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冬のあほうつかい
冬のあほうつかい 34
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34
シミュラは地下農場から急遽氷の城へ呼び戻された。敵襲かと象牙色の長大な杖を握って城壁の一段目に向かった。
モンティが先に城壁の下を見下ろしていたが、シミュラが来たので状況を説明する。
「サースがごろつき共を連れてやってきました。中に入れろと」
「ありがとう」
シミュラも城壁の下を見る。
サースが城壁を見上げてシミュラとモンティを見る。背後には百人ほどの風体の悪い男たちがそれぞれ思い思いの武器を携えて控えている。
「サース、ここがどんなところか知っているはず。何故事前に連絡もなく兵隊を城に入れようとするのか」
「これは侮辱だ! 俺はシミュラ様のために兵隊を集めてきたのに城に入れないなんて。彼らは味方だぞ!」
サースは下から叫ぶ。
「この城は町ではないのですよ? 兵隊を住まわせる場所など無い」
「だったら迷宮に用意すれば良いじゃないか。九階を作れるくらいの余力はあるはずだろう?」
「九階はもう作りました」
「作った? 何を?」
「畑を作りました」
「畑? 敵が来るのに畑? 何を考えているんですか? あなたは!」
サースはシミュラを非難した。しかし、シミュラは冷静に返す。
「お前にはわたくしに意見する資格はないはず」
「俺はこの城のために戦う兵隊を連れてきたんだぞ! 城に置いておけないなら、その新しく作ったという畑に待機させる。畑ならテントを張るのも構わないはずだ」
「許しません」
氷のような冷たさを見せるシミュラにサースは口を歪ませる。
「では、ここにキャンプを作ってもよろしいですか?」
「少し離れたところになさい。子供たちが恐れます。それと、」
シミュラの目が厳しさを増す。
「後で広間に来なさい。説明を聞きます」
シミュラは城壁を離れた。
「大将」
サースの後ろから兵士が声をかけた。
「想定内さ。さて、許しも出たことだし、我々は東にキャンプを作るとしようか。いろいろと準備もあることだしね」
サースは兵隊を連れて城の東へ向かった。
モンティは城壁の上から目でサースたちの行方を追う。サースは兵隊を城の東へ導いていく。今年は雪解けの水の氾濫の心配がないとは言え、川の直ぐ側にキャンプを張るのはあまり良い案とは思えなかった。それよりも彼らはテントや大きな荷をはじめから城の前まで運んでこなかった。城への入場を断られるためにわざと城壁の前に兵士を並べたのではないか。そんな考えがモンティの頭に浮かんだ。しかしそれはすぐに思い過ごしだと忘れ去られた。
シミュラは地下農場から急遽氷の城へ呼び戻された。敵襲かと象牙色の長大な杖を握って城壁の一段目に向かった。
モンティが先に城壁の下を見下ろしていたが、シミュラが来たので状況を説明する。
「サースがごろつき共を連れてやってきました。中に入れろと」
「ありがとう」
シミュラも城壁の下を見る。
サースが城壁を見上げてシミュラとモンティを見る。背後には百人ほどの風体の悪い男たちがそれぞれ思い思いの武器を携えて控えている。
「サース、ここがどんなところか知っているはず。何故事前に連絡もなく兵隊を城に入れようとするのか」
「これは侮辱だ! 俺はシミュラ様のために兵隊を集めてきたのに城に入れないなんて。彼らは味方だぞ!」
サースは下から叫ぶ。
「この城は町ではないのですよ? 兵隊を住まわせる場所など無い」
「だったら迷宮に用意すれば良いじゃないか。九階を作れるくらいの余力はあるはずだろう?」
「九階はもう作りました」
「作った? 何を?」
「畑を作りました」
「畑? 敵が来るのに畑? 何を考えているんですか? あなたは!」
サースはシミュラを非難した。しかし、シミュラは冷静に返す。
「お前にはわたくしに意見する資格はないはず」
「俺はこの城のために戦う兵隊を連れてきたんだぞ! 城に置いておけないなら、その新しく作ったという畑に待機させる。畑ならテントを張るのも構わないはずだ」
「許しません」
氷のような冷たさを見せるシミュラにサースは口を歪ませる。
「では、ここにキャンプを作ってもよろしいですか?」
「少し離れたところになさい。子供たちが恐れます。それと、」
シミュラの目が厳しさを増す。
「後で広間に来なさい。説明を聞きます」
シミュラは城壁を離れた。
「大将」
サースの後ろから兵士が声をかけた。
「想定内さ。さて、許しも出たことだし、我々は東にキャンプを作るとしようか。いろいろと準備もあることだしね」
サースは兵隊を連れて城の東へ向かった。
モンティは城壁の上から目でサースたちの行方を追う。サースは兵隊を城の東へ導いていく。今年は雪解けの水の氾濫の心配がないとは言え、川の直ぐ側にキャンプを張るのはあまり良い案とは思えなかった。それよりも彼らはテントや大きな荷をはじめから城の前まで運んでこなかった。城への入場を断られるためにわざと城壁の前に兵士を並べたのではないか。そんな考えがモンティの頭に浮かんだ。しかしそれはすぐに思い過ごしだと忘れ去られた。
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