1 / 20
1550系電車異世界へ行く
1550系電車
しおりを挟む
東京は大田区蒲田、とある大手私鉄の支線があった。
五反田方面に行く支線で、1550系電車が活躍していた。
1550系電車は元々は本線用の電車で、地下鉄線乗り入れ用に製造された車両だった。
しかし地下鉄線乗り入れの運用の終了やホームドアの導入により、本線での役目を終え、横浜郊外の車庫へと回送される。
その後、新車と同じ内装・床下機器などに改装され、塗装も赤色の塗装から緑色に塗り替えられ、8両から3両へと短い編成になった。
元々、中間に挟まれていた車両だった関係から中間車のうち2両に運転台を取り付けた。
名義上は新車導入となっているが元は町工場で保管されていた謎の中間車3両を試作車として転用したので、たった1編成の異端車となっている。
この車両は次世代の電源装置やモーターの試験車として運用されている。
旅客営業にも使えるよう、座席を残してある。
そのため朝のラッシュ・夕方のラッシュに運用され、日中や休日は車庫で停泊していることの多い車両である。
異端の1550系は蒲田駅のホームに滑り込むように停車する。
遠目越しに車両を眺める駅員の榊と柳、彼らの先には鉄道ファンらしき男性3人がカメラを構えていた。
「あらあら、カメラなんか構えちゃって」
榊が呆れたような物言いをする。
「珍しい車ですからね。都外からわざわざ来る客もいるとか」
「何もあれだけのために見物することもなかろうに」
「それにしてのあの車両、いつまで持つんでしょうかね?」
「さあな、試作型だから先は長くないかもしれないな」
榊は事務室に戻る。
1550系電車は、蒲田駅で折り返し運転の準備をしていた。
乗客たちは異端な経歴を持っている電車に興味がなかった。
のっぺらぼうみたいな平面デザインの車体、濃い緑と明るい緑、金色の帯によってさわやかさのある見た目、内装は新型車と見まがうくらいきれいで上品の木目調に仕上がっており、乗客たちは気にすることなく、目的地に向かって列車に乗り込む。
1550系電車は、深夜の最終電車までこの運用を続けて田園調布の裏手にある車庫で朝方まで留置される。
そんなルーチンに耐えながら、1550系電車は今日も一日過酷な運用に耐える。
ー深夜ー
田園調布の裏手にある車庫、1550系は留置線に留置されていた。
パンタグラフを下げた後、電源を切る車両、通勤客たちを支えた珍しい車は、ようやく休息の時を迎える。
車内の照明がすべて消えた。
1550系は基本的に平日のラッシュ時のみに運用に入る。
今日は金曜日、休日は車庫で留置されることの多い車両のため、ある意味電車の休日を迎えることになる。
誰もが寝静まる街、1550系は平日まで車庫で休んでいる。
ー早朝ー
曇りの日の土曜の午前5時、東京都内は黒い霧に包まれた。
その日は異様なほどの黒い霧が街を包み、不気味な様子だった。
田園調布では、その不気味さから人が一人も外出することがなかったという情報もあるようだ。
そして、事件が発生する。
霧が明けた後、田園調布裏手の車庫に留置されていた電車が、信じられないことに消息を絶ったのだ。
鉄道会社・警察の関係者も駆けつけたが、彼ら彼女らも唖然とした。
1550系電車が黒い霧の明けた後に線路上から姿を消し、全地域を捜索しても部品一つ手がかりが見つからなかったのだ。
この黒い霧も発生理由は不明で、一つ確かなのは黒い霧の発生で電車が消えたという奇妙な事実だけが残る。
幸いなことに、乗客も乗務員も車内にいなかった。
しかし消えた電車の存在に誰もが驚いていた。
五反田方面に行く支線で、1550系電車が活躍していた。
1550系電車は元々は本線用の電車で、地下鉄線乗り入れ用に製造された車両だった。
しかし地下鉄線乗り入れの運用の終了やホームドアの導入により、本線での役目を終え、横浜郊外の車庫へと回送される。
その後、新車と同じ内装・床下機器などに改装され、塗装も赤色の塗装から緑色に塗り替えられ、8両から3両へと短い編成になった。
元々、中間に挟まれていた車両だった関係から中間車のうち2両に運転台を取り付けた。
名義上は新車導入となっているが元は町工場で保管されていた謎の中間車3両を試作車として転用したので、たった1編成の異端車となっている。
この車両は次世代の電源装置やモーターの試験車として運用されている。
旅客営業にも使えるよう、座席を残してある。
そのため朝のラッシュ・夕方のラッシュに運用され、日中や休日は車庫で停泊していることの多い車両である。
異端の1550系は蒲田駅のホームに滑り込むように停車する。
遠目越しに車両を眺める駅員の榊と柳、彼らの先には鉄道ファンらしき男性3人がカメラを構えていた。
「あらあら、カメラなんか構えちゃって」
榊が呆れたような物言いをする。
「珍しい車ですからね。都外からわざわざ来る客もいるとか」
「何もあれだけのために見物することもなかろうに」
「それにしてのあの車両、いつまで持つんでしょうかね?」
「さあな、試作型だから先は長くないかもしれないな」
榊は事務室に戻る。
1550系電車は、蒲田駅で折り返し運転の準備をしていた。
乗客たちは異端な経歴を持っている電車に興味がなかった。
のっぺらぼうみたいな平面デザインの車体、濃い緑と明るい緑、金色の帯によってさわやかさのある見た目、内装は新型車と見まがうくらいきれいで上品の木目調に仕上がっており、乗客たちは気にすることなく、目的地に向かって列車に乗り込む。
1550系電車は、深夜の最終電車までこの運用を続けて田園調布の裏手にある車庫で朝方まで留置される。
そんなルーチンに耐えながら、1550系電車は今日も一日過酷な運用に耐える。
ー深夜ー
田園調布の裏手にある車庫、1550系は留置線に留置されていた。
パンタグラフを下げた後、電源を切る車両、通勤客たちを支えた珍しい車は、ようやく休息の時を迎える。
車内の照明がすべて消えた。
1550系は基本的に平日のラッシュ時のみに運用に入る。
今日は金曜日、休日は車庫で留置されることの多い車両のため、ある意味電車の休日を迎えることになる。
誰もが寝静まる街、1550系は平日まで車庫で休んでいる。
ー早朝ー
曇りの日の土曜の午前5時、東京都内は黒い霧に包まれた。
その日は異様なほどの黒い霧が街を包み、不気味な様子だった。
田園調布では、その不気味さから人が一人も外出することがなかったという情報もあるようだ。
そして、事件が発生する。
霧が明けた後、田園調布裏手の車庫に留置されていた電車が、信じられないことに消息を絶ったのだ。
鉄道会社・警察の関係者も駆けつけたが、彼ら彼女らも唖然とした。
1550系電車が黒い霧の明けた後に線路上から姿を消し、全地域を捜索しても部品一つ手がかりが見つからなかったのだ。
この黒い霧も発生理由は不明で、一つ確かなのは黒い霧の発生で電車が消えたという奇妙な事実だけが残る。
幸いなことに、乗客も乗務員も車内にいなかった。
しかし消えた電車の存在に誰もが驚いていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
八十年目の恋〜タイと日本の大福餅〜
十夢矢夢君(とむやむくん)
恋愛
太平洋戦争末期、一人の日本の陸軍軍医と駐屯地で出会ったタイ人女性が、ひょんなことから日本の和菓子『大福餅』を通して織りなす愛と友情の物語。彼らが生きた時代から八十余年を経て、その絆は今、新たな形で再び紡がれる――物語の舞台は第二次世界大戦の最中と現在のタイ王国。「二つの国を繋ぐ絆」と「新たな人生への挑戦」過去と現在が交錯する中で描かれる心温まる実話を基にしたヒューマンストーリー。
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
~まるまる 町ごと ほのぼの 異世界生活~
クラゲ散歩
ファンタジー
よく 1人か2人で 異世界に召喚や転生者とか 本やゲームにあるけど、実際どうなのよ・・・
それに 町ごとってあり?
みんな仲良く 町ごと クリーン国に転移してきた話。
夢の中 白猫?の人物も出てきます。
。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる