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好感度ゲーム#02
しおりを挟む昼休み。俺はいつも通り足早に教室を退出し、屋上の扉へと向かい扉の鍵を針金で素早くあけ、お天道様の光を浴びながら昼飯を食い腹を満たしそのまま重くなったまぶたを閉じ心地よく昼寝をし、次の授業に備える……はずだったのだが…
あいにく今日は雨なのである。
「……雨め」
いくら空を睨み付けたところで雨が降っているという現実は変わらない。致し方なく、俺は屋上のドアの前の階段に腰を下ろし、腹を満たすことにした。鞄の中からマスカット味の十秒チャージを取り出した俺は、限りなく液状に近い個体を飲み込んでいく。CMで十秒でチャージと言ってるが実際のところこれを十秒は結構きつくないか…
「んっ…そろそろこの味にも飽きてきたな」
飲み終えた俺は十秒チャージの残骸を鞄にいれ、入れ違いで睡眠不足という文字が書かれたアイマスクを取り出し、目に装着した。
「さてと……」
木葉の一件があってから4日たち今は金曜日…本来ならば直ぐにでも話し合いがしたいのだが
「……どうやって呼び出せば良いんだ…」
俺の十数年の人生において、これまでまともな人間関係を築いたとはお世辞だとしても言えない。つまりは、俺にとって人を呼び出すというのはかなり高難易度な訳で…
「どうしたもんかね」
そのうち俺は考えるのも面倒くさくなり、どうせなるようになるだろうという結論に達し、本能のまま、意識を手放し深い眠りに落ちた。
○
次の日
「おじゃましまーす」
そう言って木葉は俺の家の玄関で靴を脱いだ。
「……奥がリビングだから、行っててくれ」
「うん、わかったよ」
そう言って木葉はリビングの方へ向かった。
……どうしてこうなった!!!
~遡ること昨日の放課後~
俺は、結局今日も木葉に話しかけることはできず、己のコミュニケーション能力の無さに嘆きながら靴箱に手を当てていた。
「……帰るか」
素早く靴を取り出し上履きと履き替えた俺は、そのまま校門へと向かっていった。
次会うのは月曜日…俺はあと何回この『明日があるから』のループを続けていくのだろうか。そう思いながら歩いていると後ろから声が聞こえた。
「ぇ……ぇ!…ねぇ!」
だんだん強くなるとともに近づいてくる声はわずかながら聞き覚えのある声だった。
「はじめくん!」
そう言って声の主が俺の肩を掴んできた。
「……お前かよ」
俺がそういうと木葉は息を切らして俺に怒鳴った。
「声聞いて分かろうよ!と言うか逆に誰だと思ったのさ!」
若干呆れながらも少し怒った表情をしながら木葉は聞いてきた。
「さぁ?公共の場で大声を出すやつなんか知らんな」
「もとを言えばはじめが気づかないからじゃないか」
そう言って木葉は頬を膨らませたが、男子高校生が頬を膨らませたところで気色の悪いだけ、即刻やめてもらいたいものだ。
「で、何のようだよ」
おればそういうと木葉は表情を明るくした。先ほどから木葉はポンポンポンポンと表情を変えている。忙しいやっちゃの。
「明日はじめの家で作戦会議したいんだけどいい?」
「え?あっ、いや俺もそろそろ話し合わないとなと思ってたんだよ」
俺が腕をくんでそういうと木葉は頬を膨らませた。だからやめろってその頬を膨らませるやつ
「じゃあ何で声かけてくれないのさ!」
「おっ、お前の自主性を試したかったんだよ…そっそう。これは試験みたいなものでな…」
俺の馬鹿野郎そんな見栄はってどうすんだよ!
「じゃあ、明日の10時に会おうよ僕はじめの家わかんないから学校待ち合わせねそれじゃ」
そう言って木葉はその場を後にした。
~そして現在に至る~
俺は木葉を奥の部屋に向かわせ、座っておくように言った。待たせては悪いので棚からコップ、冷蔵庫から2リットルの飲料水い◯はすを取り出し素早くコップの中へ透明な液体を注いでいく。
「いろはす………俺ガ◯ル」
いかんな、この飲料水を見ると毎度毎度◯色い◯はちゃんの顔が頭の中を横切っていく。何か色々と規制に引っ掛かりそうだから想像力も自重しなければ。
俺はいろはすのキャップを閉め冷蔵庫になおした。2つのコップに氷を2つ入れ、木葉がいる部屋へと向かった。
「悪い、開けてくれないか?」
あいにく我が家にお盆などという便利な道具は置いていない。つまりは両手を使って運ぶしかないため、ドアを開けることができないのだ。
「はーい」
木葉は了承し、ドアを開けてくれた。
俺は開いたドアを通り、足で乱暴にドアを閉め、部屋の中心にあるテーブルに向かった。
「これお前のぶんな」
そう言って俺は片方のコップを木葉の方に置き、木葉の正面に自分のコップを置き腰を下ろした。
「ご両親は?」
木葉はヘアの辺りを見わたしながら俺に聞いてきた。おそらく一人がすむために必要な日常品しかないから不思議に思ったのだろう。
「海外赴任。両方別々の国に飛んでて年に一回帰って来るかどうかだよ」
「へーそうなんだ…で、誰を落とすの」
俺が水を一口飲もうとコップに口に近づけた瞬間に木葉は期待の眼差しを俺に向け誰を落とすのかと聞いたきた。
「いやいや、まだ行動できる段階じゃないだろ」
「えー」
俺は少々呆れながら言った俺の返しに木葉は後ろに倒れ込み呻いていた。
「はぁー、いちいち説明しなくちゃならんのか……いいか木葉、お前のダチョウよりも小さい、いやBB弾よりも小さい脳でも理解できるように分かりやすく説明するからよーく聞け」
「BB弾………」
自分の身に降りかかる罵倒の数々木葉は硬直していたがそこはあえてスルーしよう。
「例えば、例えばの話だ、お前がいきなりたいして仲も良くない人間に、「あいつがお前の物を取ったよ」………こんなことを言われて信じるか?」
俺の問いにたいして木葉は少し悩んだ後、大きく首を横にふった。正直悩まず即答してほしかったのだが…この際首を横にふり否定しただけいいことにしておこう。
「そうだよな、いきなりたいして仲も良くない人間にそんなこと言われて信じれるわけない。むしろ何言ってんだと言われた後に本人に確認されてバットエンドルートに突入だ。ということは、今俺達に最も必要なものはなんだろうなー?さすがのお前ももうわかっただろ?」
さすがのバカでもわかっただろうと俺は思っていたが、やつは食いぎみで的はずれな返答をしてきた。
「信頼!!!」
「お前は馬鹿か!!!!!!」
「何で!?」
「何で!?……じゃないだろ!何が悲しくてあんな脳みそが退化したような考えの足りん能無し共と仲良くせにゃならんのだ!」
俺の返しに木葉は小刻みに震えていた。
「たっ…退化」
「ああ、そうだ!チンパンジーの方が数百倍も利口だ!」
「そっ…そこまで、じゃあどうするの」
俺は腕を組んで答えた。
「もう1人仲間にする!」
その答えに木葉は明後日の方向を見ながら死んだ表情で笑っていた。いや、怖いよ。
「へー、その馬鹿共の中から仲間を探すのか。なかなか面白いこと言うねはじめは」
「まぁ聞け、あとその顔やめろ。わりと本気で怖いから。いいか、仲間にするのは女子グループの小泉。あいつを狙うぞ」
小泉日向(こいづみひなた)明るそうな名前とは裏腹に、話しかけないでくださいオーラを常時放っている少女だ。一応女子グループにいるが、常に無口無表情で、一定の距離感を保っている。俺が何故この子を推薦したかと言うと、こいつが時々見せる表情だ。女子グループが陰口を言ってるときわずかに表情を曇らすときが多々あるのだ。
「え!?小泉さん!?小泉さんはバリバリヤバいオーラ出てるよ」
「あういう奴が言うと以外と本当に聞こえるもんだろ?適材適所ってやつだ」
「まぁ、そうだけど、聞いてくれるの?てか、それ以前に話しかけれるの…」
「そこなんだよなー、話すことに関しては問題ないんだが、聞いてくれるかなー」
「ん?話しかけることは問題無いの?」
「え?いや、だって家隣だし」
「!?」
「ついでに言えば幼なじみだし」
そう、俺と小泉は親同士が仲が良く、昔はよく遊んでいたものだ。とあることが起きてから全然話さなくなったが、まぁ、年齢を考えると会わなくなるのも必然か。
「何だ、じゃあ簡単じゃんか。今すぐ言いにいこう!」
そう言って木葉は一目散に玄関に向かっていった。
「は?」
俺が呆気にとられているうちに木葉は恐るべきスピードで部屋を出ていった。脳内処理速度が追い付かないため、俺は硬直していた。数秒後、現状を理解し木葉を止めようとするが時すでに遅し…
「いや!馬鹿!待て!」
俺の叫び声もむなしいことに、玄関の戸の閉まる音がした。俺は急いで後を追いかけたが、俺の体力上追い付けるわけとない。木葉よりも少し遅れて玄関を出て、隣の家を見てみると、小泉家の玄関で、小泉の親と木葉が喋っていた。
「小泉さんいますか!」
「あらあら、誰かしら?」
しかしいつ見ても思うが、相変わらず若々しいお母さんだな。本当に年を取っているのか?とても30代とは思えない。小泉母は長い茶髪にパーマをかけており、服も落ち着ついていてとても似合っている。最後にあったのは小学生か?あの頃と全く変わってない気がするのだが。まぁ、それはおいといて、俺は木葉のそばにかけより頭を小突き、首を絞めた。
「すみません、おばさん」
「ちょ、ギブギブ」
俺の手を叩く木葉を無視して小泉母に謝ると小泉母は顎に手を当てて笑った。
「あらあら、まぁまぁ、別にいいのよ」
「小泉さんいますか!ちょっと話がしたいんですけど!」
木葉は首を絞られながら叫んだ
「お前!?」
「あらあら、どうぞあがって、ひなちゃんなら2階にいるわよ」
「有難うございます!」
俺が驚いた隙に木葉は手から抜け出した。
「ほら、入って入ってはじめくん」
俺は小泉母に手を引かれて家の中へと入っていった。
○
「どうするんだよ」
俺達は今階段の前にいた。この階段を上り、右のドアを開けたところに小泉の部屋がある。
「え?普通にいけばいいんじゃない」
普通にいくとか
「はじめくん、後でジュース持ってくるからひなちゃんの部屋で待っててね」
小泉母がリビングから顔を出してそう言ってきた。
「あっ、どうもすみません」
「敬語なんてやめてよ前みたいにひなままーって」
「あはは」
無茶言わんでください。もう高校生ですよ。
気を取り直して俺は木葉に問いた。
「木葉お前行けんのかよ」
「いけないよ、てか幼なじみなんでしょ?はじめがいってよ」
「いいかよく聞け、今お前は全裸装備で上位のジン◯ウガ亜種に突撃しろっていってんだぞ?わかるか?俺は神風特攻隊か?」
俺がそういうと同時に、小泉の部屋のドアがいきよいよく開かれた。
「誰が上位のジンオ◯ガ亜種だって」
どうやら小泉がドアを蹴り開けたようだ。小泉は俺達の方を見るとため息をついた。
「ずっとそこにいられても邪魔なのよ。用があるならさっさと入ってきて」
「……はいよ」
俺は階段を上り、小泉の二歩手前で止まった。
「久しぶり」
「うん、何年ぶりかだね。私の家にきたの」
そう言って小泉は部屋の中に入っていった。小泉は小泉母とは違い、大分ツンツンしてる。あのDNAからどうなったらこんなツン子が生まれるのだろう。俺達は小泉につづき、部屋の中に入った。
中にはいると小泉はベッドに座っており、したに座れと言わんばかりに床を指差していた。俺は床に座り、辺りを見渡してみた。あの頃とは大分変わっていた。なんというかとても女の子って感じの部屋だった。
「で?」
「ん?」
「ん?じゃないでしょ?何年かぶりに押し掛けてきたんだからなんか用があるんでしょ?まぁ、あんたのことだからどうせ録でもないことなんでしょうけど」
ろくでもないとは失敬な、俺がいつどこでどくでもないことを言ったと言うのだ。…言ってないよな?
「小泉さん!俺達の仲間になってください!」
木葉は叫びながらいきよいよく土下座した。
おいおいおい何してんだー
「お前なにやって……」
「ねぇ」
「…はっ、はひ」
小泉を見てみるとどす黒いオーラをまとっていた。ヤバいびびってちょっと噛んじゃたじゃねーか
「はじめ、どう言うことか説明してくれるんだよね?とうせあんたがなんか吹き込んだんでしょ?永川(えがわ)君がこんなことするわけない」
ん?
「永川?」
永川ってだれだ?
俺が頭の上にはてなマークを浮かべていると木葉がジト目で見てきた。
「なっ、何だよ」
「永川…僕の名字だよ」
え?!そうだったの!?いやーフルネーム聞いてないしね(しっかり聞いている)、今回はしょうがない。だから静かに泣くのはやめてくれ木葉
「…木葉には特に何もいってねーよ」
俺がそういうと小泉はため息をついた。
「あんたさ、まだなおってないのね」
「何がだよ」
小泉は少しニヤニヤしながら俺に近づいてきた
「あんたお得意のポーカーフェイスも昔からの癖を知ってる私からすればバレバレよ」
「なにがいいたい」
「あんた嘘ついたとき、後ろめたいことがあると大半は頭をかくか右斜め下に目線を下げるのよ。自覚なかったの?」
「なん……だと」
まさかこの俺にそんな弱点があったというのか
「で?何て言ったの?」
俺は観念して小泉にすべてを話した。木葉と出会った経緯。そしてこれからどうしようとしているのかを全て。
「あんたいい加減課題だしなさいよ」
小泉は呆れながら俺に言った。
「出したところでだろ」
俺がそういうと、小泉はため息をついた。
「少しは畑山先生のことも考えなさいよ」
「…まぁ!課題はまた今度で良いだろ!今は本題に戻るぞ!」
俺は誤魔化しならが無理矢理話を変えた。
「…まぁ、いいや。つまりは私に協力しろと」
「さすが小泉。話が早くて助かる」
「はぁー、あんたあんなことがあったのにまだ懲りてないの」
小泉は少し悲しい表情でそう言った。
「……っ」
「はじめ?」
俺の明らかな動揺ぶりに木葉が心配し、俺の肩に手を伸ばしてきた。が、俺はさしのべられた手を払い立ち上がった。
「悪い木葉。先に帰っててくれないか。あとは俺が話すから心配はいらん」
俺は木葉にそう言い、微笑んだ。
「え?あ、うん」
なにかを察したのか、木葉はなにも言わずに立ち上がり、静かにドアの向こうへと消えた。
……
木葉が部屋を出てからしばらく沈黙が続いた。
「はぁー、お前な人前であの事は言うなよ」
俺が頭をかきながら言うと小泉は少しすねた感じで口を尖らせていた。
「永川君巻き込んでおいて何よ」
「正確には俺が巻き込まれたんだが。そこんとこの認識はちゃんとしといてくれ」
俺はそう言って小泉を指差した。
……何だこの間は。気まずいな
「好感度ゲーム………か」
「どうだ?あのときみたいな失敗はしない。正直お前がいないと成り立たないんだよ。大丈夫だ、俺らが協力すれば…」
「協力なんてあんたが一番嫌いな言葉じゃない。いつも教室ではずっと1人のくせに」
「あれはだな、俺が1人になることによってクラスみんなの邪魔にならないようにしてるんだよ。クラスのためにしている、つまりこれは協力プレイだろ?」
俺がそういうと小泉は右手をふった。
「何馬鹿言ってんのよ。はぁ、まぁそんなことはどうでもいいの、それよりもあんたの発言よ、よくもまぁ、いけしゃあしゃあと協力なんて言葉が出てきたものね」
うっ、思わず視線を下げてしまった。どうやら俺の癖は本当らしいな。
「うっ、だからそれはだな、違うん…っ」
俺はこのままだと小泉が言った自分の癖を肯定してしまった気がしてしゃくにさわるから視線を上げることにした。視線を上げ、小泉の方を見ると小泉は下を向き、小刻みに震えていた。
「お前、まさか泣いてんのか?」
俺がそういうと小泉は俺のことをにらんで、ベッドに置いてあった人形を投げてきた。
「痛っ、何すんだよ!」
人形が当たり、反射的に閉じた瞳を開き俺は小泉に怒鳴った。
「何すんだよじゃないわよ!何が、何が協力よ!あのときだって!あのときだって!」
そう言う小泉は自分を抱えるように震え、我慢しているようだが瞳からは滴が頬をつたっていた。
「は?意味わかんねーよ!なにきれてんだよ!」
「別にきれてない!」
「なっ!きれてるじゃねーか!」
「あんたは!あんたはあのときだって!」
~~~
『誰が主犯だい?』
担任は感情のない目で俺達3人に誰が主犯なんだと聞いてくる。
『……』
こいつらは何も悪くない。全てはこいつらを巻き込んでしまった俺の責任だ。俺、千斗 一にできる最善の策はなんだ。
…
…
…俺は、一歩踏み出し担任を見た。
そして深々と頭を下げた。
『全責任は俺にありますあいつらは関係ありません。俺がやれって脅してました』
俺がそういうと後ろで二人が何か言おうとしたが、それは止めた。
結局のところ、こいつら(先生)は面倒事はごめんなのだ。だから本当だろうが嘘だろうが誰かを犯人にしたらそこで話は終わる。俺はこんな大人達がだいっ嫌いだ
『それは本当かい?』
『嘘偽りないです』
~~~
「っ!?……あのときはあれでまるくおさまったじゃねーか!思い出したくもない思い出をフラッシュバックさせんじゃねーよ!」
俺がそう言いながら頭を押さえると小泉はさらに強く俺の方を睨んできた。
「まるくすんでない!何も解決してないじゃんか!」
「とっ、とりあえず落ち着けって小泉」
「何よ!そうやって大人ぶって!昔からそう!肝心なときに、大事なときに見栄はって…意地はって!」
「あのときは俺も無知だったし、今なら問題ないんだよ」
俺がそう言うと小泉は子供のように首を横に振った。
「違う!そんなのは問題じゃない!あんたはあのときひとりで!……全部一人で…」
「こ…小泉」
小泉は涙をぬぐい、俺の方を見た。
「……もう話すことは何もない。あんなことになるくらいならそんな事しなくていい。悪いけど帰って」
「……ああ」
俺は振り返りドアを開けた。
「小泉………いや、ひな。あのときのことでお前が何を思い、今何を引きずっているのかは知らない。けど…俺はお前を信じてる。やる気があるなら明日俺の家に来てくれ」
そう言って俺は部屋を出た。俺が部屋を出ると、部屋の中から小泉の泣く声が聞こえてきた。
小泉が何を考え何も思っているのかは俺にはわからない。そんな中、「気持ちはわかるよ」等と薄っぺらい言葉をかけるのは逆に失礼だろう。小泉には小泉なりに色々あるのだ。世のカップル達はよく「君のことならなんでもわかるよ」「考えてること全てわかるよ」等と言っているな。はっ、笑わせるな、わかるわけないだろ。本当でわかったのならば、それは偶然かはたまた異能力だ。仮に、仮にだ、本当に人の心が読める異能力があるのならば是非とも一度使ってみたいものだ。そうしたら、俺も、小泉も……こんな気持ちにはならずにすんだのだろうか。
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