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第十七場
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●第十七場● お爺さんの家2 昼
テルマがうろうろしている。
お爺さんとマーゴが帰ってくると奪い取るようにマーゴをお爺さんから引き離す。
ビッキーの白い手はマーゴが持っている。
テルマ お父さんとはもう金輪際縁を切るわ。もう2度と連絡しないから。
マーゴ ママ、ビッキーが助けてくれたの。
テルマ 何よこんなもの! (マーゴの手から奪い取り、お爺さんに向かって投げつける)
帰るわよ。
テルマ、マーゴを連れて立ち去る。
お爺さんはビッキーの白い手を拾い上げる。そして、部屋の奥に座り込む。
そのまま夜になる。(時計の音と明かりで表現を)
木の精がやって来る。
木の精 こんばんは。こんばんは。
お爺さん 誰だい?
木の精 木の精です。あ、気のせいじゃないです。木の精霊です。
お爺さん 木の精霊だって? (白い手を見る)
木の精 はい。お話をさせてもらってもいいでしょうか?
お爺さん、扉の方へ迎えに行く。お爺さんは木の精がビッキーだと思い込んでいる。
お爺さん もしかして君はビッキーかい? 孫を助けてくれたんだね、ありがとう。
木の精 (察する)ああ、妹はもういないんですね。
お爺さん 妹だって?
木の精 僕は妹を探しにここに来たんです。妹はここでは何になったんですか? 家具
ですか? 窓枠ですか? 柱ですか? 梁ですか?
お爺さん ビッキーは、人形になったんだ。今は燃え残った手だけになってしまった。
木の精 そうですか。
お爺さん すまないことをした。申し訳なかった。
木の精 それを貰っても良いですか? (燃え残った手だよ)
お爺さん ああ。そうだな。許しておくれ。
木の精 では、これで。
立ち去ろうとする木の精をお爺さんは呼び止める。
お爺さん あ、待っておくれ。
木の精は振り返る。
お爺さん どこに行くんだい?
木の精 湖畔の淑女様の所へ。
お爺さん それは遠いのかい?
木の精 この小瓶の中の水を器に注げば湖畔の淑女様にいつでも会えます。
お爺さん 会ってどうするんだい?
木の精 妹の魂を見せて、妹が幸せだったのか不幸だったのかを尋ねます。
お爺さん 尋ねてどうするんだい?
木の精 それだけです。
お爺さん わしにも会わせて欲しい。ビッキーの魂と話が出来るのなら一言だけでも、お
礼を言わせて貰いたい。
木の精 では、なにか器を。
お爺さん食器(そこそこ深いやつ)を持ってくる。
木の精、器に小瓶の「朝露の雫」を注ぎ入れる。
湖畔の淑女が現れる。歩いてくるのはちょっとなぁと思うので、暗転配置でもいい
し、ピンスポかLEDの強いやつで湖畔の淑女だけ追わせるのもありか。
湖畔の淑女の前に跪くお爺さんと木の精。
湖畔の淑女は木の精からビッキーの白い手を受け取る。
淑女 木の精や、長い旅であったな。それではこの子の魂に聞いてみよう。
ビッキーの白い手に問いかける。
湖畔の淑女がビッキーの手を掲げると透き通ったキレイな音がする。
淑女 どうやら、幸せを手に入れたようだ。木の精霊よ、良かったね。お前の妹は幸
福だったようだ。何か言うことは無いか?
木の精 ありません。
淑女 そうか。人間よ。お前は?
お爺さん は、はい。あります。ございます。
淑女 そう硬くならずとも良い。
お爺さん はい。ビッキーに孫を助けていただいたようなので、一言お礼を言わせて欲し
いのです。
湖畔の淑女、頷く。
お爺さん ありがとうビッキー。本当にありがとう。
淑女 人間。一つ願いを聞いてくれまいか? 私の泉はとても濁りやすいのだ。泉を
守る者がいれば私も嬉しい。妖精に任せていたのだが、あれは役目を投げ出して
世界中でいたずらをしていると言う。困ったものだ。どうだ、やってくれないか?
無論、そなたが天寿を全うし、その魂が自由になってからで良い。ただでとも言
わぬが。
お爺さん は、はい。私などでよろしければ。
淑女 では、決まったな。もうじき南風が吹こう。それに乗って私は泉に戻ろう。ま
た会おう人間よ。
お爺さん は、はい。
暗転。
テルマがうろうろしている。
お爺さんとマーゴが帰ってくると奪い取るようにマーゴをお爺さんから引き離す。
ビッキーの白い手はマーゴが持っている。
テルマ お父さんとはもう金輪際縁を切るわ。もう2度と連絡しないから。
マーゴ ママ、ビッキーが助けてくれたの。
テルマ 何よこんなもの! (マーゴの手から奪い取り、お爺さんに向かって投げつける)
帰るわよ。
テルマ、マーゴを連れて立ち去る。
お爺さんはビッキーの白い手を拾い上げる。そして、部屋の奥に座り込む。
そのまま夜になる。(時計の音と明かりで表現を)
木の精がやって来る。
木の精 こんばんは。こんばんは。
お爺さん 誰だい?
木の精 木の精です。あ、気のせいじゃないです。木の精霊です。
お爺さん 木の精霊だって? (白い手を見る)
木の精 はい。お話をさせてもらってもいいでしょうか?
お爺さん、扉の方へ迎えに行く。お爺さんは木の精がビッキーだと思い込んでいる。
お爺さん もしかして君はビッキーかい? 孫を助けてくれたんだね、ありがとう。
木の精 (察する)ああ、妹はもういないんですね。
お爺さん 妹だって?
木の精 僕は妹を探しにここに来たんです。妹はここでは何になったんですか? 家具
ですか? 窓枠ですか? 柱ですか? 梁ですか?
お爺さん ビッキーは、人形になったんだ。今は燃え残った手だけになってしまった。
木の精 そうですか。
お爺さん すまないことをした。申し訳なかった。
木の精 それを貰っても良いですか? (燃え残った手だよ)
お爺さん ああ。そうだな。許しておくれ。
木の精 では、これで。
立ち去ろうとする木の精をお爺さんは呼び止める。
お爺さん あ、待っておくれ。
木の精は振り返る。
お爺さん どこに行くんだい?
木の精 湖畔の淑女様の所へ。
お爺さん それは遠いのかい?
木の精 この小瓶の中の水を器に注げば湖畔の淑女様にいつでも会えます。
お爺さん 会ってどうするんだい?
木の精 妹の魂を見せて、妹が幸せだったのか不幸だったのかを尋ねます。
お爺さん 尋ねてどうするんだい?
木の精 それだけです。
お爺さん わしにも会わせて欲しい。ビッキーの魂と話が出来るのなら一言だけでも、お
礼を言わせて貰いたい。
木の精 では、なにか器を。
お爺さん食器(そこそこ深いやつ)を持ってくる。
木の精、器に小瓶の「朝露の雫」を注ぎ入れる。
湖畔の淑女が現れる。歩いてくるのはちょっとなぁと思うので、暗転配置でもいい
し、ピンスポかLEDの強いやつで湖畔の淑女だけ追わせるのもありか。
湖畔の淑女の前に跪くお爺さんと木の精。
湖畔の淑女は木の精からビッキーの白い手を受け取る。
淑女 木の精や、長い旅であったな。それではこの子の魂に聞いてみよう。
ビッキーの白い手に問いかける。
湖畔の淑女がビッキーの手を掲げると透き通ったキレイな音がする。
淑女 どうやら、幸せを手に入れたようだ。木の精霊よ、良かったね。お前の妹は幸
福だったようだ。何か言うことは無いか?
木の精 ありません。
淑女 そうか。人間よ。お前は?
お爺さん は、はい。あります。ございます。
淑女 そう硬くならずとも良い。
お爺さん はい。ビッキーに孫を助けていただいたようなので、一言お礼を言わせて欲し
いのです。
湖畔の淑女、頷く。
お爺さん ありがとうビッキー。本当にありがとう。
淑女 人間。一つ願いを聞いてくれまいか? 私の泉はとても濁りやすいのだ。泉を
守る者がいれば私も嬉しい。妖精に任せていたのだが、あれは役目を投げ出して
世界中でいたずらをしていると言う。困ったものだ。どうだ、やってくれないか?
無論、そなたが天寿を全うし、その魂が自由になってからで良い。ただでとも言
わぬが。
お爺さん は、はい。私などでよろしければ。
淑女 では、決まったな。もうじき南風が吹こう。それに乗って私は泉に戻ろう。ま
た会おう人間よ。
お爺さん は、はい。
暗転。
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