90 / 96
迷宮の主
迷宮の主 47
しおりを挟む
47
細い道はまっすぐ遠くへ伸びている。下から吹き上がってくる生温い風がシビトの持った骨の先端の黒い炎を揺らす。シビトの腰には太い骨が二本くくりつけられていた。
「見ろ」
シビトが声と左手を上げる。ウイカとナサインは立ち止まりシビトの隙間から前方を覗き込む。
道は真っ直ぐ、右と左の三つに分かれていた。シビトは三つに分かれた道の中央に立ちナサインとウイカを振り返る。
「さあ、どっちに行く」
ナサインは左右の道を見比べる。
「あの親父の考えそうなことだけどよ。たぶん、全部途中で切れてるな」
「まさか」
「ま、そういう奴だな」
ナサインはシビトを指差す。
「真っ直ぐに行くぞ」
「言うと思った」
再びシビトが歩き出すと、ナサインが何気なく後ろを振り返る。
「うわ」
ナサインたちを追いかけてくる骸骨の姿があった。灰色の長衣に身を包み左右に大きく体を揺らしながら近づいてくる。
「シビト!」
ナサインはシビトに声をかけるが、すぐにシビトの返答が返って来る。
「こっちもだ」
足元に左手の炎を置くと、ナサインは両手を合わせ左右に開き黒い棒を手にする。弔慰の骸骨は口に赤い宝石のようなものをくわえていた。
ナサインと顔を合わせると骸骨は首をかしげた。そして、顔を元に戻すと両手を振り回しながら不安定な足場を気にすることも無く踊り始める。
「まずい!」
ナサインは足元の黒い炎を蹴り上げた。骸骨が口を開く。
「『火球(ファイアボール)』」
前に突き出された骸骨の手から生まれた人の頭ほどの大きさの火の玉が黒い炎とぶつかり溝の中に落ちていく。骸骨はまた首をかしげた。
ナサインは黒い棒を振り回し、骸骨の足元を払う。しかし、骸骨はそれをするりとかわし再び踊り始める。ナサインは棒を右手に持ち、左手で黒い炎を骸骨に向けて撃つ。
「『火球(ファイアボール)』」
骸骨の放つ火の玉とナサインの放つ黒い炎は再び共に溝の中に消えていく。
「ナサイン!」
ウイカの叫びが聞こえた。振り上げた杖で、骸骨を上から打ち据える。空気に膨らんだ布を叩くような感触に思わずイライラが募る。
「取り込み中だ!」
「あっち側にも!」
振り返れば骸骨の踊り子が左右の道からもやってくるのが見えた。
「冗談だろ」
ナサインに左手に黒い炎を出し、骸骨の踊りを見極める。その足を後からつかむのは、先ほど殴った骸骨の手だった。
「気持ちが悪いんだよ!」
右手に持った黒い杖の先が骸骨の顎を強打する。すると、くわえていた赤い宝石が外れ溝の中に転がっていく。途端に骸骨は動きを止めた。
「何?」
「ナサイン!」
ウイカの声に顔を上げると、右手側にいる骸骨に向かって黒い炎を投げつける。黒い炎は骸骨が打ち出した火球に吸い込まれるように飛んでいくと溝の中に吸い込まれるように落ちていく。
「シビト! 口の中の赤い宝石を狙え!」
「ナサイン!」
今度は左手側にいる骸骨が踊りを踊っている。左手に炎を出して骸骨の前に躍り出る。放たれる火球に向かって左手を突き出し、黒炎が火を吸った瞬間に黒い炎を投げ捨てる。
「後ろ!」
「クソ! 忙しすぎるんだよ!」
再び振り返り左手に黒い炎を出す。
「またこっちも!」
ナサインは右手に握る杖を上方に捨てると、右手にも黒い炎を発現させた。打ち出される骸骨の火の玉に合わせて黒い炎をぶつける。
「シビト、まだか?」
「すまん。こっちも手一杯だ」
「ナサイン! こっち!」
ウイカが手に何かを握って左手側の骸骨に向かって走り出した。黒い炎を両手にナサインは火球の処理に当たる。ウイカに向かって放たれる火球に黒い炎をあわせる。抱き合って落ちる二色の炎に照らされて、ウイカの振るった骨が骸骨の赤い宝石を跳ね飛ばす。骸骨は力なく床に倒れ、溝の内へ滑り落ちていく。
「助かった!」
ナサインは右手側の火の玉を打ち落とし、そこにウイカが骨を棍棒のように使い宝石を落とす。
「こっちも終わった」
ナサインの前に現れたシビトの両腕から煙が上がっていた。
「嫌な野郎だ」
「同感」
「ほんとね」
三人は顔を見合わせて笑った。
細い道はまっすぐ遠くへ伸びている。下から吹き上がってくる生温い風がシビトの持った骨の先端の黒い炎を揺らす。シビトの腰には太い骨が二本くくりつけられていた。
「見ろ」
シビトが声と左手を上げる。ウイカとナサインは立ち止まりシビトの隙間から前方を覗き込む。
道は真っ直ぐ、右と左の三つに分かれていた。シビトは三つに分かれた道の中央に立ちナサインとウイカを振り返る。
「さあ、どっちに行く」
ナサインは左右の道を見比べる。
「あの親父の考えそうなことだけどよ。たぶん、全部途中で切れてるな」
「まさか」
「ま、そういう奴だな」
ナサインはシビトを指差す。
「真っ直ぐに行くぞ」
「言うと思った」
再びシビトが歩き出すと、ナサインが何気なく後ろを振り返る。
「うわ」
ナサインたちを追いかけてくる骸骨の姿があった。灰色の長衣に身を包み左右に大きく体を揺らしながら近づいてくる。
「シビト!」
ナサインはシビトに声をかけるが、すぐにシビトの返答が返って来る。
「こっちもだ」
足元に左手の炎を置くと、ナサインは両手を合わせ左右に開き黒い棒を手にする。弔慰の骸骨は口に赤い宝石のようなものをくわえていた。
ナサインと顔を合わせると骸骨は首をかしげた。そして、顔を元に戻すと両手を振り回しながら不安定な足場を気にすることも無く踊り始める。
「まずい!」
ナサインは足元の黒い炎を蹴り上げた。骸骨が口を開く。
「『火球(ファイアボール)』」
前に突き出された骸骨の手から生まれた人の頭ほどの大きさの火の玉が黒い炎とぶつかり溝の中に落ちていく。骸骨はまた首をかしげた。
ナサインは黒い棒を振り回し、骸骨の足元を払う。しかし、骸骨はそれをするりとかわし再び踊り始める。ナサインは棒を右手に持ち、左手で黒い炎を骸骨に向けて撃つ。
「『火球(ファイアボール)』」
骸骨の放つ火の玉とナサインの放つ黒い炎は再び共に溝の中に消えていく。
「ナサイン!」
ウイカの叫びが聞こえた。振り上げた杖で、骸骨を上から打ち据える。空気に膨らんだ布を叩くような感触に思わずイライラが募る。
「取り込み中だ!」
「あっち側にも!」
振り返れば骸骨の踊り子が左右の道からもやってくるのが見えた。
「冗談だろ」
ナサインに左手に黒い炎を出し、骸骨の踊りを見極める。その足を後からつかむのは、先ほど殴った骸骨の手だった。
「気持ちが悪いんだよ!」
右手に持った黒い杖の先が骸骨の顎を強打する。すると、くわえていた赤い宝石が外れ溝の中に転がっていく。途端に骸骨は動きを止めた。
「何?」
「ナサイン!」
ウイカの声に顔を上げると、右手側にいる骸骨に向かって黒い炎を投げつける。黒い炎は骸骨が打ち出した火球に吸い込まれるように飛んでいくと溝の中に吸い込まれるように落ちていく。
「シビト! 口の中の赤い宝石を狙え!」
「ナサイン!」
今度は左手側にいる骸骨が踊りを踊っている。左手に炎を出して骸骨の前に躍り出る。放たれる火球に向かって左手を突き出し、黒炎が火を吸った瞬間に黒い炎を投げ捨てる。
「後ろ!」
「クソ! 忙しすぎるんだよ!」
再び振り返り左手に黒い炎を出す。
「またこっちも!」
ナサインは右手に握る杖を上方に捨てると、右手にも黒い炎を発現させた。打ち出される骸骨の火の玉に合わせて黒い炎をぶつける。
「シビト、まだか?」
「すまん。こっちも手一杯だ」
「ナサイン! こっち!」
ウイカが手に何かを握って左手側の骸骨に向かって走り出した。黒い炎を両手にナサインは火球の処理に当たる。ウイカに向かって放たれる火球に黒い炎をあわせる。抱き合って落ちる二色の炎に照らされて、ウイカの振るった骨が骸骨の赤い宝石を跳ね飛ばす。骸骨は力なく床に倒れ、溝の内へ滑り落ちていく。
「助かった!」
ナサインは右手側の火の玉を打ち落とし、そこにウイカが骨を棍棒のように使い宝石を落とす。
「こっちも終わった」
ナサインの前に現れたシビトの両腕から煙が上がっていた。
「嫌な野郎だ」
「同感」
「ほんとね」
三人は顔を見合わせて笑った。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる