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冬のあほうつかい
冬のあほうつかい 15
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夏。
アステリア軍が兵力三千ほどで草原に布陣した。足元は重歩兵用の装備になっている。そのため、ぬかるむ大地に足を取られ行軍のスピードは落ちているようだった。前衛は大型の盾を並べて立ち、二列目と三列目は長い槍を空に向ける。四列目は大型の盾を体の脇に構えていた。これは盾、槍、槍の組み合わせをセットとするアステリア軍の編成である。九十人が横に並びこの組み合わせで九列で一塊となる。歩兵は中央、左翼、右翼と三つの塊からなりおよそ二千四百。その後ろに弓兵が百八十ずつ付き従う。後方に指揮官たちがいておよそ三千の兵力となる。
歩兵たちはまず敵の突進に備える。最前列が盾を正面に構えそれを支えると、二列目は最前列の兵の右肩より長い槍を前方へ突き出す。三列目が二列目の左肩側に長い槍を出して空に向かって構える。その際、右腕を兜の額に充てるようにする。そこに四列目の盾がスライドしてきて最前列の盾のフチの上に四列目の盾のフチが乗り、一列目から四列目の頭上を守る。五列目は四列目の右肩側で空に長い槍を向ける。六列目以降は三列目からと同じになる。
トナカイの突進でも正面からであれば受け止められるくらいの耐久性と柔軟性を持っている。グリズリーの場合は盾が剥がされる事があるので弓兵で先に仕留める必要がある。とは言っても長弓で一撃で仕留めることは難しい。指揮官クラスが持っているクロスボウであれば一撃の威力が高いので心臓を射抜けばそれが可能となる。狙いをつけて放つ必要があるので獲物の足を止める必要があるので陣形は崩されることを覚悟しなければいけない。グリズリーの数はニ十頭もいれば多い方である。それよりもトナカイのほうが危険かもしれない。正面のグリズリーに気を取られていると横からトナカイ百頭の突進が来る。そこで弓兵を出すのだが、オオカミの集団に背後を取られて矢を放てない事が多い。
首尾よく(もしくは運良く)動物の猛攻を防いで更に先へ進むと次は氷の矢と槍が飛んでくるわけである。更に今年は新しい魔法「スプリングキラー」が現れた。誰が名付けたのか知らないが南方の庭師が考案したスプリンクラーという散水機を氷の女王が使う足元で回る氷の花となぞらえて呼んだそうだ。
足元はぬかるむ上に氷の刃から足を守らなくては進むことも出来ない。進軍が緩めば矢と槍の餌食であるし、急ぐためには軽装備にしなければならないがそれでは多くの者が足を負傷し攻城戦どころではなくなる。ここ何十年も城壁にたどり着いた軍隊はいない。スプリングキラーのせいで更に遠くなった。
春先の雪解け水の洪水のせいで草原のぬかるみも未だに酷かった。
夏。
アステリア軍が兵力三千ほどで草原に布陣した。足元は重歩兵用の装備になっている。そのため、ぬかるむ大地に足を取られ行軍のスピードは落ちているようだった。前衛は大型の盾を並べて立ち、二列目と三列目は長い槍を空に向ける。四列目は大型の盾を体の脇に構えていた。これは盾、槍、槍の組み合わせをセットとするアステリア軍の編成である。九十人が横に並びこの組み合わせで九列で一塊となる。歩兵は中央、左翼、右翼と三つの塊からなりおよそ二千四百。その後ろに弓兵が百八十ずつ付き従う。後方に指揮官たちがいておよそ三千の兵力となる。
歩兵たちはまず敵の突進に備える。最前列が盾を正面に構えそれを支えると、二列目は最前列の兵の右肩より長い槍を前方へ突き出す。三列目が二列目の左肩側に長い槍を出して空に向かって構える。その際、右腕を兜の額に充てるようにする。そこに四列目の盾がスライドしてきて最前列の盾のフチの上に四列目の盾のフチが乗り、一列目から四列目の頭上を守る。五列目は四列目の右肩側で空に長い槍を向ける。六列目以降は三列目からと同じになる。
トナカイの突進でも正面からであれば受け止められるくらいの耐久性と柔軟性を持っている。グリズリーの場合は盾が剥がされる事があるので弓兵で先に仕留める必要がある。とは言っても長弓で一撃で仕留めることは難しい。指揮官クラスが持っているクロスボウであれば一撃の威力が高いので心臓を射抜けばそれが可能となる。狙いをつけて放つ必要があるので獲物の足を止める必要があるので陣形は崩されることを覚悟しなければいけない。グリズリーの数はニ十頭もいれば多い方である。それよりもトナカイのほうが危険かもしれない。正面のグリズリーに気を取られていると横からトナカイ百頭の突進が来る。そこで弓兵を出すのだが、オオカミの集団に背後を取られて矢を放てない事が多い。
首尾よく(もしくは運良く)動物の猛攻を防いで更に先へ進むと次は氷の矢と槍が飛んでくるわけである。更に今年は新しい魔法「スプリングキラー」が現れた。誰が名付けたのか知らないが南方の庭師が考案したスプリンクラーという散水機を氷の女王が使う足元で回る氷の花となぞらえて呼んだそうだ。
足元はぬかるむ上に氷の刃から足を守らなくては進むことも出来ない。進軍が緩めば矢と槍の餌食であるし、急ぐためには軽装備にしなければならないがそれでは多くの者が足を負傷し攻城戦どころではなくなる。ここ何十年も城壁にたどり着いた軍隊はいない。スプリングキラーのせいで更に遠くなった。
春先の雪解け水の洪水のせいで草原のぬかるみも未だに酷かった。
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