迷宮の主

大秦頼太

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冬のあほうつかい

冬のあほうつかい 13

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 シミュラが寝込んでしまうと、カペラもずっと側にいるわけにも行かなかった。他の子供たちもカペラに接触をしようとちょっかいを出してくる。みんなカペラに亜法を使わせようとするのだ。
「お菓子出せよ。簡単だろ」
「ケチケチすんなよ」
「シミュラ様に言いつけやがって、この意気地なし!」
 カペラの後を付け回し、つねったり突き飛ばしたりして言う事を聞かせようとする。
「やめないか」
 子供たちを止めたのはサースだった。文句を言いかける子供たちにサースは言った。
「僕も亜法使いだったんだけど、君たちには罰が必要かな?」
「おい、行こうぜ」
「うん」
「早く出ていけばいいのに」
 子供たちが行ってしまうとサースはカペラの頭を撫でた。
「外の空気でも吸おうか」
 カペラは黙って付いていく。無言のまま進み続け城壁の二段目に出る。城壁に寄りかかって座り氷の城の上部を見る。カペラもサースのマネをして座る。
「僕のときも他の子達が亜法を使わせようとしたなぁ」
「使ったの?」
「使ったよ。お菓子におもちゃにみんな大体おんなじだったね」
「そっかぁ」
 ガッカリするカペラ。
「だからそれが嫌いになるようにしてやったんだ」
 カペラは驚いた顔をしてサースを見る。
「そんなことしていじめられなかったの?」
「誰が亜法使いをいじめるんだい? どんなことでもできるのに」
「そうか。そうだよね」
「もしそれでもいじめてくる奴がいたらそいつが一番怖がっているものを背中にくっつけてやれば良いのさ」
「うん」
 カペラは笑った。サースも笑った。
「どうしてあほうつかいをやめちゃったの?」
「やめたくなんてなかった。だけど、僕はずっと早く大人になりたかったんだ。いつも早く大人になりたいってね。でも、それが間違いだったって思うんだ」
「どうして?」
「なんでか知らないんだけど大人になると亜法使いではいられなくなるんだ。そうなるとね亜法使いじゃない僕にはここは居心地が悪かったんだ。だから旅に出たんだよ」
「亜法が使えなくなるってどんな感じ?」
 カペラは不安そうな顔をした。
「不安だった。シミュラ様の役に立てなくなるってことだからね」
 サースの言葉を聞いたカペラは今にも泣き出しそうだった。サースは下唇を噛んだ。
「そんなの嫌だ! ずっとシュミラさまを助けたい!」
「僕だってそう思っていたさ。でも、時間が許してくれなかった」
「どうしたらいいのかな? ずっと亜法使いでいたい!」
 サースは少し考えてカペラに教える。
「だったら、大人になりたくないって願い続けることだね。そうしたらずっと子供のままで亜法使いでいられるよ」
「お兄ちゃんありがと」
 カペラの笑顔を受けてサースも笑顔になった。
「どういたしまして」
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