一葉「いちは」

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一葉「いちは」

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緑の丘がある街、そこには一葉「いちは」ちゃんという女の子が住んでいました。

一葉ちゃんはジャケットとズボン、革靴にボーラーハットと変わった服装の女の子でした。

一葉ちゃんはお友達といることは少なく、いつも一人でした。

小学校では一人で図書室で色々な本を読んだり、校庭の隅っこで絵を描いたりしていました。

ある日の美術の時間、クラスのみんなは一葉ちゃんの絵に驚きました。

「すっげー!一葉の絵やばすぎだろ!」

「一葉ちゃんすごいね!写真みたい!」

クラスの子たちも一葉ちゃんの画力に驚きました。

一葉ちゃんの絵は芸術家も驚くほどの絵で、先生たちも驚きました。

別の日、小学校の先生は芸術家のおじいさんを呼び、一葉ちゃんの絵を見てもらいました。

芸術家のおじいさんは一葉ちゃんの絵に涙を流しました。

まるで現実の風景をそのまま絵にしたくらい一葉ちゃんは上手だったのです。

その後も一葉ちゃんは色々な絵を描きました。

担任のトモミ先生は、一葉ちゃんの絵を疑問に思いました。

一葉ちゃんの絵は灰色と黒色を多用しており、どれも暗い色でできていたのです。

絵を描く授業でも一葉ちゃんは灰色や黒色ばかり使った絵を描いていきました。

ある日、トモミ先生は放課後に一葉ちゃんを呼び出し、面談をしました。

トモミ先生は一葉ちゃんに親身になって話を聞きました。

その時の一葉ちゃんの言葉はトモミ先生が忘れられないほどショックなものでした。

「世界が、色々な物が、人が、すべて灰色に見えるんだ」

一葉ちゃんによれば、眼の前の色はカラフルに見えるけど、絵に描く時に灰色と黒色しか使う色が思いつかないようです。

トモミ先生は一葉ちゃんの絵を見て、すごく戸惑いました。

ある日の秋、トモミ先生は一葉ちゃんに特別課題を出しました。

一葉ちゃんの好きな絵を色鉛筆で表現するという課題でした。

トモミ先生は一葉ちゃんに何も書かれていないスケッチブックと色鉛筆を渡しました。

その色鉛筆には灰色と黒色の色鉛筆がありませんでした。

トモミ先生はわざと、灰色と黒色の色鉛筆を抜き取り、他の色で一葉ちゃんに絵を描かせようと考えました。

一葉ちゃんは戸惑いながら、スケッチブックと色鉛筆を受け取りました。

しかし、一葉ちゃんはそれ以降、表情が暗くなりました。

授業の時も何かに悩んでいるようです。

トモミ先生はあえて一葉ちゃんに声をかけませんでした。

一葉ちゃんは悩み続け、スケッチブックに手を付けることがないまま、一日が過ぎていきました。

時が流れ、ある日の冬にトモミ先生は、学校を辞めることになりました。

クラスの誰もが悲しみました。

トモミ先生があと数日で学校を辞める前の放課後、一葉ちゃんが職員室に来ました。

一葉ちゃんのスケッチブックには緑の丘の絵が描かれていました。

灰色と黒色じゃない、明るい色が主体の絵になっていました。

トモミ先生はうれしくてたまりませんでした。

「一葉ちゃん、おめでとう!偉かったね!」

一葉ちゃんの絵を見たトモミ先生は、丘に女性の姿が描かれていたことに気が付きました。

その絵を見ると、その人物はトモミ先生にそっくりな女性でした。

その日、普段は笑わなかった一葉ちゃんが珍しく笑いました。

トモミ先生は涙を流し、一葉ちゃんを抱きしめました。

一葉ちゃんはトモミ先生がいなくなってしまう前に、自分の色を取り戻すという特別課題を見事にやり遂げたのです。

しばらくして、小学校高学年になった一葉ちゃん、トモミ先生がいない学校でも笑顔を浮かべていました。

クラスの友達たちも誰もが一葉ちゃんの笑顔から元気をもらいました。

一葉ちゃんの絵は明るい絵が増え、一葉ちゃん自身も明るくなっていきました。

一葉ちゃんはトモミ先生のことを忘れません。

自分の色を教えてくれた恩人なのですから。

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