新訳 軽装歩兵アランR(Re:boot)

たくp

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4.カフェ

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 1919年、フランス・パリは約束された平和を手にすることができた。
 戦後の混乱はしばらく続くが、パリの街中は牧歌的な時間が流れる。
 シャンゼリゼ通り付近のカフェ、スーツ姿のアランは苦いコーヒーを飲みながら紙のリストに真剣に目を通していた。
 そのリストは、闇商人から仕入れようとする武器のリストであったことは、アラン以外には秘密である。
 「機械人形を追い払うことができても、撃破に至らないとは・・・・・・。手榴弾の威力も足りなかった。地雷もタイマー式の誘導地雷が欲しいな。このままじゃ、機械人形を1機も撃破できない」
 アランは『フォルティシモ』との交戦結果に不満を抱いていた。
 あのタコの怪人であるラムジンも無事であろう。
 どうしたらいい・・・・・・。
 アランは悩んでいた。
 「お取り込み中、いいかな?」
 中年男性が声をかけた。
 その男性の方を向くアラン、声の主は赤いスーツを着用した貴族であった。
 体格もよく、貴族だが軍人なのかもしれない。
 「すみませんが、お名前をお聞きしても?」
 アランが恐る恐る質問すると「あーそんなに気を使わないで」と軽く返答する。
 「僕かい?僕はデスカ、アルフレッド・デスカ、貧乏貴族の情報将校だよ。こんな僕なんだけど大佐なんだよ。まあ階級とか気にしないで、気軽に話して」
 大佐、情報将校、貴族、これだけでも肩書きは士官の中でも最高峰だ。
 この肩書きに見合わないライトな人柄、威厳はあまり感じなかった。
 「アラン・バイエル君だね?かつては第17軽装歩兵小隊、『ジャン・クロード小隊』の生き残りで退役後は『マモー商会』の商人として生活をやり直しているみたいだがね」
 なるほど。
 情報将校だけあって、プロファイリングは完璧だった。
 ジャン・クロード隊長のこともお見通しのようだ。
 「大佐?どうして・・・・・・」
 「あーあーあー!大佐じゃなくてデスカでいいよ。それに呼び捨てでいい、敬語もなし。気楽にいこうよ?アラン君?」
  デスカの物言いに苦い顔を浮かべるアラン、「では遠慮なく・・・・・・」と返す。
 「デスカの訪問目的は?かつては軍属、今は民間人だ」
 「実はね、君を傭兵としてスカウトしたくてね」
 傭兵としてスカウトか。
 どうしてこんな戦争が落ち着いた時代に・・・・・・。
 「貴族なら知っているでしょう?戦争は『ヴェルサイユ条約』で一区切りついたでしょ?」
 アランが苦い表情を浮かべながら反論すると、デスカは笑みを浮かべた。
 「それが、言いづらいんだけど、今フランス軍はエイリアンと戦っていてねえ?」
 何だそれは?
 「デスカ、からかうのは・・・・・・」
 「そのエイリアン、僕らはUE(アンノウンエネミー)と呼んでいてね。そのエイリアンさんたちが、秘密兵器を強奪したんだ」
 「秘密兵器?」
 アランが怪しげに聞くと、「機械人形」とデスカが小声でつぶやく。
 アランの表情は険しさを増した。
 全身から電気が走った。
 「あれを知っているのか?」
 アランは小声で質問を続けた。
 「ああ、あれは軍と他国が合同で開発した次世代兵器だ。まだ試作品ばかりさ。それをUEと呼ばれる連中らが強奪してね」
 「アナキストではなかった。タコの怪人に会った。ラムジンって名前の」
 「そいつ、確か、大ボスじゃなかったかな?」
 「何だと?」
 デスカは目をつぶり、「もっと知りたいなら、僕のところにおいで」と質問を打ち切る。
 「来ればいいんだな?」
 アランも乗る気でいた。
 「まあ、いいんじゃない?運が良ければ一生遊んで暮らせるだけの金額は出るよ」
 「金は最低限でいい。衣食住も最低限度で構わない。高威力の手榴弾と高性能の地雷が欲しい。それを条件に加わろう」
 デスカは小声で笑う。
 どこか安心しているようだ。
 「手榴弾と地雷ねえ?まあどうにかしよう。とりあえずこれで対UE同盟は結束だな」
 「ありがとうデスカ」
 「ああ、くれぐれも内密にね。尾行されているかもしれないぞ」
 アランが強張ると同時にデスカの視線は、褐色の少女とおっとりした少女へと向けられる。
 褐色の少女はノースリーブの露出度の高い服装でどこか気の強そうな女性であり、もう1人のおっとりした少女は婦人服を着ており、見るからに怪しさは感じられない。
 「あの子たち、アラン君に興味があるみたいだね。用心してな」
 デスカはそれだけ言い残すと立ち去ってしまった。
 どこか貴族の威厳も感じず、情報将校としては優秀だが人柄はものすごく軽く、頼れるのか頼れないのかどこか分からない、不思議な貴族軍人デスカ、だが話す限り敵意はあまり感じなかった。
 2人の少女を気にしながらも、アランは席を立つ。
 これでアランは、フランス軍の傭兵として『対UE同盟』に加わることになり、あのラムジンを中心とした怪人たち、そして彼らが操る機械人形の復讐という利益利害が一致して、ジャン・クロードの無念を晴らすことになる。
 藁にも縋りたいアランにとっては、武器や弾薬のバックアップを受けられるチャンスでもあった。
 ついにこの時が来た。
 アランはこれも運命だと感じ、ようやく自分の暗い影を断ち切る一歩を踏むのであった。

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