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6.乗り込み
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昼休みまで、語ることはない。
体育の時間、男子はソフトボール、女子はプールと年頃のクラスメイトたちにとっては楽しい時間だ。
誰もがイキイキしていた。
いじめやひがみもなくなり、本当に誰もが輝いていた。
唯一、真白京子を警戒する大作だけが、例外であったが。
いじめっ子たちのいじめをやめさせたのはよかったが、闇魔法を表にすることなく、やり過ごすのはかなり難題なのだ。
校庭から女子たちのいるプールサイドが金網越しに見える。
大作の視線は真白京子に向かう。
常に自分を監視しているのではないかとさえ疑う。
一瞬でもボロを出せば、これまでやってきたことは本当の意味で終わる。
彼女は平時であればクラスメイト、有事であれば敵になる。
怯えている。
何かまずいと感じる予感がずっとする。
昼休みまで、結局この懸念を払拭することはできなかった。
そして迎えた昼休み、ようやく一息つけると思った時、「大作君、壁新聞見たよ!」と京子から声をかけられる。
「大作君、あのスピーチすごいなと思う!あれ以降、学校からいじめがなくなったって、本当にすごい!」
目をキラキラさせていた。
そんなに憧れの存在なのか。
「鷹森君から『ホワイトエンジェル』のことを聞いたよ。日本国内のいろんな巨悪を退治してきた伝説の魔法少女だって。ここまですごいエピソードの持ち主はどこを探してもいないよ」
「いやー。まあいろいろあってね~」
京子は照れくさそうにする。
「ところで、大作君?最近表情が険しいけど、悩み事?」
どうやら大作の曇った表情が彼女にも見えているようだ。
闇の魔法使いであることは彼女には言えない。
「あ・・・・・・。ちょっと考え事を・・・・・・」
本当は君を警戒している。
本当の懸念材料は京子である。
だが、そこまでは言えない。
外からバイクのエンジン音と思われる重低音が窓越しに響く。
「大変だ!暴走族が来たぞ!」
クラスメイトたちは一斉に窓の方に駆けつける。
校庭には10台の原付バイクに乗った不良たちが集結しており、何やら十字型の旗を掲げた。
大介が駆けつけ、驚いていた。
「あれは『サザンクロス』か?!烏丸大樹のやつが来たのか?」
表情が青かった。
大作も表情をこわばらせた。
「鷹森君、あのバイク集団は?」
「大作君、あいつらは暴走族『サザンクロス』だよ!そしてそのリーダー、烏丸大樹は筋金入りのワルなんだ!大樹め!この学校に何しに来たんだよ!」
大介がそこまで恐れるほどのやつなのか。
フードを被ったやんちゃ坊主な風格の男子がメガホンを持った。
「花園中学校のてめえら!俺様は『サザンクロス』のリーダー、烏丸大樹だ!鷹森はいるか!どういうことか、ある日から模範的青年になって、ワルをやめたらしいなあ?お前、学校のワルとしてどうしちまったんだあ?」
大介は窓を開けて反論しようとする。
「大樹!俺はもうワルをやめた!俺はもう一度、自分の人生をやり直したい!お前と絡むのももう終わりだ!」
遠くで烏丸と取り巻きたちは嘲笑する。
「そうか。ならしょうがねえなあ。ところで、吉川大作ってのはどこのどいつだ?」
誰もが沈黙し、烏丸を睨む。
誰もが嫌悪感を持っていた。
「おい!吉川大作に伝えろ。夜の街はずれにある廃工場に来いと。来なければ、この学校を襲撃するとな!」
大作は烏丸を憎むように睨んだ。
「大作君、あんなやつらの挑発に乗っちゃだめだ!」
大介は心配そうに言うと、「分かっているよ」と返す。
「でも、どうして大作君を?」
京子が不思議に思うのも無理はない。
理由なく、大作が狙われる訳がないのだから。
もしかしたら全校集会のスピーチが、彼らに察知されてしまったのかもしれない。
「君たち!勝手にグラウンドに入っては!」
教頭先生と教員たちが校庭に集結している不良たちを静止しようとする。
その瞬間、不良の一人が火炎瓶を教員たちめがけて投げる。
教員たちは慌てて逃げたがよかったが、あの火炎瓶に当たったら、運が悪ければ死ぬ。
「なんてことを!」
あの人がよさそうな京子も嫌悪感を表にする。
「いいか!吉川大作!いじめがどうこうとかすごい熱弁奮ってくれたなあ?!俺にもお前の持論を聞かせてくれよ?夜に廃工場にいる。一人で来い。来てくれたらもてなしてやるよ。殴らねえから安心しな」
烏丸の皮肉な笑み、あの笑みにどう答えるか。
「大作君!あの人たちの言うことなんか気にしちゃだめだよ!」
京子が険しい表情で言うと、「うん、夜は大人しくしているよ」と返す。
と言いたいが、大作はこの時、彼らを放置するのは危険だという認識を持っていた。
ここで彼らを許すほど、甘くはない。
学内には久しぶりに緊張が走る。
平和になった学校に久しぶりに不穏な空気と共に暗い影を落とす。
体育の時間、男子はソフトボール、女子はプールと年頃のクラスメイトたちにとっては楽しい時間だ。
誰もがイキイキしていた。
いじめやひがみもなくなり、本当に誰もが輝いていた。
唯一、真白京子を警戒する大作だけが、例外であったが。
いじめっ子たちのいじめをやめさせたのはよかったが、闇魔法を表にすることなく、やり過ごすのはかなり難題なのだ。
校庭から女子たちのいるプールサイドが金網越しに見える。
大作の視線は真白京子に向かう。
常に自分を監視しているのではないかとさえ疑う。
一瞬でもボロを出せば、これまでやってきたことは本当の意味で終わる。
彼女は平時であればクラスメイト、有事であれば敵になる。
怯えている。
何かまずいと感じる予感がずっとする。
昼休みまで、結局この懸念を払拭することはできなかった。
そして迎えた昼休み、ようやく一息つけると思った時、「大作君、壁新聞見たよ!」と京子から声をかけられる。
「大作君、あのスピーチすごいなと思う!あれ以降、学校からいじめがなくなったって、本当にすごい!」
目をキラキラさせていた。
そんなに憧れの存在なのか。
「鷹森君から『ホワイトエンジェル』のことを聞いたよ。日本国内のいろんな巨悪を退治してきた伝説の魔法少女だって。ここまですごいエピソードの持ち主はどこを探してもいないよ」
「いやー。まあいろいろあってね~」
京子は照れくさそうにする。
「ところで、大作君?最近表情が険しいけど、悩み事?」
どうやら大作の曇った表情が彼女にも見えているようだ。
闇の魔法使いであることは彼女には言えない。
「あ・・・・・・。ちょっと考え事を・・・・・・」
本当は君を警戒している。
本当の懸念材料は京子である。
だが、そこまでは言えない。
外からバイクのエンジン音と思われる重低音が窓越しに響く。
「大変だ!暴走族が来たぞ!」
クラスメイトたちは一斉に窓の方に駆けつける。
校庭には10台の原付バイクに乗った不良たちが集結しており、何やら十字型の旗を掲げた。
大介が駆けつけ、驚いていた。
「あれは『サザンクロス』か?!烏丸大樹のやつが来たのか?」
表情が青かった。
大作も表情をこわばらせた。
「鷹森君、あのバイク集団は?」
「大作君、あいつらは暴走族『サザンクロス』だよ!そしてそのリーダー、烏丸大樹は筋金入りのワルなんだ!大樹め!この学校に何しに来たんだよ!」
大介がそこまで恐れるほどのやつなのか。
フードを被ったやんちゃ坊主な風格の男子がメガホンを持った。
「花園中学校のてめえら!俺様は『サザンクロス』のリーダー、烏丸大樹だ!鷹森はいるか!どういうことか、ある日から模範的青年になって、ワルをやめたらしいなあ?お前、学校のワルとしてどうしちまったんだあ?」
大介は窓を開けて反論しようとする。
「大樹!俺はもうワルをやめた!俺はもう一度、自分の人生をやり直したい!お前と絡むのももう終わりだ!」
遠くで烏丸と取り巻きたちは嘲笑する。
「そうか。ならしょうがねえなあ。ところで、吉川大作ってのはどこのどいつだ?」
誰もが沈黙し、烏丸を睨む。
誰もが嫌悪感を持っていた。
「おい!吉川大作に伝えろ。夜の街はずれにある廃工場に来いと。来なければ、この学校を襲撃するとな!」
大作は烏丸を憎むように睨んだ。
「大作君、あんなやつらの挑発に乗っちゃだめだ!」
大介は心配そうに言うと、「分かっているよ」と返す。
「でも、どうして大作君を?」
京子が不思議に思うのも無理はない。
理由なく、大作が狙われる訳がないのだから。
もしかしたら全校集会のスピーチが、彼らに察知されてしまったのかもしれない。
「君たち!勝手にグラウンドに入っては!」
教頭先生と教員たちが校庭に集結している不良たちを静止しようとする。
その瞬間、不良の一人が火炎瓶を教員たちめがけて投げる。
教員たちは慌てて逃げたがよかったが、あの火炎瓶に当たったら、運が悪ければ死ぬ。
「なんてことを!」
あの人がよさそうな京子も嫌悪感を表にする。
「いいか!吉川大作!いじめがどうこうとかすごい熱弁奮ってくれたなあ?!俺にもお前の持論を聞かせてくれよ?夜に廃工場にいる。一人で来い。来てくれたらもてなしてやるよ。殴らねえから安心しな」
烏丸の皮肉な笑み、あの笑みにどう答えるか。
「大作君!あの人たちの言うことなんか気にしちゃだめだよ!」
京子が険しい表情で言うと、「うん、夜は大人しくしているよ」と返す。
と言いたいが、大作はこの時、彼らを放置するのは危険だという認識を持っていた。
ここで彼らを許すほど、甘くはない。
学内には久しぶりに緊張が走る。
平和になった学校に久しぶりに不穏な空気と共に暗い影を落とす。
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