転生、からの下剋上。誰も知らない無能スキルは、実は誰もが知っている伝説スキルだった……? わかんないので、とりあえず取扱説明書くださいっ!!

間瀬

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空雅は思う存分泉を堪能してから、ほとりの柔らかい草に上に横たわった。
すかさず、ヴェントが風を起こして乾かす。

「それで……改めて教えてほしいのですが……」
『あっ、その前に、クウガの顔!』

間の悪い精霊、もといヴェントである。
空雅の真剣な表情は、無意味なままに崩壊した。

「顔……そういえば、そうでしたね……?」

空雅は、間抜け面を隠す努力はしているのだろうか?
甚だ疑問に思う今日この頃である。

『はい、これでごらんなさいな』

水の精霊の声とともに、泉の水面から円盤型の水の渦が浮き上がってきた。
円盤の渦の回転は見る間に速くなってゆく。

「わあ……触ったら腕が吹き飛びそうですね」
『まぁ、そうね……』

空気を読む能力が決定的に欠けている空雅の言葉に、水の精霊は曖昧な声を出した。
その間に波立っていた円盤の表面はなめらかになり、周囲の風景を映し出す。

「ぇ……これが、僕ですか?!」
『そうだよ! ねね、かっこいいでしょっ?』

ヴェントに言葉を返すこともなく、空雅は己の姿を食い入るように見つめていた。
その瞳は、きらきらと輝いている。

髪は、プラチナブロンドのさらさらとしたストレートロングヘア。
瞳は右が赤、左が金のヘテクロミアで、目つきは鋭い。
白い肌に薄い唇、そして、長くとがった耳。
クールハードな顔立ちは、壮絶に美しい。

「なんていうか……典型的なエルフって感じですね~」

薄っぺらい感想である……が、その瞳は確実に「カッコイイ!」と叫んでいる。
ファンタジー要素てんこ盛りなその容姿は、彼の芸術家としての琴線に触れたらしい。

『典型的ではないわよ? 今まで見たことが無いほど魅力のある顔立ちじゃないかしら』
『精霊が好む顔立ちだよね~! まあ、ヒューマンは冷酷そうな顔だって怖がるかも……』
「なるほど、そうですか」

冷酷だと言われたのに、大して気にしていないらしい。
図太い。

「それで、今度こそ聞きたいのですが……ハイエルフは、種族として記憶持ちなんですか?」
『ちょっと違うわね。種族としてと言うよりも、記憶持ちがハイエルフになるのよ』
「……どういうことですか?」

あまりよく理解できなかったらしく、空雅は首を傾げた。

『そうねぇ……エルフという種族がいて、その中に記憶持ちが出現するのよ。それが、ハイエルフとして区別されているの』
『ハイエルフは大抵血筋で生まれるから、エルフに記憶による知識で悪影響を与えないようにって離れて暮らしてるんだよっ』
「えっと、つまり」

空雅は髪を指先に巻き付け、思案気にくるくると回した。

「ハイエルフは前世の記憶があるだけで、生物としてはエルフと同じ……ハイエルフの血脈はエルフの里から離れて暮らしている……ということでいいですか?」
『そうそうっ』
『最近血脈の方のハイエルフが激減したから、またエルフからいっぱい出てくるわね~』
「激減?」

空雅は眉をひそめ、身を起こした。

『先代の悪魔の女王は、若さに執着する人だったんだよっ』
『ハイエルフの心臓を食べれば若さを保てるっていう夢を見たらしくて……ハイエルフを捕らえた者には褒美を与えるというお触れを世界中の悪魔に出したのよ……』
「……美しくないです……」

空雅的には美しいかどうかが判断基準であるらしい。
同族が殺されているということには心も動かない冷血漢で――

「大体何なんですか、心臓を食べればとか。僕の同朋を減らした罪は重いです」

――はないようだ、よかったよかった。

「成敗してやります」
『その前に力をつけてね、死んじゃうからっ』
「はい……」

現実はシビアである……。
(僕は……この世界では無力です……)
空雅は涙目でしょぼんと落ち込んだ。
(この世界でも、世界平和は絶対目標ですね。よし、何があっても譲りませんよ!)

「力……どうすればつけられるでしょうか……」
『空雅、そもそもスキルが最強だからすぐ強くなれるよ!』
「最強?」

空雅は、緑色の光る球体をつついた。

「スキル鑑定官は、無能だって言ってましたよ?」
『……その人、バカ……?』
『絶対そうね。知らないスキルだからって必ずしも無能ではないのよ』

空雅は難しそうな顔でうーんと唸る。

「……仮に、最強だったとしてですよ? そもそも僕、スキルの使い方、わかんないんですよ……」

し~ん……。
気まずそうな静寂が、場を満たした。
いくらお気楽な精霊といえども、流石に反応に困ったらしい。

「あぁ~……もう、こうなったらやけくそです! 取扱説明書、カモンッ、プリーズ! 召喚っ!」

森中に空雅の魂の叫びが響き渡る。
そして案の定というべきか 何も出てこなかった。
召喚などされなかった。
結果として、空雅の渾身の叫びは……彼に召喚術師としての才能など全く――そう、これっぽっちも備わっていなかったということが証明されただけで、虚しく終わったのであった……。
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