百合斬首～晒しな日記～

第4章 更なる戦い

第467話 ゲーム会場へようこそ107

　本家と分家ー
　別に風魔一族に限ったことではなく、その確執はいつの時代にもあるものだった。
　もともとは戦国時代の後北条家に仕えていたという風魔小太郎を祖とする風間家は、現在のヒナが当主を継ぐ立場にあり、カヤはあくまでもそれを支える分家として、常に日陰者に近い扱いを受けていた。
　それでも、幼い頃のうちは、カヤも自分の置かれた境遇にさほど不満はなかった。むしろ、最初のうちはヒナとも仲良くやっていたと記憶している。
　それがいつのころからか、本家に対して芽生えた対抗意識とともに、ヒナ自信も目の敵にするようになっていった。
「ヒナに代わり、私が風魔一族の正当な後継者となる！」
　そう心に決めたカヤだったが、実際にヒナに何度も勝負を挑んでみたものの、結果は連敗ー尤も、全く歯が立たないということでもなく、いいところまで行ったことも何度かあるものの、それでも結局は最後押し切れずに負けてしまうーその繰り返しであった。
　このように、ヒナに対しての対抗意識は激しかったが、当のヒナの方はと言うとカヤに対してさほど悪い感情はもっていないようで、カヤと勝負して叩きのめした後は手を貸してやったり傷の手当てをしてやったりしていたのだ。
　だが、それすらも、カヤの矜持を傷つける結果となった。
　カヤがヒナに6度目の勝負を挑んだ時だった。
　結果は、やはり敗北ーボロボロになったカヤをヒナが背負って屋敷まで運んでいく。その途上で、カヤはヒナの背中で目を覚まし、ヒナに悪態をついたものだった。
「くう・・・なぜアンタに勝てないんだ、私は・・・」
　悪態とともに、口を突いて出るのは自らの無力さへの懐疑だった。
　修行は毎日欠かさず行っていた。それこそ、単純計算であれば、修練に割いている時間はヒナを明らかに上回っているはずだ。それなのに、いつも、今一歩彼女には届かないのだ。
　これが、本家と分家の違いだーなどと、血筋のせいにはしたくなかった。確かに、本家筋のヒナの方が、その祖には近いだろう。だが、所詮は血ー必ず乗り越えられるはずなのだ。
　なのに、自分は一度足りとてヒナには勝てない。肉薄したことはあったが、やはり彼女という壁を越えられないのだ。
　その理不尽さを呪い、ヒナをなじり、また自分の非力さを痛感する。それが、生前のカヤの日々でもあった。
「カヤは、いい線行ってるよ・・・私も危うかった時が何度もあったし」
「・・・うるさい！」
　敵に慰められても惨めさが増すだけだった。悪意がない分だけ、より残酷ともいえる仕打ちだった。おそらく、ヒナには一生この気持ちは理解できないのだろう。
　ー今はまだ及ばないのかもしれない。でも、いつの日か必ず本家のアンタを超えて、そして私が本家に成り代わって見せるー
　そう心に誓ったカヤであった。