
他の3人も同じようだった。昨日あったことは事実なんだ。
朝食を両家がともに食べることになった。
クリームシチューと飯盒で炊いたごはん。これは、ちょっと焦げてるところが旨い。
思い切って昨夜の出来事を両家の両親に話した。
当然だと思うが両家の両親は笑ってとりあってくれない。
僕たちはそれでも必死に訴えた。
日高くんの妹の明美ちゃんはもう泣きそうだった。
信じてもらうために、枕元に置いてあるピンクの花を見せるために
それぞれのテントに戻った。
確かに、子供たちが簡単に手に入れられるような花ではない。
学術的に希少な花のようだ。
それからも僕たちは説得を続けた。
ついに両親たちは、僕たちに根負けして、「おい、じゃあ今夜その場所に連れてってくれ。もしその妖精とやらが出てきたら信じてやる」
ということになって夜の8時に「天狗岩」に6人で行った。
一緒に出掛けた日高さんは、不動産屋の社長で業界の相談役をやってたりして、けっこう顔が効くみたいだ。
そんなこんなでワイワイ言いながら「天狗岩」にたどり着いた。
懐中電灯を3回付けたり消したりする。
「おーい、エル、僕だよ」と大きな声をかける。
この人たちは、僕たちのお父さんとお母さんだ。危害は加えない。
しばらくそのやりとりが続いているうちに、エルが僕の肩先に止った。
「コンニチワ」と僕たちの両親に話しかける。
両親たちはびっくりして、口をパクパクさせている。
*この物語はフィクションです、実在する人物・団体等は一切関わりございません。
あなたの声が書く力になります。ぜひコメントや読者登録よろしくお願いいたします。
やがて両親たちは落ち着いたが、まだほっぺをつねったりしている。
エルは、昨日僕たちが聞いた話をかいつまんで話した。
いろいろ話していくうちに両親たちも打ち解けたようだ。
不思議な違和感はもう無くなっていた。
「でもねエルくん、僕たちも好きでこんなことをやっているわけじゃないんだ。仕事だから仕方なくやってる面もある。君たちの村の件には僕たちはかかわっていないが、僕たちの事情も分かるよね」と日高社長。
エルは小さくうなづいた。でも村を守んなきゃならないんです。
このまま開発が進むとぜったい僕たちの住むところが無くなってしまいます。お願いです、何とかしてもらえませんか。」とエルは何度も頭を下げた。
「う~ん、今日の件は僕はかかわっていないし、今はどうしようもないけど、話は分かった、少し考えてみる」と日高社長は答えて、それからしばらく雑談をして別れた。
眼下には昨日と同じように星あかりような町の灯りが見えている。
次の日の夜、僕たち子供4人はまた「天狗岩」に遊びに行った。
キャンプしているテントからはけっこう近い。
エルたちを呼んで、今日は昨日の話題にふれずに無邪気に遊んだ。
しかし、その帰りに大変なことが起こってしまった。
妹の明美が毒虫に刺されたのだ。
さされたところがみるみるうちに腫れていき、熱も40度くらいありそうなくらい上がった。
大変たちの悪い毒虫のようだ。
しかも進行が速い、一刻も早い手当が必要だ。
しかし、ふもとの町まで車でも1時間くらいかかる。
かなり危ない状態だ。
テントに帰って状況を説明したら、両親も狼狽した。
その時、あの妖精たちが何人かで力を合わせて少し大きな木の実を持ってきてくれた。
「コレヲノメバアケミハナオル」エルはそう告げた。
村に昔から伝わる、薬になる木の実のようだ。
時間がない、僕たちはそれを信じることにした。
少し硬そうだったが、懸命に明美はそれをかみ砕いて食べた。
すると、みるみるうちに状態が良くなってきた。
不思議だ。症状は軽くなり、そして治った。
「コレハボクタチノムラニツタワルルオナッテキノミナンダ。
ドクムシササレタトキトカニヨクキク。アケミハモウダイジョウブ」。
僕たちは何度もお礼を言った。そしてやがて彼たちは自分たちの村に帰って行った。
後日病院で検査してもらった。症状が起こったのは毒虫のせいだということは分かったが、何でそんなに早く治っ
たのかドクターは不思議がっていた。話しても信じてもらえないだろうから、
ドクターにお礼を言って病院をあとにした。
明美は何事もなかったように元気そうだ。
その一件があった次の日から、日高社長は猛烈に動き始めた。
妖精たちを脅かしてしている材木の伐採は、あの事故のあったログハウスの不動産屋がかんでいるらしいことをを突き止めた。
材木の下敷きになって、知人の娘が大けがをしそうになったことをガンガン訴え、相手を自分のペースに乗せた。
非は相手にあるのだから話は聞かざるおえない。
聞くとこによると、あのログハウスは日当たりが悪くて、なかなか売れないでいるらしい。
そこで日高社長は、「僕が買ってもいい。ただし条件がある。あの妖精たちの村の開発は中止するようにと言った」。もちろん妖精たちのことは話していない。
不動産のバブルが弾け、ちょっと売りにくかったあの界隈の開発をこれからどうするか、考えているところだった。
しかし、相手は商売人、タフな交渉が続いた。
日高は結局勝った。
やはり、あの事故のことがかなり効いているようだ。
警察等による調査の話を持ち出すと、急に態度が変わった。
どうせたたけばほこりが出るようなずさんな工事を他でもやっているのだろう。
調査が入るのはかなりまずいみたいだ。
相手と、手付の念書を交わし別れた。少しホットした。
日高社長は大きく伸びをした。
「あの妖精たちに恩返しができる」。ちょっと嬉しくなった。
あの妖精たちの村は守られたのだ。
次の休みを利用して、両家はまたあの「天狗岩」に集まった。
合図をするとエルたちがやってきた。
改めて一通り話をすると「アリガトウ、ホントニアリガトウ」と大喜びした。
あたりかまわず急速に飛び回り始めた。よほど嬉しかったのだろう。
楽しいひとときを過ごしてその日はサヨナラをした。
きっと今頃、村では大騒ぎになっているだろう。
秘密のドリンクなんかもふるまわれているかもしれない。
数か月後、例のログハウスが完成した。
僕たち両家の家族は定期的にそのログハウスに泊まるようになった。
人間の前にはめったに姿を現さないエルたりも僕らの仲間に加わって、
楽しそうにログハウスの中を飛び回っている。
あの壊れかけていた看板に書かれていた「自然との共生」。
その言葉が頭をよぎった。
今夜もにぎやかに夜がふけていく。
(おわり)
*この物語はフィクションです、実在する人物・団体等は一切関わりございません。
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