優しい幽霊話、はじめました。

まだねむお

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僕の部屋の幽霊

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「もしもしお父ちゃん? 今、いい?」
「……会社にいるとき電話してくるなよ」
「仕事中にごめん」
「まあ、今は休憩中だからいいけどね」
「あのさ、今、家にいるんだけど」
「どうした? 何かあったか?」
「また幽霊が出た」
「おいおい、またかよ」
「ぼさぼさの髪の女の人」
「どこに出た?」
「僕の部屋」
「前も聞いたけどさ、本当か?」
「本当だってば。嘘じゃないもん」
「前と同じ女?」
「多分、そうだと思う」
「どんな顔してたっけ」
「眉毛が太くて、眠そう」
「体型は?」
「痩せてて、背は結構高い」
「どんな服を着てる?」
「シャツとスカートがいっしょのやつ」
「ワンピース?」
「かな。だぼっとした灰色の服」
「そっか。幽霊、何してるの?」
「ぶつぶつ呟いてうろうろしてる」
「こっちには気がついてる?」
「全然。見えていないみたい」
「ま、見えてたら電話しないわな」
「うん。言葉も聞こえてないみたいだし」
「声をかけてみたの?」
「僕の部屋だから出てってくださいって」
「反応は?」
「全然ない」
「とりあえず、今は危害はないわけ?」
「ないよ。でも不気味」
「今もうろうろしてる?」
「うん。何か頭をぐしゃぐしゃしてる」
「怖いか?」
「ちょっと怖い。前よりは慣れたけど」
「わかった。俺が何とかする」
「何とかって、家に帰ってくるの?」
「それは無理だけど、考えがあるんだ」
「考えって?」
「二回目だから、実は対策を考えてた」
「そうなの?」
「ああ。多分幽霊を追い出せると思う」
「へええ、すごい」
「少し待ってくれ。一旦、電話切るぞ」
「わかった。じゃ、お願い」



「もしもし? 俺だけど 」
「あれ? どうしたの、仕事中でしょ?」
「おまえさ、今日灰色の服着てる?」
「着てるよ。灰色のワンピース」
「例の部屋、また入ってるだろ?」
「あ! ごめん、ついつい」
「ぼさぼさ頭でうろうろしてるらしいな」
「もしかして、また電話があったの?」
「あった。おまえ、幽霊に怖がられてるぞ」
「ごめんごめん、すぐに出ます!」
「また行き詰まってたのか?」
「次回作のアイデアに悩んで歩き回ってた」
「とりあえず、あの部屋だけはやめてくれ」
「幽霊がどうやって電話してるんだろう?」
「知るかよ。そもそも俺、父親でもないし」
「お父さんに似てたのかもね」
「良い子だけどな。でも幽霊はちょっと」
「やっぱり、引っ越す?」
「そうだなあ。来たばっかりだけど」
「創作活動するには広くていいんだけどさ」
「中古でもやけに安いと思ったんだよなあ」
「まさか、幽霊付きの物件だったなんてね」
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