上 下
12 / 15
ヘタレ淫魔と淡雪少年

ヘタレ淫魔と淡雪少年(3)

しおりを挟む
「君。自分は薄幸だからってイコールいい子のように自認してるだろう。違うからね。そこそこ悪い子だよ」

 ソノオはアサユキの病室に着くなり、自己紹介もそこそこに言い放った。
 初手から圧が強い! たしかに来る前に宣言したとおり、暴力は振るってないけども!

「あなたは……誰?」
 アサユキはアサユキで存外、驚く様子もなく尋ねる。
「僕は簪 苑生〈かんざし そのお〉。リケと、それから君の従兄の傘お兄さんとの共通の友人だよ」
「そう。で、その立場の苑生さんは、どうしていきなり僕に因縁をつけにきたの?」
 ソノオは淡々と答え、アサユキは淡々と次の質問をぶつける。何こいつら!? なんでこんな冷静でいられんの? おれだったらソノオの最初の一言目で泣いちゃう。二人とも怖いよぉ~!

「君がリケに対してあまりにも私物化が酷いからね、お灸を据えにきたんだよ」
 ソノオはぴりりと言い放った。おれまで心がチクッとする。むしろ、とうのアサユキよりおれのほうがソノオの棘棘しさに参っているかもしれない。
「そう……。たしかに僕のリケへの態度は良くない。それを承知した上で言います。リケをください、くれないのなら死んでやる! どうせこんな腐りゆく命だ!」
 ええっ! アサユキっておれのことそこまで想ってたの!? でも、おれは答えられないし、ただでさえ、体が弱くて短い人生になってしまうかもしれないアサユキなのに、自分からさっさと終わらせようだなんて、そんな悲しい話ってないよ!
 おれは目を潤ませるが、ソノオは飽くまで冷静だった。ふうと溜息をついて冷淡とも慈悲深いとも取れる声色と表情で言う。
「君。生き永らえたまえよ。それから、『ください』なんてリケをモノ扱いするな」
 ソノオは凛とした声で言った。
「そ、そーだぜ! おれだって、おまえの命の対価として人質みたいにおまえのモノになるなんてすっごく嫌だ!」
 それだけはおれの本心だった。危険な精神状態にある今のアサユキを刺激するかもしれなくてもどうしても伝えたかった。

「はー、やれやれ、センセも相変わらず性格きっついなー」
 小便してくるとかなんとか言って途中で別れた傘が遅れてやってきた。
 そして、よくこいつが浮かべがちな読めない笑顔で告げる。
「朝雪。おまえ、嫌な奴な」
「樹〈いつき〉兄ちゃん!?」
 見知らぬ人間であるソノオが突撃したときよりも余程、驚いて叫ぶ。
 こいつ、本名「樹〈いつき〉」だったのか……。

「そうだな、僕は嫌な子だ。病弱に生まれて壊れ物扱いで育ったからって、それを逆手に取って駄々をこねて嫌な子だ」

「そういう意味じゃねえよ。実際、おまえは病弱でない子たちが浴びなくていいような理不尽な痛みを生まれた時から浴びてきた。それにしちゃぁ世界を呪い足りねえくらいいい子だ。ただ、おまえの年頃は軒並みみんな反抗期だし、同い年の子と並べたときにおまえも月並みに憎たらしい嫌なガキってこった。嫌な子でいんだよ。病弱キャラだからって、世間が押しつけてくる聖人君子キャラまで引き受けるこたァねえ」
「樹兄ちゃん……」
 ソノオが人間みの出てきた和らいだ表情で傘の台詞に続く。
「天使はきっといい子の魂のほうが好きだ。優先して取りに来る。朝雪くんは嫌な子でいて天使を追っ払って長生きしなければだよ」

「えっと……あなたは……すみません、えっと」
 アサユキにとってソノオの名前を記憶しておくことは大切なことのようだった。
「苑生。簪苑生」
「苑生さん。ありがとうございます」

 素直に礼を言うアサユキを見て、皮肉ばかりで大人びて見えたアサユキの年相応の少年の顔をアサユキの中に初めて見つけた。

 おれたちが帰る間際に
「僕は生きるよ」
と宣言したアサユキは、おれにだけ聞こえるように耳許で
「苑生さんがリケの好きな人でしょ?」
 と囁いた。おれは真っ赤になった。
「ビンゴ? へへ」
 悪戯っぽく笑う朝雪はこれまでのどの瞬間よりも元気そうに見えた。


 帰宅したおれとソノオは布団の中で抱き合っていた。おれは布団の中で手さぐりで服を脱がされる。
「外は寒くて冷えたねえ」
「うん」
「君のもちもちした肌も、求肥のアイスみたいに冷えきってしまって、尚のこともちもちひんやりとしているよ」
「なあにそれ~? ……あっ♡♡」
 首筋にキスをされた。最初は顎の付け根から、やがて、鎖骨、胸へと下がっていき、乳首の位置まで舌で舐め下ろされる。
「んぉっほ♡♡♡」
 とてももどかしくて、焦れったくて恥ずかしくて、精神的にもムズムズした。もちろん、おなかの奥も、おしりの穴も。
「ソノオぉ……♡♡」
 ソノオはおれがソノオのこと好きって知ってる? アサユキは知ってたよ。
 おれは心の中で一人で喋る。
 告白すれば済むこと、なのかもしれない。でも、フラれるかもだし、玉砕覚悟……なんて、到底、勇気が出なくて、自分のヘタレな性分が憎い。
「ソノオっ♡ ソノオ♡♡」
「なんだい、可愛いねえ」
 ソノオは犬を撫でるようにしておれを撫でて、それから、おれにフェラしてくれた。
 おれの短小ちんぽ――ソノオの長くてでかいのからしたら余計に――を、飴玉みたいにれろれろと口の中で転がしてくれるのが嬉しい。嬉しいのもあって足の指がぎゅっと丸まった。
「う、ぅ……ん♡♡ ソノオ、きもちいよお♡♡♡」
 おれの反応に気を良くしたソノオは敏感な先端を舌先でちろちろ責めた。
「ひやあぁぁぁぁあ♡♡ ぴゃっっっ♡♡♡ んほぉっ♡♡♡」
 自分は誘惑に関してはポンコツでも伊達に淫魔じゃないと思うのは、やはり、この感度だろうか。
「あァァ~~♡♡♡ おほッ♡♡ イっちゃ♡♡ イッひゃうぅぅぅう♡♡♡」

 ぴゅるっ♡♡ ぴゅるんっっっ♡♡♡

「はひ♡ あぁぁぁ~~♡♡♡」

「君は、精液を飲めないときも僕に抱かれたら喜ぶだろう? 朝雪くんとの関係で悩んで相談してくれたときに言っていた『おれは人間を食糧としてしか見れてないのかな?』って問いには、僕はエビデンスを持ってして改めてノーと答えるよ」

 余韻の中でソノオの低く甘い囁きを聞いた。
 えびでんす、ってなあに?
 ソノオの話は相変わらず難しいけれど、おれにとって嬉しい話ということだけはわかった。


(つづく)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

膀胱を虐められる男の子の話

煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ 男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話 膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)

遊園地の帰り、車の中でおしっこが限界になってしまった成人男性は

こじらせた処女
BL
遊園地の帰り、車の中でおしっこが限界になってしまった成人男性の話

[R18] 転生したらおちんぽ牧場の牛さんになってました♡

ねねこ
BL
転生したら牛になってて、毎日おちんぽミルクを作ってます♡

社畜くんの甘々癒やされ極上アクメ♡

BL
一週間働き詰めだった激しめ好きのお疲れマゾ社畜リーマンくんが、使用したデリヘルで爽やかお兄さんから甘々の褒められプレイを受けて甘やかされ開眼し、愛撫やラブハメで心身ともにとろっとろに蕩かされて癒やされアクメしまくる話。 受け攻めはふたりとも名前がなくネームレスです。 中日祝日、癒やされましょう! ・web拍手 http://bit.ly/38kXFb0 ・X垢 https://twitter.com/show1write

クソザコ乳首くんの出張アクメ

BL
おさわりOK♡の家事代行サービスで働くようになった、ベロキス大好きむっつりヤンキー系ツン男子のクソザコ乳首くんが、出張先のどすけべおぢさんの家で乳首穴開き体操着でセクハラ責めされ、とことんクソザコアクメさせられる話。他腋嗅ぎ、マイクロビキニなど。フィクションとしてライトにお楽しみください。 ネタの一部はお友達からご提供いただきました。ありがとうございました! pixiv/ムーンライトノベルズにも同作品を投稿しています。 なにかありましたら(web拍手)  http://bit.ly/38kXFb0 Twitter垢・拍手返信はこちらから https://twitter.com/show1write

満員電車で憧れの王子様と密着して、勃起バレからラブハメしてもらう話♡♡♡

たこみみ
BL
主人公受け ◇あらすじ 大人しく、口下手な橘 千歳(たちばな ちとせ) 片思いしている学園の王子的存在の涼白 響也(すずしろ きょうや)に突然一緒に帰ろうと誘われる 帰りの満員電車で密着してしまい_

【R18】魔法のオ〇ホを手に入れたので友人に使用してもらう話【完結】

藤 時生
BL
怪しいネット通販で魔法のオナ〇ール(尻型)を手に入れた茶界 惇嗣(さかい あつし)。 そのオナ〇ールは髪の毛を挿入するとその持ち主と24時間だけ感覚が繋がる、という物。 自分で試して魔法のオナ〇ールが本物だと理解した惇嗣が次にとった行動は、友人の加田喜勇(かだ きゆう)に自分と繋げたオナ〇ールを使ってもらうことだった……。 読み切りでしたが、続きを投稿することにしました。よろしくお願いします。 2024.10.4完結しました。 【各話に含まれる要素】 1話:受×オ〇ホ、オ〇ホ×攻、 2話:オ〇ホを介したアナル舐め 3話:即ハメ、受け→デ〇ルドへのフ〇ラ 4話:攻→デ〇ルドへのフ〇ラ、デ〇ルド×受、潮吹き 5話:受→攻へのフ〇ラ、隠姦、 6話:結腸姦、疑似排泄(ほぼ描写なし)、乳首イキ、 6話番外:シャワー浣腸 受→攻へのフ〇ラ、飲精 7話:結腸姦、潮吹き 番外:睡姦、受→攻へのフ〇ラ、結腸姦 8話:乳首イキ、結腸姦、潮吹き 9話:軽度の緊縛、結腸姦 10話:結腸姦、潮吹き 番外:尿道ブジー、結腸姦、潮吹き

悪役の弟に転生した僕はフラグをへし折る為に頑張ったけど監禁エンドにたどり着いた

霧乃ふー  短編
BL
「シーア兄さまぁ♡だいすきぃ♡ぎゅってして♡♡」 絶賛誘拐され、目隠しされながら無理矢理に誘拐犯にヤられている真っ最中の僕。 僕を唯一家族として扱ってくれる大好きなシーア兄様も助けに来てはくれないらしい。 だから、僕は思ったのだ。 僕を犯している誘拐犯をシーア兄様だと思いこめばいいと。

処理中です...