Vicky！

ミュージカル版

第十八場

●第十八場●　お爺さんの家２　昼
1．△プロジェクター………P016_「ヨーゼフの家」（5秒程度表示）
（表示が消えたら）
2．□照明………11_前明かり（FI）

　　　テルマがうろうろしている。
　　　お爺さんとマーゴが帰ってくると奪い取るようにマーゴをお爺さんから引き離す。
　　　ビッキーの白い手はマーゴが持っている。

テルマ　お父さんとはもう金輪際縁を切るわ。今度こそ本当に本当よ。もう二度と連絡し
　　　ないから。
マーゴ　ママ、ビッキーが助けてくれたの。（ビッキーの手を見せる）
テルマ　何よこんなもの！　（マーゴの手から奪い取り、お爺さんに向かって投げつける）
　　　帰るわよ。

　　　テルマ、マーゴを連れて立ち去る。
　　　お爺さんはビッキーの手を拾い上げ、部屋の奥に座り込む。
1．■音響………028_チクタク（FI）
2．□照明………378_各スポット（CF）
　　　そのまま夜になる。（時計の音と明かりで表現）
3．□照明………少し遅れて5_ホリ青（夜）追加（FI）
　　　下手奥に木の精がやって来る。

木の精　　こんばんは。こんばんは。
お爺さん　誰だい？
木の精　　木の精です。あ、気のせいじゃないです。木の精霊です。
お爺さん　木の精霊だって？　（白い手を見る）
木の精　　はい。お話をさせてもらってもいいでしょうか？

　　　お爺さん、扉の方へ迎えに行く。お爺さんは木の精がビッキーだと思い込んでいる。

お爺さん　もしかして君はビッキーかい？　孫を助けてくれたんだね、ありがとう。
木の精　　（察する）ああ、妹はもういないんですね。
お爺さん　妹だって？　（察する）そうか……。
木の精　　僕は妹を探しにここに来たんです。妹はここでは何になったんですか？　家具
　　　　ですか？　窓枠ですか？　柱ですか？　梁ですか？
お爺さん　ビッキーは、人形になったんだ。今は燃え残った手だけになってしまったが。
木の精　　そうですか。
お爺さん　すまないことをした。申し訳なかった。
木の精　　それを貰っても良いですか？　（燃え残った手だよ）
お爺さん　ああ。そうだな。許しておくれ。
木の精　　では、これで。

　　　立ち去ろうとする木の精をお爺さんは呼び止める。

お爺さん　あ、待っておくれ。

　　　木の精は振り返る。

お爺さん　どこに行くんだい？
木の精　　北風に乗ってカステヘルミ様の所へ。
お爺さん　そこへ行ってどうするんだい？
木の精　　カステヘルミ様に妹の魂を見せて、妹が幸せだったのか不幸だったのかを尋ね
　　　　ます。
お爺さん　それで？
木の精　　それだけです。
お爺さん　わしも一緒に行っていいかな。ビッキーの魂にお礼を言わせて貰いたい。
木の精　　はい。どうぞ。

□照明………暗転（CO）