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第4章 更なる戦い

第476話 ゲーム会場へようこそ116

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「みんなばらばら・・・か」
 確かに、荒谷の言う通り、カヤは同じチームメンバーの居場所を知らない。みんなばらばらに転移させられたからだ。
 だが、本来はそれで「当り前」なのだ。ゲームの中だから忘れがちだが、本来大会参加者は全て敵ーいずれはお互いの首を懸けて殺し合うことになる相手ばかりである。
 それを、今はゲーム中だということで便宜上は徒党を組むことになったに過ぎない。
 もともと、カヤ自身単独行動するのが当たり前だった。それは、生前に風魔一族として暗殺や間諜を行ってきたからというのもあるし、元来誰かと共同戦線を張るというのは好きではないという性格もあった。
 だがー
「荒谷さん・・・だっけ?」
 カヤはロッジの窓の方に目をそらしながら、荒谷に尋ねた。ロッジの外は至って平穏だが、いつ襲撃があるかもわからないから外を見張るーというのは、単に口実で、何となく荒谷と目を合わせたくなかったのだ。
「アンタ、一人プレイって好き?」
「・・・はあ?」
 突拍子でもない問いかけに、荒谷は訝し気に首を傾げた。
「私は・・・誰かと協力して何かを成し遂げるなんて、性に合わない」
 カヤは窓の外を見やりながら言う。そこには、これまで孤独な戦いを乗り越えてきた日陰者の少女の姿があった。
「群れることでしか対処できないなんて、私には信じられない」
 カヤの半生は、ただただ孤独な戦いのみーそして、その大半は風間という家のために費やされてきたのだ。
 もちろん、普通の家庭に育った荒谷には、カヤの境遇などわからない。理解したいとも思わなかった。
 ただ、似たような性格の人物を知っている。いうまでもなく、それは北条だった。
 北条も、誰かと徒党を組むタイプではない。他人と距離を置きたがるタイプの人間だ。それは、あの屋敷で彼女と向き合って痛感させられた。
 ーもしかしたら、この女も北条も似た者同士なのかもしれないー
 性格もほぼ一緒、実力も・・・おそらくは拮抗、プライドの高い自信家でもある彼女たち。
「私は・・・どちらでも構わない」
 荒谷が静かに答える。カヤの独白に、なぜか応えていた自分がいた。
 カヤが振り返り、荒谷の方を見やる。
 ほぼ無表情のカヤから、その内心を推し量るのは難しい。
 構わず、荒谷は続ける。
「一人でも協力でも、どちらでも構わないわよ・・・目的を達成するためならば」
「・・・そう」
 荒谷の方に目を向けていたカヤだったが、またロッジの窓の外へと視線を移した。
 まるで、もう荒谷のことになど興味がないと言わんばかりの姿に、荒谷は少し苛立ちを覚えた。
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