百合斬首～晒しな日記～

第4章 更なる戦い

第471話 ゲーム会場へようこそ111

「・・・誰かがここにいた痕跡があるわね」
　湖畔近くに建てられていたロッジーその周囲を確認し、そこに足跡があるのを見て取ったカヤは、慎重に中を確認しようとする。
　少なくとも、人の気配はないのでいきなり襲われる心配はないだろうが、ただ、何らかのトラップが設置されている恐れもあるので軽はずみな行動はできなかった。
　慎重にロッジの扉を開けて、中の様子を確認してみる。
　誰かが一度使用していた痕跡はあるものの、それ以外には特に目立つところはない。
「・・・私が戦うべき相手は、魔物だけじゃない」
　もう一つの相手チームの連中がこの辺りに潜伏している可能性はある。
　ロッジの部屋の中を見る限りでは、誰かが使用してさほど時間は経っていないようだ。おそらく、土足のまま入り込んだのだろう部屋に残された足跡なども痕跡も新しい。
　ーいや、実際に何者かの気配はあった。
「・・・」
　カヤは、慎重にロッジの部屋から出ると、ロッジの裏手に回り込み、気配がする場所を探ろうとする。
　ー誰もいない・・・？ー
　いや、かすかではあるが、わずかな空気の流れや人の呼吸音のようなものを感じる。
　カヤの瞳が剣呑な輝きを帯びてきた。確かに誰の姿も見えないのだが、しかし相手は、実は自分の姿を隠すということが苦手なのではないだろうか。素人ならばともかく、カヤやヒナのようなプロフェッショナルにはその位置がもろばれである。
　カヤは手裏剣を2枚取り出すと、それを、何も見えないはずの虚空へと投擲した。
「・・・っつう！！」
　激痛を伴った悲鳴が上がった。
　投擲した手裏剣2枚が、なにかに刺さったのだ。何もないはずの空間から、まるで鮮血のような液体が流れ出る。
　いや、まるでではなく、本当にそれは人の血液であった。
「何者だ・・・どうやってその姿を隠している？」
　カヤの鋭い声が辺りに響き渡る。
「・・・いたぁ・・・」
　手裏剣が地面に落ちる。いや、正確には、突き刺さった手裏剣をそのまま体から引き抜いたといったところだろう。そこから、さらに鮮血が溢れ出た。
　そして、透明な何者かはついに姿を見せたのだった。
　それは、桐原地を襲撃した荒谷だった。