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第4章 更なる戦い

第490話 ゲーム会場へようこそ130

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 絶頂を迎えた二人に待ち受けるのは、お互いの首を懸けた戦いのみであるー
 ホテルの一室で、淫靡な宴を行った後に、二人は近くの公園へと移動した。
 日本の公園を模倣した公園は、見た目だけなら普通のものと変わりない。ただ、人が使用したという痕跡は、当然のことながらなかった。住人がいないこの島では、公園に限らず当たり前のことで、ゆえに無機質な清潔感に溢れていたりする。人の営みが環境にいかなる影響を与えているか、比較してみるのも面白いー
「ふう・・・」
 腰まで届く、金色の長い髪を揺らしながら、エリカは軽く息を吐いた。カヤとの情事で火照った体を冷やすのに、夜の公園の清涼さは実に適していると言えた。月明かりに照らし出されたエリカの金髪は、見ようによっては燃え上がる焔のようにも見える。
 美しさの中にも苛烈さを秘めているーそれがエリカなのだった。
 対して、カヤは生粋の日本人ーその黒髪は、周囲の闇に溶け込んでおり、エリカのように目立つことはない。カヤは闇の世界で生きてきた少女である。先ほどまで着用していた制服を脱ぎ、いつの間にか黒を基調とした忍者装束に着替えていたカヤは、暗殺者に相応しいいで立ちと言えた。
「さて・・・お楽しみのあとは、しっかりとお仕事しないとイケマセンネ」
 エリカが構えている擬体化装備は、刀身部分が湾曲した三日月刀だ。エリカに似合っているのかと言われると、そうとも言えるし、そうとも言えないーそんな不思議な感想をカヤに抱かせた。
「フフン・・・カヤサン、あなたも早く獲物をみせてクダサイ」
 自慢げに、三日月刀の切っ先をカヤに向けながら、カヤに擬体化武器の実装を促すエリカだった。
 その態度には、どこか余裕すらある。
 もともと、エリカという少女は自信家でもあるのだろう。恵まれた体型やどこか人を食ったような態度ーしかし、それでいて相手に不快感を与えることのない、他人とうまく付き合う術を心得ている魅力的な少女ー
「・・・これを見たからにはもう戻れないわよ」
 カヤは、エリカの挑発に応じるかのように自らの擬体化武器ー忍者刀を取り出した。
 もともと、風魔一族の末裔ーその分家として、日本の暗部で暗躍してきたのがヒナとカヤだ。現代を生きるくのいちーそれがヒナとカヤでもあるのだ。
 カヤの武器を目にして、エリカは興味津々といった様子でその大きな瞳を輝かせる。
「オオウ・・・さすが、ジャパニーズ忍者というやつデスネ」
「ジャパニーズ忍者って・・・忍者って日本にしかいないでしょ」
 カヤが苦笑しながら応じる。
「うーん、他の国にも、過去に忍者と似たような集団はいたヨウデスガ」
 唇に人差し指をあてがいながら、少し思案顔になってエリカが言った。その仕草一つとっても絵になる少女である。
 もちろん、諸外国にも古くから忍者に相当するような、間諜や暗殺など、裏の仕事を専門にする集団は存在する。古代ペルシャにも存在したサトラップなどは、国王の目として各地の領主の行動を環視していた記録が残っている。日本で言えば「草」と呼ばれる集団ー忍びなのだがー幕府の命令で各大名の動きを環視していたりした。
 どこの国でも、事情は大差ないということだ。
 ーこれから殺し合うというのに、緊張感のない人ねー
 心の中で苦笑するカヤであった。
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