33 / 96
冬のあほうつかい
冬のあほうつかい 32
しおりを挟む
32
骸骨兵たちが立坑を削り横幅を広げる。完成後は氷の板を角度をつけて何層も配置する。普段はその氷の板で封じておき、採光と守りを兼ねさせて、敵を襲う時は氷の板を解かして骸骨兵を繰り出す計画である。立坑を広げる際に出た石などは九階を作る時の材料にする。
立坑は迷宮に地下で通じている。一階とニ階はいくつかの部屋で分けられており廊下や室内を骸骨兵が彷徨く。広い空間にして野戦のように冒険者を数で押しつぶせないのは冒険者の数が少ないために骸骨兵同士が命令を忠実に守ろうとした結果、味方同士で絡み合うからだった。
冒険者のレベルが低ければ骸骨兵で体力などを削ることも可能だが、一撃で屠ってくるような者が相手に出てきた場合、魔素の無駄になる。そのため、相手の力量を測った後は罠と謎掛けが時間稼ぎの重点に置かれる。意味のない砂時計や考えている最中に骸骨兵を投入することで侵入者を焦らせてミスを誘うことも出来た。
地下三階も大体似たようなものだが、中央にある部屋でテーブルゲームに勝たなければ四階への扉の鍵が開かない事になっている。氷の魔術師ロスが得意だったテーブルゲームでここ十数年前はルールを知らない冒険者も増えていたが、近年は攻略本なるもののせいであっという間に勝敗が決することも珍しくない。
地下四階は蟻の巣。地下五階は五両の戦車が走り回る楕円形の地下闘技場である。戦車というのは鉄製の荷車を魔物が引くという簡単な形式だが、荷車の上には弓を撃つ骸骨兵、斧槍を振るう骸骨兵、御者の骸骨兵の三体がセットになっている。荷車を引く魔物は大狼、大鹿、大猪、象鳥、巨大馬の五種である。シミュラをシムラと呼んだ阿呆使いチャロの案と亜法が使われている。冒険者が闘技場に入ると、競技が開始されて戦車は闘技場を数周する。どの戦車が一番になるかを当てることができれば次の階に進むことが出来るが、ただ待つだけだと戦車に轢かれるし、骸骨の弓兵も冒険者を狙って矢を射かけてくる。
地下六階は水面に明かりが浮かぶ。水面の下はすぐに床になっているが、人一人が歩くだけの幅しか無い。更にその床は迷路のようになっている。反射して明かりがたくさん見えるので水中にある道を踏み外すことになる仕掛けである。道を踏み外したり水面を激しく叩くとそこから水が凍り始めて冒険者を凍らせる。阿呆使いテリエラによる発案と協力のフロアだった。彼女はシミュラをシーラと読んだ。
地下七階は長い廊下の果に二つの扉が有り、一つは次の階、一つは城の外に繋がっている。入り口の扉で出される謎掛けに二択で答えるのだが、問題が出題されたときに扉に触れた手が制限時間内に正解の扉に触れなければ回答者として扱われない。体力と知識が試されるところなのだが、出題のいくつかは古くなっており答えがその当時の答えであることは注意しておかなければならない。シンラとシミュラを呼ぶルールという亜法使いが居眠りしながら考えた階である。
地下八階は円形闘技場で二十体の骸骨兵(弓兵含む)との集団戦、骸骨騎士との個人戦、魔物になったハイイログマとの戦闘、二つの頭を持つ獅子の魔物との戦闘、氷の巨人二体を引き連れた鋼鉄の鎧を着た巨人の組み合わせがおり、これらすべてに勝てば次の階に進めた。シミュラのことをシミリャと呼ぶ亜法使いの名はサース。戻ってきたサースが亜法使いだった頃考えてシミュラと共に作り上げたのがこの階層だった。ここを制覇したものはまだいない。
新たに誕生した地下九階は田園風景だった。大きな道が一本奥まで伸びていて一番奥には三階建ての屋敷があった。ずっと天井にある氷の結晶たちが立坑から差し込んだ光を反射、増幅させて迷宮の外の明かりと連動し昼夜を分ける。迷宮の端々から滝のように水が落ち小川を作り、緩やかに風がフロアの中を流れる。この階は冒険者たちの望郷の念を誘うことだろう。この階に寄らなくても下の階へ行ける。そうしたのはここが荒らされてしまうことが嫌だったからに他ならない。また魔物を引き入れてしまえば畑が汚れてしまうことも心配だった。
ただ、このことが大きな亀裂を生むことになることをシミュラはまだ知らなかった。
骸骨兵たちが立坑を削り横幅を広げる。完成後は氷の板を角度をつけて何層も配置する。普段はその氷の板で封じておき、採光と守りを兼ねさせて、敵を襲う時は氷の板を解かして骸骨兵を繰り出す計画である。立坑を広げる際に出た石などは九階を作る時の材料にする。
立坑は迷宮に地下で通じている。一階とニ階はいくつかの部屋で分けられており廊下や室内を骸骨兵が彷徨く。広い空間にして野戦のように冒険者を数で押しつぶせないのは冒険者の数が少ないために骸骨兵同士が命令を忠実に守ろうとした結果、味方同士で絡み合うからだった。
冒険者のレベルが低ければ骸骨兵で体力などを削ることも可能だが、一撃で屠ってくるような者が相手に出てきた場合、魔素の無駄になる。そのため、相手の力量を測った後は罠と謎掛けが時間稼ぎの重点に置かれる。意味のない砂時計や考えている最中に骸骨兵を投入することで侵入者を焦らせてミスを誘うことも出来た。
地下三階も大体似たようなものだが、中央にある部屋でテーブルゲームに勝たなければ四階への扉の鍵が開かない事になっている。氷の魔術師ロスが得意だったテーブルゲームでここ十数年前はルールを知らない冒険者も増えていたが、近年は攻略本なるもののせいであっという間に勝敗が決することも珍しくない。
地下四階は蟻の巣。地下五階は五両の戦車が走り回る楕円形の地下闘技場である。戦車というのは鉄製の荷車を魔物が引くという簡単な形式だが、荷車の上には弓を撃つ骸骨兵、斧槍を振るう骸骨兵、御者の骸骨兵の三体がセットになっている。荷車を引く魔物は大狼、大鹿、大猪、象鳥、巨大馬の五種である。シミュラをシムラと呼んだ阿呆使いチャロの案と亜法が使われている。冒険者が闘技場に入ると、競技が開始されて戦車は闘技場を数周する。どの戦車が一番になるかを当てることができれば次の階に進むことが出来るが、ただ待つだけだと戦車に轢かれるし、骸骨の弓兵も冒険者を狙って矢を射かけてくる。
地下六階は水面に明かりが浮かぶ。水面の下はすぐに床になっているが、人一人が歩くだけの幅しか無い。更にその床は迷路のようになっている。反射して明かりがたくさん見えるので水中にある道を踏み外すことになる仕掛けである。道を踏み外したり水面を激しく叩くとそこから水が凍り始めて冒険者を凍らせる。阿呆使いテリエラによる発案と協力のフロアだった。彼女はシミュラをシーラと読んだ。
地下七階は長い廊下の果に二つの扉が有り、一つは次の階、一つは城の外に繋がっている。入り口の扉で出される謎掛けに二択で答えるのだが、問題が出題されたときに扉に触れた手が制限時間内に正解の扉に触れなければ回答者として扱われない。体力と知識が試されるところなのだが、出題のいくつかは古くなっており答えがその当時の答えであることは注意しておかなければならない。シンラとシミュラを呼ぶルールという亜法使いが居眠りしながら考えた階である。
地下八階は円形闘技場で二十体の骸骨兵(弓兵含む)との集団戦、骸骨騎士との個人戦、魔物になったハイイログマとの戦闘、二つの頭を持つ獅子の魔物との戦闘、氷の巨人二体を引き連れた鋼鉄の鎧を着た巨人の組み合わせがおり、これらすべてに勝てば次の階に進めた。シミュラのことをシミリャと呼ぶ亜法使いの名はサース。戻ってきたサースが亜法使いだった頃考えてシミュラと共に作り上げたのがこの階層だった。ここを制覇したものはまだいない。
新たに誕生した地下九階は田園風景だった。大きな道が一本奥まで伸びていて一番奥には三階建ての屋敷があった。ずっと天井にある氷の結晶たちが立坑から差し込んだ光を反射、増幅させて迷宮の外の明かりと連動し昼夜を分ける。迷宮の端々から滝のように水が落ち小川を作り、緩やかに風がフロアの中を流れる。この階は冒険者たちの望郷の念を誘うことだろう。この階に寄らなくても下の階へ行ける。そうしたのはここが荒らされてしまうことが嫌だったからに他ならない。また魔物を引き入れてしまえば畑が汚れてしまうことも心配だった。
ただ、このことが大きな亀裂を生むことになることをシミュラはまだ知らなかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
碓氷唯
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
なんだって? 俺を追放したSS級パーティーが落ちぶれたと思ったら、拾ってくれたパーティーが超有名になったって?
名無し
ファンタジー
「ラウル、追放だ。今すぐ出ていけ!」
「えっ? ちょっと待ってくれ。理由を教えてくれないか?」
「それは貴様が無能だからだ!」
「そ、そんな。俺が無能だなんて。こんなに頑張ってるのに」
「黙れ、とっととここから消えるがいい!」
それは突然の出来事だった。
SSパーティーから総スカンに遭い、追放されてしまった治癒使いのラウル。
そんな彼だったが、とあるパーティーに拾われ、そこで認められることになる。
「治癒魔法でモンスターの群れを殲滅だと!?」
「え、嘘!? こんなものまで回復できるの!?」
「この男を追放したパーティー、いくらなんでも見る目がなさすぎだろう!」
ラウルの神がかった治癒力に驚愕するパーティーの面々。
その凄さに気が付かないのは本人のみなのであった。
「えっ? 俺の治癒魔法が凄いって? おいおい、冗談だろ。こんなの普段から当たり前にやってることなのに……」
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~
りーさん
ファンタジー
ある日、異世界に転生したルイ。
前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。
そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。
「家族といたいからほっといてよ!」
※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる