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メカタニア戦記 君が為に捧げる花

決戦

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 ついにこの日が到来した。
 『メカタニア王国』派遣軍は、『アルターブルグ要塞』に到達して数日も間もなく、狼煙を上げた。
 王国からは30台以上の大砲を用意し、要塞への攻撃を仕掛ける。
 籠城する貴族連合軍はついに耐えられなくなったか、血の気の多い闇騎士たちはついに派遣軍との衝突を決意し、状況は混戦状態になってしまう。
 その隙を狙って、アネモネ姫は1人要塞内部へと突入した。
 しかしこれはアネモネ姫が自ら提案した作戦であった。
 ガントレット公爵は反対したが、アネモネ姫はこのまま長期戦になれば補給もままならなくなり、派遣軍の疲労につながりかねないと予想、しかも後方に闇騎士ユナの存在が控えていることを考えると、アネモネ姫は短期決戦にすべてを賭けるしかないと判断し、要塞内部に自分が突入、ルシファーを打ち取り、貴族連合軍の野望を頓挫させるしかないと判断した。
 ガントレットは仕方がないと口にしながらも容認し、彼はサーラと共に歩兵隊の指揮を担うことになった。
 静止した薄闇の中、少数のゴブリンがビームトマホークを持って、アネモネ姫を阻もうとしたが、彼女の剣術に翻弄され、突破されてしまった。
 『アルターブルグ要塞』は複雑なダンジョンのようになっており、大広間を目指すアネモネ姫を苦しめる。
 しかし、戦力のほとんどは要塞の外に出払っていることから、ほとんど留守に等しかった。
 突入してから数時間が経過し、アネモネ姫はようやく薄闇に包まれた大広間へとたどり着いた。
 しかしそこには騎士のような姿のヒューマノイドロボットが待ち構えていた。
 「ユナか!」
 もうそれさえも予測済みであった。
 闇騎士ユナ、滅ぼされた『バジリーナ王国』の公爵令嬢、国を滅ぼされ、何を憎んでいるのだろうか。
 「待っていたぞ!アネモネ姫!やっとこの日を迎えられた!」
 ユナはビームソードを構え、アネモネ姫に襲い掛かる。
 「こんな戦い、もうやめろ!」
 アネモネ姫もビームソードで応戦し、ユナの一撃を受け止める。
 激しい鍔迫り合いが数秒続いた。
 「なぜだ、滅ぼされた怨念を、どうして他国の民に向ける!」
 アネモネ姫の問いに、「誰だって世を憎むさ」とユナは返した。
 「私には復讐しかない。ここに生きるヒューマノイドロボットたちへの復讐しかない!故に私はルシファーに拾われ、新しい命を与えられた!」
 ユナは一撃に怒りを込めた。
 アネモネ姫もユナの一撃をビームソードで受け止める。
 「ユナ、辛い思いをした騎士なら、その辛い歴史を繰り返さないようにするのもそちらの役割だ!ルシファーは、悲劇の歴史を繰り返す!」
 「しかし、ルシファーが滅んでも、同じことが繰り返されれば!」
 「どうして今の世界を信じられない!」
 アネモネ姫と闇騎士ユナの感情と剣のぶつかり合いが続く。
 ビームソードの刃からは火花が散る。
 2人の戦いは激化していく。
 「このまま誰も信じられなくなれば、失う物は大きい!」
 「だがアネモネ姫、世の中には救われないものもある。例えば私だ!」
 「裏切られた歴史は辛い、しかしいつまで悲劇の令嬢を演じるつもりだ!力を持つ騎士なら、その力を平民の幸せに使うべきだ!その力をユナ、そちらにはある!」
 「偉そうに!」
 アネモネ姫は悲しい表情を浮かべた。
 「本当の其方は優しい・・・・・・」
 ユナは意表を突かれる。
 「本当の其方は優しく傷つきやすい。だが、理解しているはずだ。故にその歴史を誰かが終わらせなければならないことも・・・・・・」
 アネモネ姫の意表を突く言葉にユナの油断が生じたか、右腕を蹴とばされてしまう。
 ユナのビームソードは中を舞い、ビームを収束させて地面に落下する。
 アネモネ姫を前にユナは戦意を消失した。
 「ここまでか、私を討ってくれアネモネ王女。あなたの言葉を肯定する為にも!」
 ユナは死ぬ覚悟でいた。
 しかしアネモネ姫はビームソードの刃を収束させ、電源を切った。
 「討たない。其方は惜しい。私が弁護する。民の為、自分の為に生きてほしい」
 ユナは呆然と立ち尽くす。
 初めて自分に「生きてほしい」と言ってくれた。
 自分の存在意義を認めてくれた。
 ユナはくすっと笑った。
 「王女様、少し人が良くて?」
 アネモネ姫も笑みを浮かべる。
 「実は私も無為無策だった」
 その返答にユナは「何ですかそれは?」と笑って返す。
 「何をしているユナ!」
 安堵した2人に緊張が走る。
 老練なヒューマノイドロボットが拳銃を構えて姿を表した。
 「ガロ伯爵?!」
 ユナも驚く。
 「この愚か者!ルシファー様への恩義はどこへ行った!」
 拳銃からはビームが発射され、ユナの右肩を貫く。
 「くっ!」
 ユナも左腰に携帯してあった拳銃で応戦し、ビームがガロの心臓部を射貫いた。
 「ユナ!」
 倒れるガロを横目にアネモネ姫は駆けつける。
 「ご安心を!少しかすり傷を負ったまでです!」
 右肩からは電流が走っている。
 損傷は思っている以上に大きいようだ。
 「ユナ、私はルシファーを・・・・・・」
 アネモネ姫がユナを気遣う時、今度は不気味な低い笑い声が響く。
 「打ち取りに来た?かな?」
 稲光が大広間に落ちる。
 稲光から姿を表したのは、ルシファー本人だった。
 「ついに姿を表したのか。蒙昧なるルシファー!」
 アネモネ姫は、ビームソードの刃を生成させ、構える。
 「蒙昧なのはあなたではアネモネ姫?あなたのプライドが国を大きく動かしたのですぞ?」
 「何を!」
 アネモネ姫は怒りに震えていた。
 「あなたが私の要求に答えていれば良かったのに・・・・・・」
 ルシファーの出現、アネモネ姫の怒りは頂点に達した。
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