立方世界 呪われた子

大秦頼太

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呪われた子 15

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 セヴルたちの姿は、街の市場の中にあった。服屋の前に立ち止まると、ものめずらしげに手にとって見る。それを呆れた様子でサアラが見ていた。
「それで? どうするつもり? あたしたちを出し抜いて逃亡する気かしら?」
「知り合いに会いに行く」
 セヴルと同じように服を選ぶガリウス。
「これ、いいんじゃない? 町に知り合いがいるの?」
「いや、草原にいるんだ」
 セヴルは、ガリウスからシャツを受け取る。体にシャツを当ててみる。
「ちょっと、あたしたちを蟲のエサにしようって言うわけ?」
 セヴルは、サアラを迷惑そうに見る。それから、ガリウスにシャツを渡す。
「ガリウスだっけ? これにするよ。それとこいつ、本当に一緒に来るの?」
「支払いしてくるから、ちょっと待ってて」
 ガリウスは、軽く笑って店員の方へ向かっていく。
「ちょっと、こいつって何よ!」
「草原では、でかい声のおしゃべりな奴ほど早く蟲に食われるんだよ」
 通り中に響く声に何事かと通行人が足を止める。
「あたしには輪があるから大丈夫よ」
「襲われても助けないからな」
 呆れ顔のセヴルにサアラは舌を出して答える。
「結構よ」
「それでどうするんだい?」
 セヴルは振り返ると、ガリウスは支払いを終えたようだった。ガリウスからシャツを受け取り、汚れた服とシャツを交換する。
「草原を越えるのに必要なものをそろえてから町を出よう」
「どれくらい歩くのよ?」
「三日くらいかな」
 セヴルとガリウスの後ろからサアラが割って入る。
「馬車でも借りたら?」
「それでも二日は歩きだよ」
「ふざけないでよね」
 ため息をつくと、ガリウスの肩を叩いて路地の方へ出た。
「じゃあ、食べ物と水、それと口をふさぐマスクになりそうな布を探して」
「無視するな!」
 セヴルはサアラを振り返りうんざりしながら口を開く。
「嫌なら残れよ」
「……嫌な奴」
「どっちが」
 二人の様子を見てガリウスはとても楽しそうだった。
「仲良くなれそうでよかったよ」
「俺もガリウスとは上手くやっていけそうな気がする」
「こいつは誰にでも八方美人だからね」
「お前とは大違いだ」
「お前とは何よ!」
 争いながら進む二人を町行く人は左右に避けながら道を開ける。その後ろから、ガリウスがニコニコしながらついていく。
 いつまでも終わらない二人の口論が続くと、人だかりが出来て店の中が空いてしまう。ガリウスは、スムーズに買い物をすることが出来て、非常に満足そうだった。
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