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第4章 更なる戦い

第498話 ゲーム会場へようこそ138

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 カヤの刃が、エリカの白い喉へと食い込み、鮮血が辺りに迸った。
「・・・っ!!」
 情事はもう終えたーあとは、エリカの首を斬るだけだった。
 苦悶に歪むエリカの美しい相貌を見つめながら、カヤは少しずつエリカの命を断っていく。
 彼女の生暖かい鮮血が体や顔にかかるたびに、エリカとの惜別が近づいていることを実感することができた。
 ー戦いに敗れた者は、いつの世でもこうなる定めー
 カヤの祖先である風魔の時から、当たり前に続けられてきた儀式でもあった。

 ーー

 やがて、エリカの首が完全に胴体から離れると当時に、今まで以上の鮮血が迸り、辺りを血の海に染めていった。カヤも、エリカの返り血を浴びてその半身が真紅に染まっている。
 エリカの命の営みが、完全に消えた瞬間でもあった。
「エリカ・・・」
 もう二度と、あの気さくで人懐っこいエリカの声を聴くことはできない。カヤの両手に抱えられた首だけが、今の彼女の姿なのだ。
「・・・」
 カヤは、これまで何人もの人間を殺してきたー日本にいた頃も、そして、この大会でも。よって、相手の命を断つことに何のためらいも悲壮感も無いだろうと思っていた。
 それなのに、なぜエリカを殺した今は、こんなに心の中が乱れているのかー自分でもよくわからなかった。
「エリカ・・・」
 呼びかけても応えがないことくらいはわかっているが、それでも呼びかけずにはいられなかった。
 両手で抱えたエリカの首ーその表情は、最初こそ苦悶に歪んでいたものの、最後には自らの運命をおとなしく受け入れるかのように穏やかなものだった。
 カヤは、エリカの首の切り口からぽたぽたと落ちる血液に舌を這わせた。まだ、温かみが残っているその血を自らの体内に取り入れることで、エリカとのつながりがまだ保たれているかのようなー所詮錯覚に過ぎないとはいえーそんな感覚になることができた。
 エリカの虚ろな瞳が、遥か彼方の空を映し出している。絹のような金色の髪が、エリカの血臭の混じった風に靡いている。
 特殊防腐剤の効果により、エリカの遺体は決して腐敗することはない。だが、そのぬくもりは確実に、かつ急速に失われていく。
 カヤは、エリカの首を高らかとその場で掲げ、自らの勝利宣言を行った。
「勝利者、風間カヤ」
 先ほど破壊したジャッジに代わり、新しいジャッジが戦闘結果の判定を行った。だが、当のカヤにはもはやジャッジの音声などどうでもよかった。
 虚しい勝利だった。
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