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ヘタレ淫魔と猫の悪魔と音楽

ヘタレ淫魔と猫の悪魔と音楽(3)

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「僕に可愛いと言われながら抱かれるのが好きだろう」
 事後、ソノオはおれの耳の後ろを舐め、最近、太ったというおれのお尻の丸みを撫でた。
「ひぁんっ♡♡」
「守りたい」
 ソノオが耳の後ろで囁く。熱い息がかかっておなかの奥がもぞもぞしちゃう♡
「自分勝手な庇護欲を押し付けてごめんよ。でも……こないだ刺身に殺されそうになっていた時、どれほど慌てたか」
 ソノオは語る。

「そんなに過保護になってくれんだったら……」
 ソノオにならいいかな、とおれは舌の上に紅い石を乗せて吐き出した。
「これは、オレの心臓から直に滴る血の結晶だ。オレの鼓動と連動していて、肌身離さず持っていてくれればオレの胸が不安や恐怖に脈打つとおまえに伝わる。オレのいる位置も直感的におまえにわかるはずだ」
 すると、ソノオは嬉しそうにしながらも苦笑した。
「そりゃまた随分とご都合な便利アイテムが」
「は?」
「いや、こちらの話だよ」


 傘がおれを歌った曲・「黒い羽の悪魔」は、お蔵入りになった。
 といっても、飽くまで傘たちのバンドでは、だ。
 傘のバンドで演奏しないし、刺身が歌わない代わりに、ソノオの気が向くのならソノオが歌ってどこかで投稿なりなんなりをしてもいいと傘は言ったが、ソノオは断固として拒否した

「僕も一端の物書きである以上、友人が友人に劣情を向けて書き綴った曲など歌うはずがないだろう。ナメてるのかね? 傘くんは本当に『なめるのが上手い』ねえ?」

 ソノオはセクハラ混じりに傘に喧嘩を売り、傘もヤンキーみのある男なので結構、本気の口論になったが、おれが怖がっていたら二人とも引き下がってくれた。


 刺身と傘が起こす暴風雨が過ぎ去って以降、おれはソノオへの気持ちでもやもやしてしまっていた。あいつらには色々、怖い目に遭わされたし、二人の歪んだ関係性も怖かったけど、やっぱりおれには刺身と傘の間にある特別さが羨ましい。

 
 あれ以来、おれはなんとなくソノオにちょっかいをかけてしまう。

 
「刺身にはいつだって傘がついてるんだな。傘にはいつも刺身がいる。オレには誰がついててくれてる? 誰かいるとしたらソノオだよな?」
「そうかもねえ」
 
「ソノオはおれのことを小説に書いてくんねえの?」
「ネタに困ったら書くよ」

 
 ソノオはいつもひらひらと手を振った。躱されて寂しがるおれの頭をソノオは撫でてくれた。

(ソノオ、これも意地悪なのか? 前に自分には好きになった子をいじめる悪癖があるって言ってたよな。好きってどの『好き』なんだろう。……あれ? なんでおれ、こんなこと気にしてるんだろ? それにおれ、刺身と傘の関係が羨ましい。あんな歪んだのは嫌だけど、でも、あんな風にソノオとお互いに特別になれたら……。え? どうしよう、こんな気持ち初めて……)

ソノオのことを思うと切なくておなかがきゅぅきゅぅ♡ としてしまう。


 それからおれは、ソノオに隠れてソノオのことを思いながらオナニーをするようになった……。

「ん゙♡ お゙ほぉ゙♡ ソノオ♡♡ ソノオぉっっ♡♡♡」
 一つ屋根の下にソノオがいるのにバレたらどうする気なんだろ、おれ……。キモがられるかな……怒らせるかな……。それは、嫌だ。でも、クチュ♡ クチュ♡ といじくる手が止まらない……♡♡♡

「んん゙ん……♡♡ ソノオぉぉ♡♡ ンお゙ッッ♡♡♡」
 ぴゅるっっ♡♡ ぴゅうッ♡♡ パシャアァァァァァァ♡♡♡

「はひい♡♡♡ はあぁ……♡♡」

 精液と潮を連続して吹いておれはイってしまった。凄まじい絶頂だった。

(ソノオ……今すぐここへ来ておれを抱いて……)

 切ない気持ちがおれを二回戦へと駆り立てた。


「……あ゙ぁん゙っ゙ッ♡ ぉ、ほぉぉっ゙♡♡♡」

 可愛くないほどヨガってしまう。敏感になっていたカラダがすぐイってから、おれは甘ったるく痺れる下腹部を撫でた。

 
 このままじゃ油断したら受精〈デキ〉ちゃう……。

 ソノオの精液を食糧ではなく『子種』として求めるようになった雄膣が胃から子宮へと機能を変えてしまう……。

 おれは妊娠経験はないし、妊娠という未知への恐怖もある。いくらソノオ相手でもまだ出会ってそう経たない男の赤ちゃんを孕むわけにはさすがにいかないと、おれなりに気を引き締めた。


(つづく)
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