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シャイロック 10
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どうする? なにが? 小学校のアルバムなんか役に立たなかった。あいつも俺も外に友達なんていなかった。いや、俺が知らないだけだ。もう一度、アルバムを開こう。ふざけんな。知っている顔には当たってみたじゃねえか。それとも八十人総当りで行くか? おばさんが見てる。心配をさせるな。片っ端から電話しろ。伊藤和也君が死にました。お通夜に来てください。機械の様に電話をかけまくればいいんだ。それでここにやって来た奴があいつの友達でいいじゃないか。なんだそれ? やる気があるのか? 和也を殺したのは俺なんだぞ。俺がもっとやる気を見せないでどうするんだ。中国人も日本人も、和也をそそのかしたヤクザも、全員ゴミ箱に捨ててやるんだろ? アルバムが役に立たないことなんてわかってたことじゃねえか。俺たちはみんな嫌われ者だった。俺は特にな。友達なんて一人もいないからスーパーの肉屋でねちねちと陰気な遊びをしてたんじゃねえか。和也がそれを見つけて、面白がって、二人で河川敷に行って川の中の魚を穴あきにして笑ったな。二十回に一回くらいしか上手くいかなくて、それでも成功すると魚は腹を上にして浮き上がってきた。なぁ、シュウジ! 骨が見えるぜ! コロセ。和也をあんな風にした奴らを殺せ。当然の報いだ。絶対に調べて穴を開けてやる。見つけろ! だから、調べてるんだろうが。もういいじゃねえか、六本木に行って片っ端から殺しまくればいいんだよ。ダメだ。俺が殺すのは悪人だけだ。クズだけだ。和也もクズじゃねえか。違う。和也は違う。あいつは仲間思いのいい奴だった。だった。もう過去の人間だ。山本みたいな奴とつるんでお前の知らない間にクズになっちまったんだよ。うるせえ。マサコ、大丈夫だから向こうに行ってろ。おばさんにも心配するなって言ってくれ。山本。あんなにわめき散らしやがって。もっと上手くやるはずだった。鈴木とか言うやつの話を聞くはずだったのに、場が混乱した。福島を殺す必要があったのかな。あいつは何か違った。もっと話を聞いてからでもよかった。山本が暴れなければ、もっと上手く出来たのに。河で拾ったバッグのせいだ。アレは持っていかなきゃならない気がした。何でだ? 山本がもう一人と一緒に河に何かを投げ込んだのを見たからさ。何か。ドボン。と言う音のする何か。人が寝ている近くでゴミを捨てやがって。そうだ。山本だ。山本に聞けばいい。山本なら何か知っているはずだ。どこに行けば会える? 決まってるだろ。あのビルさ。あのビルには福島の死体があるじゃないか。いつまでもあんなもの置いておくバカはいないぜ。救急車を呼んで、病院に運ばれて原因不明の病死で片付いているはずだ。あいつらは相当おめでたい奴らだから、まだ電話をして詐欺を続けているに違いない。驚いた山本に向かって、教えないとおまえも殺すぞと一言言ってやれば、簡単にしゃべりだすに決まっている。そうと決まればもう電話なんかしてられるか。機械のようにおんなじことをしゃべって、俺は狂っちまいそうだ。狂ってるのは世の中だけでいい。俺はまだまともでいたい。まともな奴は自分がまともだなんて一つも思いやしないんだぜ。自分のことをまともだって言うやつほど、まともには縁遠いのさ。そうさ、俺はまともじゃない。人間ですらない。肉切りマシーンだ。おばさん、今から出かけてくるぜ。和也の友達をいっぱい連れてくるのさ。中国人もいるけど気にしないでくれよ。ひょっとしたら宇宙人もいるかもしれないぜ。沢山、切り刻んでやるから、楽しみに待ってろよ。おばさん、何も心配はいらないって。一人も生かしておく気はないからさ。和也に寂しい思いをさせないよ。
どうする? なにが? 小学校のアルバムなんか役に立たなかった。あいつも俺も外に友達なんていなかった。いや、俺が知らないだけだ。もう一度、アルバムを開こう。ふざけんな。知っている顔には当たってみたじゃねえか。それとも八十人総当りで行くか? おばさんが見てる。心配をさせるな。片っ端から電話しろ。伊藤和也君が死にました。お通夜に来てください。機械の様に電話をかけまくればいいんだ。それでここにやって来た奴があいつの友達でいいじゃないか。なんだそれ? やる気があるのか? 和也を殺したのは俺なんだぞ。俺がもっとやる気を見せないでどうするんだ。中国人も日本人も、和也をそそのかしたヤクザも、全員ゴミ箱に捨ててやるんだろ? アルバムが役に立たないことなんてわかってたことじゃねえか。俺たちはみんな嫌われ者だった。俺は特にな。友達なんて一人もいないからスーパーの肉屋でねちねちと陰気な遊びをしてたんじゃねえか。和也がそれを見つけて、面白がって、二人で河川敷に行って川の中の魚を穴あきにして笑ったな。二十回に一回くらいしか上手くいかなくて、それでも成功すると魚は腹を上にして浮き上がってきた。なぁ、シュウジ! 骨が見えるぜ! コロセ。和也をあんな風にした奴らを殺せ。当然の報いだ。絶対に調べて穴を開けてやる。見つけろ! だから、調べてるんだろうが。もういいじゃねえか、六本木に行って片っ端から殺しまくればいいんだよ。ダメだ。俺が殺すのは悪人だけだ。クズだけだ。和也もクズじゃねえか。違う。和也は違う。あいつは仲間思いのいい奴だった。だった。もう過去の人間だ。山本みたいな奴とつるんでお前の知らない間にクズになっちまったんだよ。うるせえ。マサコ、大丈夫だから向こうに行ってろ。おばさんにも心配するなって言ってくれ。山本。あんなにわめき散らしやがって。もっと上手くやるはずだった。鈴木とか言うやつの話を聞くはずだったのに、場が混乱した。福島を殺す必要があったのかな。あいつは何か違った。もっと話を聞いてからでもよかった。山本が暴れなければ、もっと上手く出来たのに。河で拾ったバッグのせいだ。アレは持っていかなきゃならない気がした。何でだ? 山本がもう一人と一緒に河に何かを投げ込んだのを見たからさ。何か。ドボン。と言う音のする何か。人が寝ている近くでゴミを捨てやがって。そうだ。山本だ。山本に聞けばいい。山本なら何か知っているはずだ。どこに行けば会える? 決まってるだろ。あのビルさ。あのビルには福島の死体があるじゃないか。いつまでもあんなもの置いておくバカはいないぜ。救急車を呼んで、病院に運ばれて原因不明の病死で片付いているはずだ。あいつらは相当おめでたい奴らだから、まだ電話をして詐欺を続けているに違いない。驚いた山本に向かって、教えないとおまえも殺すぞと一言言ってやれば、簡単にしゃべりだすに決まっている。そうと決まればもう電話なんかしてられるか。機械のようにおんなじことをしゃべって、俺は狂っちまいそうだ。狂ってるのは世の中だけでいい。俺はまだまともでいたい。まともな奴は自分がまともだなんて一つも思いやしないんだぜ。自分のことをまともだって言うやつほど、まともには縁遠いのさ。そうさ、俺はまともじゃない。人間ですらない。肉切りマシーンだ。おばさん、今から出かけてくるぜ。和也の友達をいっぱい連れてくるのさ。中国人もいるけど気にしないでくれよ。ひょっとしたら宇宙人もいるかもしれないぜ。沢山、切り刻んでやるから、楽しみに待ってろよ。おばさん、何も心配はいらないって。一人も生かしておく気はないからさ。和也に寂しい思いをさせないよ。
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