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12.森林地帯

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 フランス・オルレアンの森、美しい木々の数々、牧歌的な時間が流れる。
 ここはパリの街並みとは違い、静止した自然の中だ。
 そんな美しいという言葉を形にした木々の中を、物々しい白い恐竜のような機械人形が突破する。
 二足歩行の恐竜型機械人形『ピアニッシモ』だ。
 頭には火炎放射器が、両腕にはスレッドハンマーを装備しており、絶滅した恐竜のごとく威厳を感じる設計になっている。
 バッテリーも最新の駆動系システムが採用、装甲に軽量素材を採用することで徹底的な軽量化に成功し、来るフランス軍製機械人形との一騎打ちや火炎放射器による歩兵の制圧というマルチで活躍できる最高の傑作に仕上がっている。
 パイロットのラムジンは、製造計画を前倒し、完成させた。
 生き残った『ナチュレ』怪人たちはパリ近辺のアジトから脱出させ、地方の地下拠点へと逃がす。
 ラムジンは最後の賭けに出た。
 『ピアニッシモ』による単機でのパリ強襲計画を敢行するのだ。
 「キャル、ルビー、アルスバッハを失っても、あいつらの分までバカの国に思い知らせてやる。たとえ『ナチュレ』が滅びようとも、人間どもに一矢報いてやる!」
 ラムジンは怒りに燃えていた。
 金髪の軽装歩兵、アラン・バイエルに『ナチュレ』幹部を殺され、さらには局地襲撃で壊滅的被害を被り、パリの侵攻計画は大幅に狂ってしまう。
 すべてやつとフランス軍に狂わされた。
 「金髪の軽装歩兵め・・・・・・。いつかなぶり殺してやる。バカの国を滅ぼした暁にはやつの頭蓋骨で盃を作ってやるさ!」
 闘志に燃えてきたラムジン、『ピアニッシモ』の右腕を弾丸のような物が掠った。
 それをラムジンも知っていた。
 「対戦車ライフル?金髪の軽装歩兵か!」
 『フォルティシモ』に攻撃を仕掛けられた時の屈辱は忘れていない。
 しかし、金髪の軽装歩兵は姿を現さない。
 「待っていたよ・・・・・・。お前を・・・・・・!」
 アランから無線通信が届く。
 その声には恨みが伝わる。
 「お前たちは、僕の隊長、ジャン・クロードを殺し、ミシェルら友人たちも殺した・・・・・・。すべてお前たち『ナチュレ』が奪ったんだ!落とし前はつけさせてもらう!」
 アランからの無線通信が途絶えた。
 ラムジンは恐怖した。
 金髪の軽装歩兵は?
 全身から感じる悪寒、自分の命が狙われている?
 「クソっ!なめやがって!」
 人影が数秒、チラッと見えた瞬間、火炎瓶が『ピアニッシモ』に投げ込まれる。
 「うおっ!」
 『ピアニッシモ』の頭部が蒸発する。
 軽量化された『ピアニッシモ』の右頭部が火炎瓶の炎で焼けた。
 恐竜の目に当たる部分が潰された。
 「ガソリン入りのワインをプレゼントされたか!」
 ラムジンは血眼になってアランを探す。
 『ピアニッシモ』の後方から人の気配を感じた。
 ガトリングガン『ジョワユーズ』を構えていたアランだった。
 「こいつ!」
 ラムジンは『ピアニッシモ』を反転させた。
 「思い知れ!」
 アランの叫びとともに、『ジョワユーズ』から無数の弾丸が発射された。
 鋼鉄の弾丸は『ピアニッシモ』の軽量化が徹底された装甲を容赦なく貫き、『ピアニッシモ』は暴れ踊るように打ちひしがれる。
 「うわあああああああああ!」
 ラムジンは不快な衝撃と飛び交う銃弾に恐怖する。
 コックピットには幸い、大きなダメージはなさそうだが、『ピアニッシモ』の脆弱な装甲を『ジョワユーズ』の弾丸たちは弾痕だらけにしてしまう。
 『ジョワユーズ』は弾を撃ち尽くした。
 『ピアニッシモ』は膝を付き、機能を停止した。
 「畜生!金髪の軽装歩兵めえええええええっ!」
 ラムジンの断末魔、『ピアニッシモ』は跡形もなく蒸発する。
 助かることのないラムジンを見届けたアランは、『ジョワユーズ』を投げ捨てた。
 燃え盛る『ピアニッシモ』、これで『ナチュレ』への復讐は果たした。
 ラムジンのいない『ナチュレ』は弱体化し、いずれは滅びの道を歩むことは避けられないだろう。
 これで何もかも終わる。
 ジャン・クロード隊長やミシェルたちの無念は救われた。
 アランは最後の報告をデスカに届けるため、燃え盛る『ピアニッシモ』の残骸から立ち去る。

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