迷宮の主

大秦頼太

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冬のあほうつかい

冬のあほうつかい 18

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「人間の軍隊を養うべきです」
 サースの提案はこうだった。
 まず近隣から傭兵を募集し軍を編成してそれでノースフロストを攻め落とし、そこにシミュラの軍を駐留させるべきだという。交易を開始して軍の維持費に充てることで活動を支える。例えば周辺にいる動物は食料や毛皮に加工して商品化し、西側の山岳地帯を切り開き木材も輸出などして販売すれば軍隊の駐留費など余裕で賄えるはずである。ノースフロストに駐留軍がいるとなれば氷の城の目の前にいきなり攻め込まれることもないはずであると。
「ここ百年以上、今のやり方で十分撃退も出来た。軍など必要なかろう」
「いいえ、このままではいつか破られます。今年のように動物が減った場合、魔法や魔物だけに頼ることは出来ないのです。人間の兵を使うほうが安全です」
「だが、人を集めればそれだけ災いが増えよう」
 ノースフロストの町は徐々に守りが固くなってきている。行き当たりばったりで作られる町ではなく誰かが設計図を書いてそれを全員で実行しているようだった。外壁は板ではなく大きな石に代わり、川の西側に重厚な壁を築きつつある。川の東側は遊水地となるようにほとんど開発されていない。このペースで行けば洪水に強い冬を越す町が出来てしまうかもしれなかった。
「城や西側から迷宮に入られることはありませんが、東の谷からは可能です。その険しさ故に大人数では進むことは出来ませんが冒険者なら可能です。町が発展して多くの冒険者が迷宮攻略に乗り出せば魔物の稼働も難しくなるはずです」
「町に水を流すべきではなかったな」
「時代の流れです! 遅かれ早かれあの町は発展しました」
「人を集めると言ってもこの北の大地にどれくらいの村がある? そこにどれだけの人がいるだろうか。どこも厳しいのだ」
「それこそあの町で募集しても良いのでは?」
「正気ではないな。敵の町でこちらの味方が集まるものか」
「この城の蓄えの一部を出すことと長には町の支配権を与えることをお許しください。それであれば必ず集まることでしょう」
 返事をしないシミュラにサースはもう一言付け加える。
「我々が大きな力を持ちいずれ国となれば、必ずここに平和が訪れますから」
「……良いでしょう。やってごらんなさい」
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