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7、イケメン弟と隣人

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花子は残業を急いで終わらせるとアパートに帰る。

「遅い!姉さんの上司はいつまで仕事させる気だよ!」

扉を開けると玄関で機嫌の悪い二太郎が待っていた。

「ご、ごめんね。今日だったよね、引っ越しの話するの。」

まだ機嫌の悪い二太郎を横目にリビングに向かおうとすると、彼は腕を伸ばし花子の行く手を遮った。

「チューしてよ。」

「はい?」

突然のセリフに花子は放心していると、畳み掛けるように彼は話し出す。

「だから、チューだよ。仲直りのチュー。前はよくしてくれたじゃん。」

「そ、そうだよね。し、してたよね・・・。」

姉弟ってこんなことまでするの!?・・・・。

以前はしていたのに、今回だけしないのはおかしいと思い、花子は彼の頬に軽くキスをした。

「まぁ、今回はコレで許してあげるよ。口じゃないのは不満だけど。」

二太郎は笑顔で花子の手を引くとリビングに向かった。


「取り敢えず、良いと思うものは何個か選んだから、その中から選んでよ。」

二太郎が取り出した資料を見ると、どれも家賃の高額なものばかりだった。

「私の給料では払えないよ。もっと安い物件なかったの?」

「誰が姉さんが払うって言った?当然俺が全額払うよ。」

「えっ?まだ学生でしょ?!バイトでこんな家賃払える訳ないじゃない!」

「俺、副業で色々投資とかしてるから、ある程度の収入あるんだよね。」

そういうと、携帯を取り出しネットバンクの残高を花子に見せる。

「えッ・・・。こんなにも貯金あるの!?」

余りの金額に声が擦れる。

「で、でもいくら兄弟でもタダで住むわけにはいかないわ。」

「だったら毎日俺のマッサージしてよ。前はよくしてくれたよね。」

突拍子もない申し出に花子は、この姉弟は相当仲が良かったのだと考える。

「い、いいけど、その、以前のようにできるかな。ちょっとマッサージの仕方忘れちゃって。」

適当な言い訳を並べてマッサージを回避しようとする。

「別に構わないよ。姉さんが俺に触れるだけで疲れが取れるから。」

花子は二太郎の甘いセリフの意味も分からず、ただ仲の良い姉弟だと自己完結するのだった。


「お腹空いたから今から食事作るね。」

花子が立ち上がろうとした時、玄関のベルが鳴る。
すかさず、二太郎が玄関へ向かった。

「姉さんはご飯の準備していて。俺が見てくる。」

彼女はそのままキッチンに向かうと玄関先で叫び声が聞こえた。

「ハナ!!いるんだろ!この男誰だよ!?」

揉み合っている音がすると、次は二太郎の叫び声が聞こえる。

「入ってくるな!!ハナって何だよ!!なに呼び捨てしてんだよ!!」

急いで玄関に向かうと一太郎と二太郎が掴み合いをしていた。

「ちょ、ちょっとどうしたの!?」

「ハナ!こいつは誰だよ!こんな奴を家に入れてるのか⁉︎」

「俺は弟だ!!!それより、お前こそ誰だ!!!気安くハナなんて呼ぶな!!!」

二人は周りの事も気にせず掴み合いの喧嘩を始める。
花子はどうしていいか分からず右往左往していると、以前一太郎から貰った空のワインボトルが目に留まった。

ガシャーーン!!!!!!!

「静かにして!!!!喧嘩はやめなさい!!!!!」

花子はワインボトルを床に叩きつけると大きな声で叫んでいた。
揉み合っていた二人は割れたボトルを見ると花子に駆け寄る。

「姉さん!大丈夫!!??怪我はない??!!」

「ハナ!!!何でこんな危ない事するんだ!
怪我したら大変だろ!!」

彼女は二人の手を引くとリビングに導き何があったか問い詰めた。

「何でいきなり喧嘩になるのよ?一体どうしたの?」

花子の質問に二人とも不貞腐れて答え様としない。

「取り敢えず一太郎さんは、部屋に帰ってもらえますか?」

彼女は優しく一太郎に話しかけるが一向に動こうとしない。

「お前はさっさと帰れよ!俺たちは引っ越しの話をしないといけないから!姉さん、早くこの家は出て行こう!!危険すぎるよ。こんな奴が隣人なんて。」

二太郎は花子の方に腕を回すと自分の元に引き寄せた。

引越しの話を聞いて一太郎も黙ってはいられない。

「ど、どういう事!?こんな野蛮な奴と住むつもり!?弟だからっておかしいだろ!!だったら言うけど、俺はハナの事を愛してる。こんな子離れできない様な弟なんか相手しないで俺と暮らそう!!」

「は、はぁ!? お前馬鹿なのか!!!なにこんな所で愛の告白なんかしてんだよ!俺たちは血は繋がってないんだよ!!言ってる意味わかるか!!!姉さんは俺の者だ!!!誰にも触らせるか!!!」

一太郎の突然の告白と二太郎の血の繋がらない兄弟発言で、いくら鈍感な花子でも、危機を感じていた。
彼女の脳裏に浮かんだのは、あの日記・・・・。

監禁・・・・・・される・・・・・。

逃げないと。この二人は危険だ。

花子は携帯とテーブルにあった財布を手にすると、一目散にアパートの部屋から飛び出した。

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