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ヘタレ淫魔と猫の悪魔と音楽
ヘタレ淫魔と猫の悪魔と音楽(2)
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「新しく曲作ったっつーからオレなりに楽しみにしたのに、この歌詞をオレに歌えと?」
刺身は早口で低い声で言う。
「おまえが歌いたくなきゃ俺が歌うさ。おまえが来る前は俺がボーカルだったんだ」
傘はゆったりと、しかし、喧嘩腰に返す。
またうちの前で喧嘩……。勘弁してよぉ……。
「そんなこと聞いてんじゃねえよ。この歌詞は何のあてつけさ?」
刺身がいっそう、きつい声を出す。
あてつけ……?
何のことだろうと思う。
「黒い羽の悪魔って何さ? 猫に羽は無いよな?」
黒い羽……? 悪魔……?
おれはハッとする。
「あるかもしんねえぜ? 知らんけど」
傘は挑発的にしらを切った。
(うちの前でやめてよぉ~!)
そうだ、ソノオに来てもらって止めてもらおう。そう思ったとき、刺身が傘の胸ぐらを掴む。
「不誠実な真似はよしな。刺すぜ」
刺身の手には先の尖った鋏〈はさみ〉が握られている
(あいつ、あんな物騒なもん、どこに忍ばせてやがったんだ!?)
「おまえに俺は刺せねえ」
見ているおれのほうがハラハラして、傘は飽くまで落ち着き払っていた。刺身を手のひらで転がしているようにも見える。あの刺身を。すげえ。
刺身は
「くッ……」
と言いながら鋏を下ろした。
「全部きらい! みんなきらい!」
刺身は泣きながら走り去っていった。
なんだったんだ……。
後日、傘の姿も刺身の姿も見なくなった頃、代わりに傘と刺身ともう一人のバンドメンバーだと聞いていた涼夢〈すずむ〉という人が尋ねてきた。
スズムは独特の不思議な空気感をまとっている。刺身たちのスリーピースバンドのメンバーの中では唯一、常識と良識を備えている印象だった。傘が刺身をバンドに入れると言って聞かなかったときに唯一、傘を信じてバンドに残ってくれたという人。物憂げな色気のある物静かなお兄さんだ。
スズムは幼い頃から音楽的才能があり、リコーダーが格別に上手かったらしい。小学校のときのリコーダーを未だに大事にしているそうだ。裕福な家に生まれていたなら吹奏楽の強豪校や音大に行きたかったが、実際には家計が大変でそれどころじゃなかったらしい。
スズムはおれに、あんたに迷惑をかけてすまない、あいつらの暴走を止めるために俺も動いてみるから、と言ってくれる。何度も「巻き込んでしまい、すまない」と謝られたが、この人が悪いわけではないのは確かだった。
うちの前で傘相手に鋏を振り回した一件以来、刺身は傘と修羅場をやらかすこともないが、元気がなく、猫相手にも普通に猫じゃらしで遊んでいて、普段が普段なだけに却って不穏なものを感じさせる……。
後日、公園でブランコを漕いでオレンジジュースを飲んで、日向ぼっこしてから家に帰ると刺身が鋏片手に待ち伏せていた。
「わわわ!? 何ぃ~!?」
おれが何をしたって言うんだよぉ~!
「妬ましい。殺してやる」
刺身は嫉妬に狂い、鋏を振りかざした。おれは普段、外では隠している羽を今ばかりは出して羽ばたいて逃げ惑う。刺身は空中にいるおれにそのへんに落ちている空き瓶とか空き缶といったゴミや、ソノオが育てている朝顔の植木鉢まで投げつけてきた。自分から仕掛けたことでもないのに修羅場に巻き込まれて、おれは幼稚園児みたいに泣く。
刺身は鋏を握りしめ、おれの目を真っ直ぐに睨みつけて
「死ねばいいのに」
と言い、なおも攻撃を続けてくる。
「やめてよぉ! ソノオ、たすけてぇ!」
「おい、リケ、ふざけんなよ! テメェの男がいるくせに人の男に手ェ出しやがって!」
「おれは手ェ出してない! 向こうが、向こうのほうから……」
言い訳がましく聞こえるようだけど、それは事実だ! 誘拐されたんだもん!
刺身はおれを殺そうとし、おれは逃げたが、お互いに華奢なのですぐにスタミナが切れてお互いへたりこんだ。物理攻撃をやめた刺身は喋るモードに入った。
「おまえなんかに傘の相手が出来るもんか。あんな、オレでも持て余すようなクソ男。誰のことも心からは愛せないとか自己陶酔するくせにオレがちょっと冷たくしてやるとのたうち回って病んでよおー! へっへっへっへっへ! オレのもののくせにおれ以外にも承認されたがって生意気だから虐めてやるんだ。それがオレらの精神的セックスなんだよ。おまえじゃ傘をおれほど振り回せないね、泣かすことも救うこともできないね、オレはあいつンことぐちゃぐちゃのどろどろにして正気失うほど壊してやりたいっていっつも思ってて、それは紛れもなくオレの愛だし、良心のストッパーかけて実行しねえのもまた愛なのさ!」
狂ってる……とおれは思った。
そのとき、聞き慣れた声がして、ソノオとスズムが駆けつけてくれた。
「何を大騒ぎしているのかね。僕の家の前で僕のかわい子ちゃん相手にやめてくれたまえよ」
「おい、刺身! いい加減にしろ! 怒りの対象を見誤るな!」
スズムは同じバンドの仲間として精神面から刺身を説得し、ソノオはというと……
何かの武道か護身術並のキレッキレの身のこなしで刺身が鋏を振り回す手首を捕えて押さえつけ、刺身の手から鋏を奪った。
刺身は鋏を持ったソノオに追いつめられる。
「君。リケを本気で殺そうとしてたね。躊躇いがないから鋏を持つ手が震えてなかった。僕の手を見てごらん。震えていないだろう。この意味がわかるね?」
ソノオの目は完全に据わっていた。怖い! 傍で見てるだけでおしっこ漏らしそう!
「おい、やめてやれ、簪。刺身はこんな奴でも俺の大切なバンド仲間だが、それと同時に、こんな非道な人間相手に簪が手を汚すべきじゃない。自分を大事にしてくれ」
スズムがソノオを止めてくれてホッとする。血を見たくなかったし、おれも、ソノオに殺人者になってほしくなかった。
ソノオは完全に据わっていた目つきを人間らしい温度のあるものへと戻した。
「涼夢くんがそこまで言うなら涼夢くんに免じて今のはハッタリだったということにしてあげてもいい。リケを二度と傷つけないと土下座して誓うだけで許そう」
刺身は自分の凶器だった先の尖った鋏の先端をいざ、自分のほうに向けられたらよほど怖かったのか弱気になり、
「ごめんなさい、二度としません、命だけは勘弁してください……」
と震えながら土下座した。
「傘、たすけて……傘……」
譫言で傘の名を呼んでいる。
「べらぼうにクリーチャー扱いじゃないか、僕」
ソノオが肩を竦めるのを見てスズムが
「本当に、すまんな……」
と謝っていた。だから、この人は悪くないのに。
後日、おれとソノオは刺身たちが出るライブを観に行った。
「はーい、じゃー、おれが今日のために書き下ろした新作――オレ以外の男の顔にナニをとは言わねーけどぶっかけた浮気男の歌――を歌いまーす」
刺身は隣でベースを弾く傘を親指で指し、客席から笑いと顰蹙を集めた。
「わん、つー、すりー、ふぉー……。♪黒い羽した悪魔は純情 猫の爪した悪魔に恋情 劣情 欲情 惨状……」
何だよ、この曲。
結局、傘の本命は絶対的に「猫の悪魔」――刺身――で、おれはダシにされてたって、そういうことじゃん……。
だが、ソノオのクリーチャームーブの甲斐もあってか、あのあと二人が仲直りできてよかった。
永遠に二人の恋が続いてほしいとおれは思った。
「ライブ、良かったぜー!」
「やあ、刺身、傘、涼夢。お疲れ様」
おれとソノオが控え室に行くと、傘は
「おー、来てくれてさんきゅな」
とフランクに礼を言う。無口なスズムは品良く微笑んでおれたちに会釈してひらひら手を振った。刺身はお菓子を食べるのに夢中でこちらを見もしなかった。
「刺身、テメェ、マジで頼んでもねえ下品なMCしてくれてよー」
傘がうんざりした声を出す。
「ほんとのことをみんなにバラしてやっただけさ。どうせみんな冗談だと思ってんよ。傘は外ヅラだけはいいから」
「我が恋人ながらつくづく性格がわりーな」
そうは言いつつ、傘は、刺身の暴言もまあ、いいかと許している様子だ。
「オレ、真に目が肥えてるファンは涼夢に走ると思うねー」
刺身が悪態をつく。
「言ってくれるぜ」
なんだかんだ傘は刺身には甘いんだよなあ。
ソノオも、おれには甘い……。そのことを思うと雌スイッチが入ってアナルがじゅんわり♡ と濡れた。
帰ってすぐに玄関でアリス風の水色のワンピースの裾から手を入れられ、ドロワーズを引きずり下ろされる。えっ、何!?
「出会ってすぐは痩せすぎで心配したけれど、すっかり健康的な肉付きになったね。お尻もこんなに丸くなって……」
お尻の曲線をなぞられ、揉まれて、おれは
「あっ……♡」
と吐息を漏らす。
おれは意を決して白状する。
「ソノオ……おれね、今日ね、実は……」
アリス風ワンピースの澄んだ水色のフレアスカートの下に、おれは深紅の紐パンを忍ばせていた。しかも、この紐パン、おしりの穴の部分がハート型に切り抜かれている。
「すげえエッチなパンツ履いてんだ、おれ……♡♡」
「リケ……」
ソノオの声は掠れていて、初めて聞く声だった。
「いつももとても悪くないし、最高だけれど、今日はいつになくときめいてしまうよ……!」
ソノオはパンツに開いたハート型の穴からおれのアナルに触れて二本の指で拡げたり、前立腺をわざと焦らしたりした。おれはくぅん♡ と鳴く。
「セックスをすると君は、自らの長く艶やかな黒髪の中を泳ぐように快感に身を捩る。その小作りなしなやかな体も、桜貝の欠片のような小さな足の爪までもの全身が……そして、外面的な美貌だけでなく純真な心根も全てが美しすぎて目が眩む……」
そう、蕩けたような声で言いながらソノオはぷちゅ♡ ととうに濡れそぼってぬめるおれの入口に亀頭を潜り込ませた。
「全部、僕だけのものだったなら……いや、なんでもない……」
パンっ♡♡♡
次の瞬間、結腸口の手前ギリギリまで突き入れられて何もわからなくなる。
今、ソノオ、なんて言ったんだ? よく聞こえなかった。
それにしても先ほどのおれへの賛辞……効きすぎた。おれが、純真? 傘に同じ言葉言われても何も嬉しくなかったのに、ソノオ相手だとどうしてこんなに……。
ソノオのくれる蜜の雨のような言葉に溺れて全部、溶けてしまいそうで、おれはどろどろに濡れ、熱く荒い息を吐いて意識すら危うくなる。
「ねえ、これからもずっとここにいて。美しいリケ……」
ソノオが切なそうに呟くのが決定打になっておれはイってしまった……。
(つづく)
刺身は早口で低い声で言う。
「おまえが歌いたくなきゃ俺が歌うさ。おまえが来る前は俺がボーカルだったんだ」
傘はゆったりと、しかし、喧嘩腰に返す。
またうちの前で喧嘩……。勘弁してよぉ……。
「そんなこと聞いてんじゃねえよ。この歌詞は何のあてつけさ?」
刺身がいっそう、きつい声を出す。
あてつけ……?
何のことだろうと思う。
「黒い羽の悪魔って何さ? 猫に羽は無いよな?」
黒い羽……? 悪魔……?
おれはハッとする。
「あるかもしんねえぜ? 知らんけど」
傘は挑発的にしらを切った。
(うちの前でやめてよぉ~!)
そうだ、ソノオに来てもらって止めてもらおう。そう思ったとき、刺身が傘の胸ぐらを掴む。
「不誠実な真似はよしな。刺すぜ」
刺身の手には先の尖った鋏〈はさみ〉が握られている
(あいつ、あんな物騒なもん、どこに忍ばせてやがったんだ!?)
「おまえに俺は刺せねえ」
見ているおれのほうがハラハラして、傘は飽くまで落ち着き払っていた。刺身を手のひらで転がしているようにも見える。あの刺身を。すげえ。
刺身は
「くッ……」
と言いながら鋏を下ろした。
「全部きらい! みんなきらい!」
刺身は泣きながら走り去っていった。
なんだったんだ……。
後日、傘の姿も刺身の姿も見なくなった頃、代わりに傘と刺身ともう一人のバンドメンバーだと聞いていた涼夢〈すずむ〉という人が尋ねてきた。
スズムは独特の不思議な空気感をまとっている。刺身たちのスリーピースバンドのメンバーの中では唯一、常識と良識を備えている印象だった。傘が刺身をバンドに入れると言って聞かなかったときに唯一、傘を信じてバンドに残ってくれたという人。物憂げな色気のある物静かなお兄さんだ。
スズムは幼い頃から音楽的才能があり、リコーダーが格別に上手かったらしい。小学校のときのリコーダーを未だに大事にしているそうだ。裕福な家に生まれていたなら吹奏楽の強豪校や音大に行きたかったが、実際には家計が大変でそれどころじゃなかったらしい。
スズムはおれに、あんたに迷惑をかけてすまない、あいつらの暴走を止めるために俺も動いてみるから、と言ってくれる。何度も「巻き込んでしまい、すまない」と謝られたが、この人が悪いわけではないのは確かだった。
うちの前で傘相手に鋏を振り回した一件以来、刺身は傘と修羅場をやらかすこともないが、元気がなく、猫相手にも普通に猫じゃらしで遊んでいて、普段が普段なだけに却って不穏なものを感じさせる……。
後日、公園でブランコを漕いでオレンジジュースを飲んで、日向ぼっこしてから家に帰ると刺身が鋏片手に待ち伏せていた。
「わわわ!? 何ぃ~!?」
おれが何をしたって言うんだよぉ~!
「妬ましい。殺してやる」
刺身は嫉妬に狂い、鋏を振りかざした。おれは普段、外では隠している羽を今ばかりは出して羽ばたいて逃げ惑う。刺身は空中にいるおれにそのへんに落ちている空き瓶とか空き缶といったゴミや、ソノオが育てている朝顔の植木鉢まで投げつけてきた。自分から仕掛けたことでもないのに修羅場に巻き込まれて、おれは幼稚園児みたいに泣く。
刺身は鋏を握りしめ、おれの目を真っ直ぐに睨みつけて
「死ねばいいのに」
と言い、なおも攻撃を続けてくる。
「やめてよぉ! ソノオ、たすけてぇ!」
「おい、リケ、ふざけんなよ! テメェの男がいるくせに人の男に手ェ出しやがって!」
「おれは手ェ出してない! 向こうが、向こうのほうから……」
言い訳がましく聞こえるようだけど、それは事実だ! 誘拐されたんだもん!
刺身はおれを殺そうとし、おれは逃げたが、お互いに華奢なのですぐにスタミナが切れてお互いへたりこんだ。物理攻撃をやめた刺身は喋るモードに入った。
「おまえなんかに傘の相手が出来るもんか。あんな、オレでも持て余すようなクソ男。誰のことも心からは愛せないとか自己陶酔するくせにオレがちょっと冷たくしてやるとのたうち回って病んでよおー! へっへっへっへっへ! オレのもののくせにおれ以外にも承認されたがって生意気だから虐めてやるんだ。それがオレらの精神的セックスなんだよ。おまえじゃ傘をおれほど振り回せないね、泣かすことも救うこともできないね、オレはあいつンことぐちゃぐちゃのどろどろにして正気失うほど壊してやりたいっていっつも思ってて、それは紛れもなくオレの愛だし、良心のストッパーかけて実行しねえのもまた愛なのさ!」
狂ってる……とおれは思った。
そのとき、聞き慣れた声がして、ソノオとスズムが駆けつけてくれた。
「何を大騒ぎしているのかね。僕の家の前で僕のかわい子ちゃん相手にやめてくれたまえよ」
「おい、刺身! いい加減にしろ! 怒りの対象を見誤るな!」
スズムは同じバンドの仲間として精神面から刺身を説得し、ソノオはというと……
何かの武道か護身術並のキレッキレの身のこなしで刺身が鋏を振り回す手首を捕えて押さえつけ、刺身の手から鋏を奪った。
刺身は鋏を持ったソノオに追いつめられる。
「君。リケを本気で殺そうとしてたね。躊躇いがないから鋏を持つ手が震えてなかった。僕の手を見てごらん。震えていないだろう。この意味がわかるね?」
ソノオの目は完全に据わっていた。怖い! 傍で見てるだけでおしっこ漏らしそう!
「おい、やめてやれ、簪。刺身はこんな奴でも俺の大切なバンド仲間だが、それと同時に、こんな非道な人間相手に簪が手を汚すべきじゃない。自分を大事にしてくれ」
スズムがソノオを止めてくれてホッとする。血を見たくなかったし、おれも、ソノオに殺人者になってほしくなかった。
ソノオは完全に据わっていた目つきを人間らしい温度のあるものへと戻した。
「涼夢くんがそこまで言うなら涼夢くんに免じて今のはハッタリだったということにしてあげてもいい。リケを二度と傷つけないと土下座して誓うだけで許そう」
刺身は自分の凶器だった先の尖った鋏の先端をいざ、自分のほうに向けられたらよほど怖かったのか弱気になり、
「ごめんなさい、二度としません、命だけは勘弁してください……」
と震えながら土下座した。
「傘、たすけて……傘……」
譫言で傘の名を呼んでいる。
「べらぼうにクリーチャー扱いじゃないか、僕」
ソノオが肩を竦めるのを見てスズムが
「本当に、すまんな……」
と謝っていた。だから、この人は悪くないのに。
後日、おれとソノオは刺身たちが出るライブを観に行った。
「はーい、じゃー、おれが今日のために書き下ろした新作――オレ以外の男の顔にナニをとは言わねーけどぶっかけた浮気男の歌――を歌いまーす」
刺身は隣でベースを弾く傘を親指で指し、客席から笑いと顰蹙を集めた。
「わん、つー、すりー、ふぉー……。♪黒い羽した悪魔は純情 猫の爪した悪魔に恋情 劣情 欲情 惨状……」
何だよ、この曲。
結局、傘の本命は絶対的に「猫の悪魔」――刺身――で、おれはダシにされてたって、そういうことじゃん……。
だが、ソノオのクリーチャームーブの甲斐もあってか、あのあと二人が仲直りできてよかった。
永遠に二人の恋が続いてほしいとおれは思った。
「ライブ、良かったぜー!」
「やあ、刺身、傘、涼夢。お疲れ様」
おれとソノオが控え室に行くと、傘は
「おー、来てくれてさんきゅな」
とフランクに礼を言う。無口なスズムは品良く微笑んでおれたちに会釈してひらひら手を振った。刺身はお菓子を食べるのに夢中でこちらを見もしなかった。
「刺身、テメェ、マジで頼んでもねえ下品なMCしてくれてよー」
傘がうんざりした声を出す。
「ほんとのことをみんなにバラしてやっただけさ。どうせみんな冗談だと思ってんよ。傘は外ヅラだけはいいから」
「我が恋人ながらつくづく性格がわりーな」
そうは言いつつ、傘は、刺身の暴言もまあ、いいかと許している様子だ。
「オレ、真に目が肥えてるファンは涼夢に走ると思うねー」
刺身が悪態をつく。
「言ってくれるぜ」
なんだかんだ傘は刺身には甘いんだよなあ。
ソノオも、おれには甘い……。そのことを思うと雌スイッチが入ってアナルがじゅんわり♡ と濡れた。
帰ってすぐに玄関でアリス風の水色のワンピースの裾から手を入れられ、ドロワーズを引きずり下ろされる。えっ、何!?
「出会ってすぐは痩せすぎで心配したけれど、すっかり健康的な肉付きになったね。お尻もこんなに丸くなって……」
お尻の曲線をなぞられ、揉まれて、おれは
「あっ……♡」
と吐息を漏らす。
おれは意を決して白状する。
「ソノオ……おれね、今日ね、実は……」
アリス風ワンピースの澄んだ水色のフレアスカートの下に、おれは深紅の紐パンを忍ばせていた。しかも、この紐パン、おしりの穴の部分がハート型に切り抜かれている。
「すげえエッチなパンツ履いてんだ、おれ……♡♡」
「リケ……」
ソノオの声は掠れていて、初めて聞く声だった。
「いつももとても悪くないし、最高だけれど、今日はいつになくときめいてしまうよ……!」
ソノオはパンツに開いたハート型の穴からおれのアナルに触れて二本の指で拡げたり、前立腺をわざと焦らしたりした。おれはくぅん♡ と鳴く。
「セックスをすると君は、自らの長く艶やかな黒髪の中を泳ぐように快感に身を捩る。その小作りなしなやかな体も、桜貝の欠片のような小さな足の爪までもの全身が……そして、外面的な美貌だけでなく純真な心根も全てが美しすぎて目が眩む……」
そう、蕩けたような声で言いながらソノオはぷちゅ♡ ととうに濡れそぼってぬめるおれの入口に亀頭を潜り込ませた。
「全部、僕だけのものだったなら……いや、なんでもない……」
パンっ♡♡♡
次の瞬間、結腸口の手前ギリギリまで突き入れられて何もわからなくなる。
今、ソノオ、なんて言ったんだ? よく聞こえなかった。
それにしても先ほどのおれへの賛辞……効きすぎた。おれが、純真? 傘に同じ言葉言われても何も嬉しくなかったのに、ソノオ相手だとどうしてこんなに……。
ソノオのくれる蜜の雨のような言葉に溺れて全部、溶けてしまいそうで、おれはどろどろに濡れ、熱く荒い息を吐いて意識すら危うくなる。
「ねえ、これからもずっとここにいて。美しいリケ……」
ソノオが切なそうに呟くのが決定打になっておれはイってしまった……。
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