百合斬首～晒しな日記～

第4章 更なる戦い

第464話 ゲーム会場へようこそ104

　作品を作る「喜び」と、その中で対象者の運命を弄ぶ「悦び」ー
　山下奈々はゲームクリエイターとしての自分と殺戮者としての自分をそこに投影していたのだ。
　物を生み出す「クリエイター」として、他者を弄ぶ「シリアルキラー」として。
　彼女をこのように変えたのは、いうまでもなくこの大会であり、そして運営者の結城司だ。病みつきになるという彼の言葉通り、奈々はもはやゲームを止めることはできなくなっていた。
　彼女は必ず、21名の参加者を集める。むろん、強制参加である。
　そのうち、必ず1名を最初に見せしめとして殺害し、参加者たちに現実を理解させる。
　呆れた話だが、このアルカディア島に連れてこられて、未だにここで殺し合いをしなければならないということを理解できない大会参加者が少なからずいるのだ。中には、自分たちはまだ日本にいて、これはドッキリの撮影か何かだと思い込んでいる馬鹿者たちもいる。
　そういう連中にわからせるには、誰かを贄にする必要がある。だからこそ、21名集めるのだ。そして、その中の一人を彼女たちの目の前で殺害してみせる。そして、その首は彼女のコレクションとして室内に保管してある。
　実際に、人が殺される場面を目の当たりにすれば、どんな馬鹿でもいい加減現実を理解する。
　あとはゲームを無理やりやらせる。各チーム10名ずつ、ある特定の目的のために競わせるのだ。
　勝った方は解放する。だが、負けた方はそれなりの罰ゲームを与える。
　この罰ゲームがまたえげつないもので、敗者を直接殺すようなものではないのだが、この罰ゲームを食らった者達は例外なく心が折れてしまうのだ。
「負けた者達はクソと同じですからね」
　それが彼女の与えた罰ゲームなのである。
　この罰ゲームを受けた後に解放された敗者のほとんどは、その後自殺しようと試みるが、何せアルカディア島では自殺できないように制限をかけられているので、それもままならず、最終的には精神を病んでしまい、とても大会どころではなくなる。おそらく、誰でもこうなるだろう。
　言うまでもなく、当の奈々ですら、殺されるよりも勘弁願いたいと思えるようなものなのだから。

　ー難易度をもう一段階上げるー
　今の難易度がNORMALであれば、これからはHARDモードへと移行することになる。本当はさらに上の難易度も存在するのだが、一気に引き上げてしまうのは逆に面白くない。
　難易度HARDでは、魔物の能力は2割増しで底上げされる。また、トラップもより高性能なものとなり、範囲も拡大する。
　ただ、一方でアイテムの効果はそのまま据え置くことにする。難易度が上がった分、アイテムの使いどころがますます重要になってくるが、それこそ難易度HARDの醍醐味である。
「さあ、皆様方、さらに磨きのかかった本ゲームを心行くまでご堪能ください」
　奈々は嫣然と微笑んだ。その傍らでは、相も変わらず双子の少女が唸り声をあげて控えていた。
　明子たち参加者の苦闘はここから本格化するのだった。