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迷宮の主
迷宮の主 10
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10
ナサインは開けた地面に木の枝で円を描く。外側と内側に模様を描くと、枝を投げ捨て円の中心に立った。
「何をすんだ?」
ネジフがナサインを見ると、ナサインもネジフをにらむ。苦笑いするネジフの後からシビトが声をかける。
「邪魔すると生贄に使われるぞ」
「まじかよ」
ネジフは目をギョロ付かせてシビト見る。シビトはにやりと笑う。
「嘘だ」
「てめえ、この野郎」
シビトはネジフの肩を叩いてテント張りの手伝いに戻っていった。
ネジフも気になりながらも見張りに戻る。
ナサインは両手を広げる。手のひらを地面に向けて深く息を吸い込むと、くぐもった低い声と耳の奥に残る高い声を合わせて出し始める。
「何?」
ウイカは耳を押さえて振り返る。円の中で立つナサインの手に黒い煙のようなものが吸い込まれて行くのが見えた。
「何か出てきたぞ! おい、どうすんだよ」
ネジフが叫び声を上げた。ウイカが振り返ると古城の入り口から肉片のこびりついた骸骨たちがおぼつかない足取りで歩いてやってくる。手には錆びてボロボロになった幅広の剣が握られていた。
「臭い!」
モンテールがその場から離れていく。ネジフも片手で鼻をつまみながら戦斧を構える。
「なんだよ。お前ら、やんのかよ」
戦斧を振り上げると骸骨たちが一斉にネジフを見る。
「気持ちが悪いんだよ」
ネジフのその言葉に抗議するかのように三体の骸骨が手に持った武器をネジフにめがけて振り下ろしてくる。ネジフは一本、二本と幅広の剣を避け三本目を戦斧で受け止める。
横からシビトが突進して骸骨の一体の頭部に拳を打ち込む。骸骨は一瞬よろめいただけで、すぐに体勢を立て直しシビトに剣を振り回す。大きな身体を器用に使ってシビトはそれを避けるのだが、その顔には不満が浮かんでいた。
「こんなに弱いのか」
「ふざけんなよ」
ネジフは二体の骸骨を相手に戦斧を振り回して距離を保っている。シビトは骸骨に追われながら逃げ回っていた。
「どうすればいいの?」
ウイカはナサインの側に駆け寄る。ナサインはずっと両手を広げて音を発しているだけだった。
「役立たず!」
ウイカは言葉を吐き捨てると、骸骨に向かって走り出す。
「おじさん!」
ウイカはシビトを追いかける骸骨の脚を蹴り飛ばし転倒させる。
「ふざけんな。普通はこっちを先に助けるだろうが」
ネジフが悲鳴に似た声を上げる。シビトはウイカを抱えて倒れてもがく骸骨から離れていく。
「坊主を連れて来い。それで逆転だ」
「あっちで戦ってるよ」
ウイカはネジフを指差す。ネジフは戦斧を振り回しているだけにしか見えない。片手で振り回している分、威力も無く当たっても骨を削ることも出来ていなかった。
「両手を使え!」
シビトの声にネジフは泣き声で応える。
「こいつらくせえんだよ! 鼻が取れるよマジで」
シビトはウイカをおろすと、ネジフに向かって走り出す。
「おじさん!」
「もう一人の坊主だ。つれて来い」
ウイカは小さくうなづくと辺りを見回す。林の中にはモンテールの姿は見えない。
「もう!」
ナサインは開けた地面に木の枝で円を描く。外側と内側に模様を描くと、枝を投げ捨て円の中心に立った。
「何をすんだ?」
ネジフがナサインを見ると、ナサインもネジフをにらむ。苦笑いするネジフの後からシビトが声をかける。
「邪魔すると生贄に使われるぞ」
「まじかよ」
ネジフは目をギョロ付かせてシビト見る。シビトはにやりと笑う。
「嘘だ」
「てめえ、この野郎」
シビトはネジフの肩を叩いてテント張りの手伝いに戻っていった。
ネジフも気になりながらも見張りに戻る。
ナサインは両手を広げる。手のひらを地面に向けて深く息を吸い込むと、くぐもった低い声と耳の奥に残る高い声を合わせて出し始める。
「何?」
ウイカは耳を押さえて振り返る。円の中で立つナサインの手に黒い煙のようなものが吸い込まれて行くのが見えた。
「何か出てきたぞ! おい、どうすんだよ」
ネジフが叫び声を上げた。ウイカが振り返ると古城の入り口から肉片のこびりついた骸骨たちがおぼつかない足取りで歩いてやってくる。手には錆びてボロボロになった幅広の剣が握られていた。
「臭い!」
モンテールがその場から離れていく。ネジフも片手で鼻をつまみながら戦斧を構える。
「なんだよ。お前ら、やんのかよ」
戦斧を振り上げると骸骨たちが一斉にネジフを見る。
「気持ちが悪いんだよ」
ネジフのその言葉に抗議するかのように三体の骸骨が手に持った武器をネジフにめがけて振り下ろしてくる。ネジフは一本、二本と幅広の剣を避け三本目を戦斧で受け止める。
横からシビトが突進して骸骨の一体の頭部に拳を打ち込む。骸骨は一瞬よろめいただけで、すぐに体勢を立て直しシビトに剣を振り回す。大きな身体を器用に使ってシビトはそれを避けるのだが、その顔には不満が浮かんでいた。
「こんなに弱いのか」
「ふざけんなよ」
ネジフは二体の骸骨を相手に戦斧を振り回して距離を保っている。シビトは骸骨に追われながら逃げ回っていた。
「どうすればいいの?」
ウイカはナサインの側に駆け寄る。ナサインはずっと両手を広げて音を発しているだけだった。
「役立たず!」
ウイカは言葉を吐き捨てると、骸骨に向かって走り出す。
「おじさん!」
ウイカはシビトを追いかける骸骨の脚を蹴り飛ばし転倒させる。
「ふざけんな。普通はこっちを先に助けるだろうが」
ネジフが悲鳴に似た声を上げる。シビトはウイカを抱えて倒れてもがく骸骨から離れていく。
「坊主を連れて来い。それで逆転だ」
「あっちで戦ってるよ」
ウイカはネジフを指差す。ネジフは戦斧を振り回しているだけにしか見えない。片手で振り回している分、威力も無く当たっても骨を削ることも出来ていなかった。
「両手を使え!」
シビトの声にネジフは泣き声で応える。
「こいつらくせえんだよ! 鼻が取れるよマジで」
シビトはウイカをおろすと、ネジフに向かって走り出す。
「おじさん!」
「もう一人の坊主だ。つれて来い」
ウイカは小さくうなづくと辺りを見回す。林の中にはモンテールの姿は見えない。
「もう!」
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