雨が一等星を隠すから

リハビリも兼ねて…かなり大雑把です

雨が一等星を隠すから
　雨が降ると、傘を持つのがめんどくさいとか、湿気がうざったいだとか、人によって色々な感想を持つだろう。でも、天の川の彼らにとってはきっとそんな悩みなんて、地球から眺める星屑みたいにちっぽけに見えるだろう。
　だって、雨が降ると、愛する人に逢えなくなってしまうから。

『雨が一等星を隠すから』

　今日は7/7日。
　1年遅れ、君に想いを伝える日。
　君は夏休み前にここ、地元に帰ってくる。去年もそうだった。それは毎年のこと。だからまだ、この胸に秘めておこうと思った。まだ、言わなくてもいいと思っていた。ただ、それは去年までの話だ。
　来年僕は上京する。そうなると、次はいつ会えるかわからないから。去年、生憎の雨で交通網が麻痺し、君の帰省は夏祭りに間に合わなかった。
　だから今日こそ、今日こそ。

　その想いで僕はここにいる。辺りは大勢の人で賑い、数々の屋台が展開されている…はずだった。お天道様はなんとも気まぐれで、憎たらしいのだろう。
「人も屋台もないね。」
「そうだね。」
　閑散とした祭り会場に、ぽつりただ2人。
「帰ろうか。」
　彼女は偽物の笑顔を作る。そのくらいのことは、僕にもわかる。
　また別の機会にしよう。
　そう思ったときだった。僕の傘に、光が差したのは。
「すごい、晴れた！！」
　雲が過ぎ去った夜空には、満天の星空が広がっていく。
「ねぇ、」
　傘を閉じて、君はニコっと笑う。
「好きだよ。」
　ドキリと心臓が脈打つ。それは去年見上げた花火の音のように、僕の体を駆け巡る。
　閉じるのを忘れた口と傘。情けないが、僕は言葉が出せずにいた。
「僕も…好きだよ。」
　僕の口から、力なく発せられた声と涙。
　そして、君は僕の傘の中に入った。閉じる機会を失った傘に、雨粒が滴る。
　滴る雨が、君という一等星を覆い隠した。
「あ、流れ星！」
　ふとそう叫ぶと、無意識に僕は心のなかで祈っていた。
　織姫と彦星も、出逢えますように。