34 / 42
ショートバージョン
第十場
しおりを挟む
●第十場● 村の風景3 真夜中
悪魔がやって来る。
悪魔 妖精の奴め、どうやらこんな所に隠れているらしいな。もう逃げるのをやめた
みたいだな。とうとう観念をしたのかな? そりゃあそうだ。この俺様からいつ
までも逃げられると思っていたら大間違いなんだからな。フヒヒヒヒ。
ミミズクが飛んでくる。
悪魔 どうだ? いたか?
ミミズク 見つけたよ。
悪魔 よしよし、どこだ。案内しろ。
ミミズク あそこに見える家だよ。妖精はあそこに隠れているみたいだ。
悪魔 お前は外を見張ってくれ!
ミミズク 誰か来るの?
悪魔 そうじゃない。妖精が家の中から逃げ出したら捕まえるんだよ。
ミミズク わかった。
悪魔とミミズク、駆け去る。
暗転。
※お爺さんの家1 夜
すぐに家の中。
舞台後方の扉から悪魔が忍び込んでくる。
悪魔 憎い妖精め。どこにいる? 隠れても無駄だぞ。フヒヒヒヒヒ。
♪でーてこいこい でーてこいこい
でーてこいこい でてこいこい
でーてこいこい でてこいこい
と適当に踊っているとマーゴが起きて来て一緒の踊る。寝ぼけている感じ。
マーゴ だあれ?
悪魔 俺様は悪魔だ。お前こそだあれ?
マーゴ 私はマーゴよ。この家のお爺ちゃんの孫よ。
悪魔 孫のマーゴだと? ふざけた名前だなぁ。大体、みんなそう思ってるんだ。お
前は妖精じゃないんだな?
マーゴ そうよ。
悪魔 あっそう。子どもが起きてる時間じゃないよ。寝なさーい。
マーゴ はーい。
マーゴが去っていく。
悪魔 残念! 聞き分けの悪い子だったら連れて帰って地獄の番犬の餌にしても良か
ったのに。逆に聞き分けのいい子なんか食わせたら、地獄の番犬のお腹が壊れち
まう。さて、次だ。
ミミズクが入り口から顔を覗かせる。
ミミズク ねえ。
びっくりする悪魔。
悪魔 外で見張ってろって言っただろ。悪魔をびびらせるんじゃないよ。まったく。
ミミズク 見張ってるだけでいいの?
悪魔 いいの!
ミミズク顔を引っ込める。
悪魔 さて、次こそあの小憎らしい妖精をおびき寄せてやる。
♪でーてこいこい でーてこいこい
でーてこいこい でてこいこい
でーてこいこい でてこいこい
と適当に踊っているとビッキーが出て来て一緒に踊る。やはり寝ぼけている感じ。
ビッキー 誰かいるの?
悪魔 俺様は悪魔だ。お前こそ誰だ?
ビッキー 私はビッキーよ。人形で、妖精さんのおかげで動けるようになったのよ。
悪魔 妖精だと? ついに見つけたぞ! 妖精め!
ビッキー 私はビッキーよ。妖精じゃないわ。
悪魔 寝ぼけながら悪魔に嘘をつくなんて、なんて悪い奴だ。そこに座れ。何か縛る
ものは無いかな? 無いな。お、尻尾で良いか。
悪魔、自分の尻尾を引き抜いて椅子にビッキーを縛り付ける。
悪魔 よし、起きろ。
悪魔が手を叩くとビッキー目を覚ます。
ビッキー なにこれ? あなた誰よ?
悪魔 ミミズク! 来い! 俺様は悪魔だ。忘れたとは言わせないぞ?
ミミズク、顔を覗かせる。
ビッキー ミミズクなの? 悪魔なの? どっち?
悪魔 俺様は悪魔だ。ミミズクはこいつだ。
ミミズク 見張ってなくていいの?
悪魔 いい。妖精を見つけた。
ミミズク やったぁ! じゃあ、早くご飯を食べに行こうぜ。
悪魔 待て待て、物事には順序って言うものがある。まずはこいつだ。
ミミズク どうする? ペンキでもかける?
悪魔 それはこれから考える。こんなにあっさり捕まえられると思っていなかったか
らな。ちょっと驚いているんだ。フヒヒヒヒ。
ビッキー ペンキをかけるってどういうことよ?
悪魔 忘れたとは言わせないぞ? お前は、この俺様に白ペンキをかけただろう?
半分白くなったせいで俺様は半分良い悪魔になってしまったんだ。
ビッキー 私じゃない。(思い出す)それは妖精よ。そう言っていたのを思い出したわ。
悪魔 だからお前だろ。
ビッキー 私をよく見なさいよ。
悪魔 暗くてよく見えない。
ビッキー 明かりをつければいいじゃない。
悪魔 明るいのは苦手なんだよ。
ビッキー じゃあ、何で私が妖精だって言うのよ。
悪魔 それはアレだ。勘だ。悪魔の勘。何となくっていう奴だ。何となくお前に違い
ない。
ビッキー 私は妖精にお薬を飲ませてもらっただけよ。本当に妖精じゃないわ。ほら、そ
の証拠に体は木よ。
悪魔 …………本当に? (ビッキーの腕に触る)本当だ木だ。
ビッキー ね。
悪魔、悔しがる。
悪魔 またやられた! もう何度目だよ! 俺様、何でこんなに騙されやすいんだろ
うか。おい、帰るぞ。
ミミズク え? ご飯は?
悪魔 無しだ。
ミミズク えー。
悪魔 後で何か食わせてやるから。
ミミズク ねー、もうやめたほうがいいんじゃないの?
悪魔 ダメだ。とにかく仕返しをするか、うんと悪いことをして帰らないと仲間に笑
われる。でも、いい考えが思い浮かばないんだよなぁ。悪いことを考えてるとさ、
同時に良いことも考えちゃって、何したらいいのか分からなくなるんだよね。あ
あ、ダメだ。なんか気持ちが悪くなってきた。
ミミズク 前から思ったんだけどさ。白ペンキをかけられたなら、黒い服に着替えてくれ
ばいいじゃないの?
間。
悪魔 それだ! どうして気がつかなかったんだろう。よし、町に行って黒い服を買
って来よう。
ミミズク 盗むとか言わないところが悪魔っぽくないんだよねぇ。
悪魔 盗むだって? そんな悪いことができるかよ!
悪魔とミミズク、去っていく。悪魔だけが戻ってくる。
ビッキー なによ。
悪魔 尻尾を忘れた。
ビッキーから尻尾を回収するところで暗転。
悪魔がやって来る。
悪魔 妖精の奴め、どうやらこんな所に隠れているらしいな。もう逃げるのをやめた
みたいだな。とうとう観念をしたのかな? そりゃあそうだ。この俺様からいつ
までも逃げられると思っていたら大間違いなんだからな。フヒヒヒヒ。
ミミズクが飛んでくる。
悪魔 どうだ? いたか?
ミミズク 見つけたよ。
悪魔 よしよし、どこだ。案内しろ。
ミミズク あそこに見える家だよ。妖精はあそこに隠れているみたいだ。
悪魔 お前は外を見張ってくれ!
ミミズク 誰か来るの?
悪魔 そうじゃない。妖精が家の中から逃げ出したら捕まえるんだよ。
ミミズク わかった。
悪魔とミミズク、駆け去る。
暗転。
※お爺さんの家1 夜
すぐに家の中。
舞台後方の扉から悪魔が忍び込んでくる。
悪魔 憎い妖精め。どこにいる? 隠れても無駄だぞ。フヒヒヒヒヒ。
♪でーてこいこい でーてこいこい
でーてこいこい でてこいこい
でーてこいこい でてこいこい
と適当に踊っているとマーゴが起きて来て一緒の踊る。寝ぼけている感じ。
マーゴ だあれ?
悪魔 俺様は悪魔だ。お前こそだあれ?
マーゴ 私はマーゴよ。この家のお爺ちゃんの孫よ。
悪魔 孫のマーゴだと? ふざけた名前だなぁ。大体、みんなそう思ってるんだ。お
前は妖精じゃないんだな?
マーゴ そうよ。
悪魔 あっそう。子どもが起きてる時間じゃないよ。寝なさーい。
マーゴ はーい。
マーゴが去っていく。
悪魔 残念! 聞き分けの悪い子だったら連れて帰って地獄の番犬の餌にしても良か
ったのに。逆に聞き分けのいい子なんか食わせたら、地獄の番犬のお腹が壊れち
まう。さて、次だ。
ミミズクが入り口から顔を覗かせる。
ミミズク ねえ。
びっくりする悪魔。
悪魔 外で見張ってろって言っただろ。悪魔をびびらせるんじゃないよ。まったく。
ミミズク 見張ってるだけでいいの?
悪魔 いいの!
ミミズク顔を引っ込める。
悪魔 さて、次こそあの小憎らしい妖精をおびき寄せてやる。
♪でーてこいこい でーてこいこい
でーてこいこい でてこいこい
でーてこいこい でてこいこい
と適当に踊っているとビッキーが出て来て一緒に踊る。やはり寝ぼけている感じ。
ビッキー 誰かいるの?
悪魔 俺様は悪魔だ。お前こそ誰だ?
ビッキー 私はビッキーよ。人形で、妖精さんのおかげで動けるようになったのよ。
悪魔 妖精だと? ついに見つけたぞ! 妖精め!
ビッキー 私はビッキーよ。妖精じゃないわ。
悪魔 寝ぼけながら悪魔に嘘をつくなんて、なんて悪い奴だ。そこに座れ。何か縛る
ものは無いかな? 無いな。お、尻尾で良いか。
悪魔、自分の尻尾を引き抜いて椅子にビッキーを縛り付ける。
悪魔 よし、起きろ。
悪魔が手を叩くとビッキー目を覚ます。
ビッキー なにこれ? あなた誰よ?
悪魔 ミミズク! 来い! 俺様は悪魔だ。忘れたとは言わせないぞ?
ミミズク、顔を覗かせる。
ビッキー ミミズクなの? 悪魔なの? どっち?
悪魔 俺様は悪魔だ。ミミズクはこいつだ。
ミミズク 見張ってなくていいの?
悪魔 いい。妖精を見つけた。
ミミズク やったぁ! じゃあ、早くご飯を食べに行こうぜ。
悪魔 待て待て、物事には順序って言うものがある。まずはこいつだ。
ミミズク どうする? ペンキでもかける?
悪魔 それはこれから考える。こんなにあっさり捕まえられると思っていなかったか
らな。ちょっと驚いているんだ。フヒヒヒヒ。
ビッキー ペンキをかけるってどういうことよ?
悪魔 忘れたとは言わせないぞ? お前は、この俺様に白ペンキをかけただろう?
半分白くなったせいで俺様は半分良い悪魔になってしまったんだ。
ビッキー 私じゃない。(思い出す)それは妖精よ。そう言っていたのを思い出したわ。
悪魔 だからお前だろ。
ビッキー 私をよく見なさいよ。
悪魔 暗くてよく見えない。
ビッキー 明かりをつければいいじゃない。
悪魔 明るいのは苦手なんだよ。
ビッキー じゃあ、何で私が妖精だって言うのよ。
悪魔 それはアレだ。勘だ。悪魔の勘。何となくっていう奴だ。何となくお前に違い
ない。
ビッキー 私は妖精にお薬を飲ませてもらっただけよ。本当に妖精じゃないわ。ほら、そ
の証拠に体は木よ。
悪魔 …………本当に? (ビッキーの腕に触る)本当だ木だ。
ビッキー ね。
悪魔、悔しがる。
悪魔 またやられた! もう何度目だよ! 俺様、何でこんなに騙されやすいんだろ
うか。おい、帰るぞ。
ミミズク え? ご飯は?
悪魔 無しだ。
ミミズク えー。
悪魔 後で何か食わせてやるから。
ミミズク ねー、もうやめたほうがいいんじゃないの?
悪魔 ダメだ。とにかく仕返しをするか、うんと悪いことをして帰らないと仲間に笑
われる。でも、いい考えが思い浮かばないんだよなぁ。悪いことを考えてるとさ、
同時に良いことも考えちゃって、何したらいいのか分からなくなるんだよね。あ
あ、ダメだ。なんか気持ちが悪くなってきた。
ミミズク 前から思ったんだけどさ。白ペンキをかけられたなら、黒い服に着替えてくれ
ばいいじゃないの?
間。
悪魔 それだ! どうして気がつかなかったんだろう。よし、町に行って黒い服を買
って来よう。
ミミズク 盗むとか言わないところが悪魔っぽくないんだよねぇ。
悪魔 盗むだって? そんな悪いことができるかよ!
悪魔とミミズク、去っていく。悪魔だけが戻ってくる。
ビッキー なによ。
悪魔 尻尾を忘れた。
ビッキーから尻尾を回収するところで暗転。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
人魚奇譚CLARISSA
大秦頼太
児童書・童話
人魚奇譚三部作CLARISSA・ISABELLA・SIRENAをまとめました。
皆さんが知っている人魚とは少しだけルールやなんかが違うと思います。
本来は脚本として使いながら仕上げるのですが、現在はそういった団体に属していないので細かい指示や諸注意などは書き込めておりません。
声劇などで使いたい場合は声をかけていただければ基本的にOKします。
●扉絵は舞台化する場合人魚の両足が使えるように片足がヒレで、もう一方が水や泡を表すというようなイメージ画です。
※海部守は脚本用PNです。
時期がズレて書いていたので、ちょっと繋がりがおかしいところもあるかもしれません。
老犬ジョンと子猫のルナ
菊池まりな
児童書・童話
小さな町の片隅で、野良猫が子猫を生み、暖かく、安全な場所へと移動を繰り返しているうちに、一匹の子猫がはぐれてしまう。疲れきって倒れていたところを少年が助けてくれた。その家には老犬のジョンがいた。
小鬼の兄弟とまんじゅう
さぶれ@5作コミカライズ配信・原作家
児童書・童話
ほのぼのとしたお話。
今回は絵本風に仕上げました。
是非、楽しんで下さい。
何時も応援ありがとうございます!
表紙デザイン・玉置朱音様
幻想的な音楽・写真の創作活動をされています。
Youtubeの曲は必聴! 曲が本当に素晴らしいです!
ツイッター
https://twitter.com/akane__tamaki
Youtube
https://www.youtube.com/channel/UCK2UIMESQj3GMKhOYls_VEw
小さな王子さまのお話
佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』……
**あらすじ**
昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。
珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。
王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。
なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。
「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。
ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…?
『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』――
亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。
全年齢の童話風ファンタジーになります。
みかんに殺された獣
あめ
児童書・童話
果物などの食べ物が何も無くなり、生きもののいなくなった森。
その森には1匹の獣と1つの果物。
異種族とかの次元じゃない、果実と生きもの。
そんな2人の切なく悲しいお話。
全10話です。
1話1話の文字数少なめ。
ミズルチと〈竜骨の化石〉
珠邑ミト
児童書・童話
カイトは家族とバラバラに暮らしている〈音読みの一族〉という〈族《うから》〉の少年。彼の一族は、数多ある〈族〉から魂の〈音〉を「読み」、なんの〈族〉か「読みわける」。彼は飛びぬけて「読め」る少年だ。十歳のある日、その力でイトミミズの姿をしている〈族〉を見つけ保護する。ばあちゃんによると、その子は〈出世ミミズ族〉という〈族《うから》〉で、四年かけてミミズから蛇、竜、人と進化し〈竜の一族〉になるという。カイトはこの子にミズルチと名づけ育てることになり……。
一方、世間では怨墨《えんぼく》と呼ばれる、人の負の感情から生まれる墨の化物が活発化していた。これは人に憑りつき操る。これを浄化する墨狩《すみが》りという存在がある。
ミズルチを保護してから三年半後、ミズルチは竜になり、カイトとミズルチは怨墨に知人が憑りつかれたところに遭遇する。これを墨狩りだったばあちゃんと、担任の湯葉《ゆば》先生が狩るのを見て怨墨を知ることに。
カイトとミズルチのルーツをたどる冒険がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる