賢者様が大好きだからお役に立ちたい〜俺の探査スキルが割と便利だった〜

柴花李

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第五話 初めてのクラッスラダンジョン

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 もういい。もう本当に、どれでもいいから、さっさと実力の無さの程を見せ付けて見限られて、それであの受付の姉ちゃんには悪いけど、なんか手に余る依頼をもらって肉塊になろう。
 自棄になったオリンドは、ここから一番近いという理由でダンジョン内の鉱石探しに決めた。グラプトベリアのダンジョンは街の中心部にあり、現時点で七十九階層までの調査が進められている。その最新開拓階層へ到達できるのはギルドで定められた最高位のランク、Sランクと、その下のAランクの一部、極々一握りの冒険者のみだ。Fランクのオリンドでは精々初級の五階層辺りが関の山だろう。
 選んだ依頼の鉱石は八階層で出土したことがあるという。なら、十二分に俺の駄目さも発揮できるはず。
「そうそう、途中の階層で何か欲しいものがあったら、遠慮なく言ってくださいね」
 鉱石を探すなら採掘道具は必須だと立ち寄った万屋で、エウフェリオが話しかけてきた。
「…欲しい、もの?」
「ええ、貴方が必要だと思うもの。魔石でもなんでも、探知に掛かったら好きに採取していいですよ」
 欲しいものか。オリンドは考える。今更欲しいものも何も無いけれど、拠点では世話になったし今日もまた自分には到達できそうにない階層まで連れて行ってくれるという。更には今とっても当たり前のように採掘道具の代金も支払われてしまった。確かに手持ちが無けりゃ払えもしないけれど。これは是非とも、できる限り、恩返しがしたい。
 よし。なんか良いものがあったら採取して、それ全部渡そう。
 そう決めるとかなり心持ちが楽になった。足取りも軽くなって、やっと背筋が伸ばされた。
 ほどなくしてグラプトベリアが誇る多層ダンジョン、クラッスラも見えてきたことで、否応なしに気分も高揚する。
「おっ。さすが、人払いしてくれてるな」
 イドリックが目の上に手の平をかざし、伸び上がるようにしてクラッスラの入り口付近を確認した。
「あらほんと。さっきの今で素早いこと」
「私たちが行けば騒ぎになることは重々承知でしょうからね。といっても恐らく初級階層まででしょうけど」
「えー。どうせならダンジョン丸ごと俺たちの貸切にしてくれれば良いのに」
「無茶を言うな」
 初級階層に挑みたい冒険者たちに他の依頼を斡旋し説得したギルドの労力を思えば頭が下がる。だというのに大胆なことを言うアレグにイドリックが嗜めを入れたところで、一行はダンジョン入り口に着いた。
「こ、ここが、グラプトベリアのダンジョン…」
 これまで見てきたダンジョンとは比べ物にならない、目を見張るほどの大きな門だ。目測で三階建の家屋ほどある。中で発生する魔物を外に出さないための蓋でもあるそれには、端の方に冒険者やギルド員たちのための通用門が設けられていた。こちらは観音開きの扉で、二枚合わせて家の壁一枚ほどの大きさだ。その両隣にはギルドから派遣された門番の詰め所があり、昼夜を問わず見張りが立っている。
 それにしてもなんて大きさだ。威圧と畏怖を感じて呆然と見上げるオリンドに、初々しい反応が新鮮だとアレグがニヤついた。
「そ。ここがダンジョン街のダンジョン、クラッスラだ。でっけえだろ」
「うん…でかい…。初めて見た…。すごい」
「そうだろそうだろ!ようし、このアレグ様が案内してやるから、ついてこい」
 颯爽と、きちんと門番に冒険者タグを見せ、依頼受注者の照会をしてもらってから扉を潜る勇者。ううん、締まらない。苦笑しながら続くイドリックとウェンシェスランもタグを見せている。
「…ふわ…さすが、勇者パーティでも顔パスは無いのか…」
 しきりに感心しながらオリンドは門番にタグを見せた。訳もなく自分だけは通されないのではないかなどという不安に襲われたが、しっかりと通されて安堵する。後ろから付いてきたエウフェリオが、大丈夫ですよ、と優しく笑いかけてきた。
 わあ、見透かされてら。
 顔が熱くなりかけたが、先に行くアレグから置いてくぞーなんて軽口を掛けられ、慌てて追いかける。
「…っ、うわ…」
 なんだこれ。なんだこの空間。本当に土の中なのか?すごく広いし、明るい。
 中に入った途端、真っ暗だろうと思っていた予想が外れて、この街にきてからもう何度目かもわからない感嘆の息を吐く。
 ダンジョン内は広大な洞窟状で、ところどころに鍾乳石が連なっており、壁や天井が放つ不思議な光でぼんやりと照らし出されていた。
「明るいのは、これ、この辺り一体の魔素を栄養に育つ苔のおかげなんですよ。常に発光しているんです」
 歩きながら土壁に手を伸ばし、苔を少し毟ったエウフェリオが見せてくれた。指の中で淡い光を放つ苔は、見つめているとなんだか音も出ているような気さえしてくる。
「すごい…こんなのが、ある、あるんだ…」
「不思議でしょう?この下の階層に行けば行くほど、もっとたくさん不思議なものが待っていますよ」
「へええ…」
 それは、是非見たいな。
 目当ての八階層までこの不思議な苔がたくさん見られるのかと思うと胸が踊る心地だ。その心地のままオリンドはいつも通り探査スキルを使った。
 辺りに染み渡らせた魔力から、様々な情報が返ってくる。その中から珍しい物を見繕ったが、アレグたちを呼び止めようとして、ふと途方に暮れた。
 ──あれ?…えっ、どうしよ。何て言って止めたらいい?…い、いつ、声を掛けたら迷惑じゃ無いんだ?
 ほとんど他人と交流したことが無く、どうしていいかわからない。アレグたちに声を掛けあぐねて立ち止まり、おろおろと視線を彷徨わせるとエウフェリオと目が合った。必死で土壁を指差して訴える。するとありがたいことに察したのか近寄ってきてくれた。
「なにかありましたか?」
「えっ、…えっと、魔石が、た、たぶん、純度の高いやつ…」
「おや、それはいいですね。さっそく掘りましょうか」
 にっこり笑って言うが早いかエウフェリオはアレグたちを呼び止める。
「アル、待ってください。ここに魔石があるらしいので掘ってみます」
「ええー!?マジで!?っちょ、めっちゃ早!?早くね!?」
 速いのは貴方だ。割と離れた場所から一瞬で眼前まで距離を詰めてきたアレグに、エウフェリオがやや身を逸らす。
「だから言ったでしょう」
「いや、だって…」
「ちょっ…と、アルちゃん、足速すぎ…。って、ほんとに、何か見付けたの?随分と手際がいいのね」
 ようやく追い付いたウェンシェスランが顔を向けた先では、すでに採掘道具を駆使して目標までひた掘り始めているオリンドの姿があった。普段のおどおどとした態度からは想像も出来ないほど手早く的確な作業に感心する。
「へえ。こりゃ、長いことこれ一本で食ってきた感じだな」
 後からゆるゆる戻ってきたイドリックも、しみじみとした感想を述べた。
 その言の通りまさに十六年もの間独りで収穫、採掘、伐採などなどを行ってきたオリンドは、最小の範囲を最短で掘り進めて見事に魔石を掘り出してみせた。
「あった…。え、えと、これ…、あの、わりと、いいやつだと思う」
 取り出した魔石を恐る恐るといったふうで渡されたエウフェリオは、その純度に驚いた。
「…これは、なんとまあ…第九階層以降でもなければ滅多に出ない純度ですね」
「ええ!?そんなのここで出ちゃうの?だって第一よ第一。魔石自体が出ないじゃないのよ。ちょっと貸してみせてよ」
 疑う訳じゃ無いけど、と言い置いて魔石を受け取ったウェンシェスランは、矯めつ眇めつ眺めて、それから少しだけ魔力を通してみた。
 心地良く吸収されて二倍ほどに増幅した魔力が返ってくる。
「うっそ…。ほんとに中級魔石じゃないの」
「まじで!?すげえじゃんおっさ…リンド!」
 手放しで褒めるアレグにオリンドはしきりに照れて恐縮して、たまたま良いのがあって良かったと謙遜した。
 たまたまなものか。聞きながらエウフェリオは内心ほくそ笑む。ここから八階層まで何をどれだけ見付けるか楽しみだ。仲間たちのオリンドに対する態度がどう変わるのかも。
 その期待を大きく上回って、各階層できっちり掘り出し物を探し当てるオリンドに、アレグたちどころかエウフェリオまでもが認識を改めた。先へ進むうちに歩く順も入れ替わり、今では戦闘時以外すっかり勇者一行を従える形だ。尊敬の視線すらあつめているが、当の本人はなるべく目を合わせないよう逸らしているため全く気付いていない。というかアレグたちの戦闘があまりにも想像の外すぎて感動のあまり記憶の反芻に忙しく、それどころではない。
 などと言っても初級階層に現れるスライムだの吸血蝙蝠だのコボルドだのゴブリンだの、勇者一行の前では遮蔽物ですら無く、あっという間に第七階層を過ぎようとしていた。
「…んえ、あ、あれ…?」
 その途中でオリンドが地面へ向かってきょろりと頭を巡らせた。
「どしたオリンド!?またいいもん見付けた!?」
 すっかりほくほくわくわくした勇者が身を乗り出す。今や彼らの鞄は希少な魔石に化石に鉱物や鉱石などといった出土品のみならず、上級階層に行ってようやく出会えるかどうかという変異魔物の換金部位などで埋め尽くされていた。
 この初級階層にこれだけの物が隠されていただなんて、驚きしか無く感嘆の声しか出ない。
 いや、感嘆の声は出せていた、か。
「ん…と。八階層に、無い。えっと、こ、コバルト。たぶん掘り尽くされてる…。けど、九階層のちょっと行ったところに、残ってるから…」
「………なんて?」
 言葉も無いとはこのことか。
 アレグは聖剣を落としたしイドリックはタワーシールドを落としたしウェンシェスランは聖杖を落としたしエウフェリオは特に何も手にしていなかったので他の面々と同じく顎を落とした。
「待て待て待て待てちょっと待て。あんた三階層分サーチかけてんのか」
 いち早く盾を取り直したイドリックがちょっと青くなりながら聞くと、こともなげに頷く。
「うん。…あ、…その、これまで、い、いつも、そうしてた、けど、……えっ?…あ!お、温存しないと、いけなかった…?」
「いや、温存とかそういう話じゃなく…」
 俺の知ってる探査スキルと違う。
 狼狽えるイドリックに変わって、庇うようにエウフェリオが前に出た。
「大丈夫ですよ。リックは…いえ、私たちも。ちょっと驚いただけです。貴方の探査スキルがあまりにも有能すぎて」
「ゆっ…!ややややや、そ、そんな、そんなこと、ないしっ。俺なんて、あ、足引っ張るばっかりで…」
「それは無えーから!それだけは無えから!気にすんな!ってかクラッスラの初級階層で俺らの足を引っ張れる奴が居たら連れて来いっての!」
 オリンドの恐縮謙遜卑下に、おまえそれはそこだけは譲らねえぞとアレグが割り込んだ。
「あっ…」
 ぺちり。オリンドが額を叩く。
 そうか。言われてみれば。あの勇者一行が、多少の荷物を背負ったところで、少しぐらい合わない歯車があったところで、初級のダンジョン程度で、重いとか鈍いとか感じるわけ無い、のか。…あれ…?…感じるんじゃないかって、考える方が不遜だった…?
 えっ、不遜だった…?
「オリンド」
 強めに名前を呼んで、エウフェリオは視線を彷徨わせて儚くなりかけたオリンドの両肩をしっかりと掴んだ。痛くは無いとはいえ、あまりにも込められた力に意識が引きずられる。
「それで、九階層を少し行ったところとは、どの辺りですか?」
 整った顔に覗き込まれてどぎまぎしていたが、具体的な内容を聞かれたことで、オリンドの意識はすぐに事務的な処理に入った。先ほどまでサーチしていた内容をもう一度さらえて、九階層に入ったら五十八歩目あたりの、左側の壁を腕十五本分くらい掘ったところに八階層から分断されて続く鉱脈がある。と、多少固唾を飲んだ雰囲気で答えた。
「ありがとうございます。それでは、依頼達成までもうすぐですね。あとちょっとだけ、頑張りましょう」
 にっこり。
 至近距離で見る憧れの人の優美な笑みは凄まじい破壊力だった。たちまちのうちに脳が灰と化し全身が沸騰したオリンドは第九階層まで突っ走り、依頼のコバルト鉱石だけでなく水晶の巨大な晶洞をも掘り出した。人が通って歩けるほどだ。これまでいくら探査スキルが軽視されてきたとはいえ、これほどの宝を見落とすことになっていたとは歯痒い限り。
 それよりも歯痒いのは、これまでオリンドがソロ活動を余儀なくされてきたことだ。確かに彼の能力は素晴らしいが、真の実力は戦闘職と組んでこそ発揮されるもの。現に五階層までの取得品はどれも目を見張るものだったが、あくまで過去に他の冒険者が見付けたものと比べてというだけの話であって、探索に掛かる支出を考えれば生活をしていくには少々心許なさすぎる。
 これは、ぜひ。ぜひとも我等がパーティに招き入れたい。自分たちのためだけでなく、彼のためにも。イドリックとウェンシェスランともども固く頷き合ったアレグは、エウフェリオと何事か話しているオリンドに声を掛けた。
「なあ、オリンド。俺たちの仲間になってくれないか?」
「……へっ…?」
 オリンドの手からツルハシが危うく取り落とされかけてエウフェリオが受け止める。
「ちょ…っと、アル!いきなりすぎますよ、危なかったでしょう!?」
「わ、わるい、そんなつもりじゃ…!いや、でも、マジで仲間になってほしいんだよ」
「わかりますけれども、物事には順序というものがあるでしょうに…。すみませんオリンド。驚かれ…オリンド!?」
 アレグから視線を戻したエウフェリオは、今にも倒れ行くオリンドの姿を認めて肝を冷やした。ツルハシを投げ捨てて駆け寄り抱き止める。
「オリンド!?どうしたんです!」
「……う」
「う?」
「う、嘘だ…。タチの悪い冗談…」
 ううっ。
 目にいっぱい涙を溜めるオリンドにエウフェリオは痛ましそうに眉を寄せた。
 彼からここまで自信を削ぎ取り追い詰める過去が憎らしくて仕方ない。
「いいえ、冗談でも嘘でもありません。貴方はそれだけの力を持っているんですよ」
「そんな…そんなこと…ない。ない、から。…こ、こんなの、話がうますぎる…」
 赤らんだ顔をくしゃくしゃにして言うオリンドに、こちらこそ泣きそうだ。
「…っ、オリンド…。…?…オリンド!貴方、熱を出していませんか!?」
 さきほどから顔が赤すぎる。もしやとオリンドの額に手を当てたエウフェリオは、思ったよりは熱くなかったものの確かに熱を出していることを確信して抱き上げた。
「あわーーー!?!?」
 ご無体な!混乱を極めたオリンドは涙も引っ込めてさらに顔を赤らめた。しかし暴れてはエウフェリオの身も危険だとすんでのところで思いとどまりはしたものの、これで熱を上げるなというほうが無理だ。結果、さすが賢者様いい香りがする。などという明後日の方向の感想を胸に、あえなく気絶した。
「オリンドー!?!?!?」
 勇者一行の叫び声が第九階層に響き渡る午後だった。
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